恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

Noritake SOME PRODUCTS

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広告や書籍、幅広いジャンルで活躍するイラストレーターのNoritakeさん。サインペンやノートなど、日頃、当店でもお取り扱いしているものも少なくありませんが、そんなオリジナル商品を集めたフェア「SOME PRODUCTS」を、生活館ミニギャラリーにて開催しています。定番ステーショナリーやTシャツに加えて、洗いざらし、くったりした風合いのトートバッグもサイズ違いで20種類以上。手書き書体、パンやボブカットの女の子、シンプルなアイコンを配したデザインは、気取らずに使いやすい。全ラインナップをほぼ網羅し揃えたこの機会を、是非お買い逃しなく。

 

Noritake SOME PRODUCTS
8月19日〜9月1日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

(田川)

安本麻美「いろとはな」

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ギャラリーでは安本麻美さんの個展「いろとはな」を開催中です。草木染の染料やインクなどを使って描かれた美しい作品が並びます。

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いろんな色がにじんで混ざり合って、夕焼け空のように移ろって、布の上で優しい奇跡が起こったよう。

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大きな作品のハギレなどでつまみ細工も作られています。こちらは草木染の布でつくったつまみ細工作品。「染めてみるまでどんな色が出るかわからなくて、実験みたい」とおっしゃる安本さん。同じ染料でも、まったく色が違ったり、違う染料を重ねて染めると思いもよらない色になっていて驚きます。

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こちらは栗で渋皮煮を作った時のあく抜き汁で染められたそう。(中央)こんなに優しい色になるんですね。

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紅花といえば、赤いイメージですが、藍で染めた上から紅花で染めると、こんな緑色に!(中央)

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秋空を眺めるような作品たち、夏の終わりにじっくりご堪能ください。ご来場をこころよりお待ちしております。

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安本麻美「いろとはな」
開催日程:2017年8月22日(火)~28日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

草木染や染料インクによるにじみを使った絵画作品や、つまみ細工の草花を制作しています。
草花の中には人の手では創り出せない様々な“いろ”があり、そのいろを草花から頂き、
“はな”のように人の心を和ませ、惹きつける作品をつくりたいと願いながら日々制作をしています。
草花の“いろ”とそこから生まれる“はな”を感じていただければと思います。
ぜひ、ご覧ください。


(上田)

ギャラリーアンフェール通信 8/23号

先日、ふと気がつくとそばで蜘蛛がせっせと巣をつくっていて、しばしじっくり眺めてしまいました。縦の糸を放射状にひいて、間を縫うように糸から糸へ飛び移り…頭の中に設計図でもあるかのように手際よく、小さな体で次から次へと美しく糸をひいていく。翌日同じ場所を見てみると、とてもきれいな大きな巣が出来上がっていました。蜘蛛が作り出すいわば"作品"に心ときめいたひととき。

いつか読んだ本で、アウシュビッツに収容された人が大変な労働を課せられいつこの命が消えるかわからないという状況の中で、暮れる夕日をみて「美しい」と感じた人は生き延びたという話がありました。そんな極限状態でなくても、やっぱり何かを見て、感動したり心が躍ったりすれば、どんなサプリメントよりも元気になれたりするもの。
いろんな本や雑貨、そしてギャラリーに並ぶ作品で、忙しい毎日、つらいことがあった時、なんとなく憂鬱気分な時に、心がちょっと元気になるひとときを当店で過ごしていただけたらさいわいです。

さて、この先一ヶ月はどんな展示に出会えるでしょう。ご来店をこころよりお待ちしております。


Swing 14th Exhibition LOVE
2017/8/29(火)-9/4(月) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)

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詳細: http://www.keibunsha-store.com/gallery/swing-14th-exhibition-love

おなじみNPO法人スウィングさんの展示を今年も開催します!今回のテーマは「LOVE」。目に見えなくて、永遠に難しいテーマのように語られる「LOVE」を、もっとシンプルに堂々と開けっぴろげにしてみてもいいのでは、と開催される今回の展示。いつも賑やかで楽しい展示をしてくださるスウィングさん、きっと今回も、溢れんばかりのいろんなカタチの愛が詰まった展示になることでしょう。会期中はギャラリー内やコテージで関連イベントもあって盛りだくさん。たっぷり「LOVE」を感じてください。


「COLORS」natsuki tsukagoshi icing cookies exhibition
2017/9/5(火)-9/12(火) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)

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詳細: http://www.keibunsha-store.com/gallery/5810

今回はちょっと変わった「アイシングクッキー」の展示。『可愛いだけじゃ終わらない』をモットーに、心が温かくなったり、マイナスな感情がそっと抜け落ちるような“心の空間デザイン”を目指して、お菓子を使ったアート作品を発信。いろいろなジャンルの場で活躍されている塚越菜月さんの個展です。タイトルは「COLORS」。クッキーに彩られた甘い砂糖のいろんな色が、どんなふうに私たちの目に映って、どんな気持ちにしてくれるのか、ご期待くださいませ。


イイダ傘店 平成二十九年 秋 日傘・雨傘展
2017/9/13(水)-9/25(月) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)
※13日(水)が初日となります。

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詳細: http://www.keibunsha-store.com/gallery/5852

お待ちかね、イイダ傘店 受注会の開催です!たくさんの見本の中からお好みの布や柄を選んで組み合わせてオーダーする自分だけの傘。イイダ傘店さんの魅力はなんといってもおしゃれでユーモアたっぷり楽しいオリジナルテキスタイルの数々。花や鳥のほか、お寿司やおでん模様なんてのも並びます。大好きなテキスタイルを選んで、雨の日が待ち遠しくなる色とりどりの夢のような傘をつくりませんか。傘の他に、オリジナルテキスタイルでつくられた小物も販売、こちらも毎回大人気です。すぐなくしがちな傘も、こんな素敵な傘なら宝物になりそう!ぜひお気軽にお立寄りくださいませ。


<ギャラリーアンフェールでは一年先までレンタルお申込みを受付中!>
空き状況 http://www.keibunsha-store.com/about-gallery/availability
利用規程 http://www.keibunsha-store.com/about-gallery/rules
見学、相談も随時受付けています。まずはお気軽にお問合せください。
恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール(担当:上田)
E-mail:enfer@keibunsha-store.com
TEL:075-711-5919

 

(上田)

 

 

今週の新入荷、8月第3週

今週の新入荷、8月第3週をお届けします。

 

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何かと良くしていただいている「器と本の店 nowaki」さん。少し前まで開催されていたnakabanさんの展示に際して発行された一冊『Turpentine』が届きました。2年前刊行された『よるもや通信集』に続く、nakaban漫画集第2作です。(※『よるもや通信集』は版元品切中。)もう先月のことですが、こちらの展示のオープニングライブが当店のイベントスペースで開かれました。nakabanさんのライブペインティング+幻燈と、植田真さんのギター。完全に即興のセッションだったそうですが、まるで映画を見ているような、展開が次々に変わっていく素晴らしいパフォーママンスでした。

 

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Turpentine / ターペンタインは油絵を描くときに使われる松脂の精油のこと。生い茂る松林から始まる海辺の街を舞台にした7つの話は、どこか風も爽やかで、ふらっと旅に出たくなるような作品です。なんとなく頭に浮かんできたのは佐々木マキの漫画で、そういえば作品集の名前は『うみべのまち』だったと、自分の頭の中で合点がいきました。nowaki編集室の筒井大介さんは、絵本の編集者として数多くの書籍を手がけていて、nowakiから出版される本ももちろん筒井さんの編集によるものです。nakabanさん、筒井さんとお話しする中で、多くの少年たちと変わらず、幼い頃漫画をこよなく愛していたことを聞き、普段絵本の絵を担当することが多いnakabanさんの漫画集がなぜnowakiから刊行されたのか、その理由がよくわかりました。「ガロ」や往年の漫画雑誌に掲載されていたような、ほんのり薄暗い、絵本のような本です。夜寝る前に眺めたい一冊。

 

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続いて、イラストレーター・高橋由季さんのイラスト集『ニューテレポーテーション』。名古屋のON READINGさんで行われていた展示に合わせ制作されたこちらの一冊。とびきりキュートな女の子のイラストを描く高橋さん。今回の作品集では、テレポーテーション、テレキネシス、テレパシーといった超能力を使う女の子の姿を描きます。作品によってはコマ割がされていたり、短いページの中にストーリーが組み込まれていたりと、時折漫画のような手法がとられたユニークな作品です。

偶然にも同時期に発行された、ギャラリー併設の本屋が制作した2冊の作品集。何かと共通項を探してしまいます。あわせていかがでしょうか。

 

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お金がないと贅沢はできないのか。ないものねだりからあるものみっけの考え方へ。

誰もが思い浮かぶ豊かな生活への憧れから生まれる、漠然とした未来への不安。その前提ともなる暮らしにまつわる常識を作り直す広告や映画、編集を生業とするある一組の家族からなる編集・冒険チーム「暮らしかた冒険家」。彼らの仕事や考え方に紙媒体で触れる『よむ 暮らしかた冒険家』の第一号が入荷しました。

 

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エコハウス、自給自足、キャンドルナイトなどなど、あらゆる行動を起こし、「君たちの暮らしはアートだ」と坂本龍一に言わしめた彼らが2014年に移住した北海道、札幌。そのきっかけは第一回札幌国際芸術祭のディレクターとして指揮をとった坂本さんの「札幌に引っ越せる?」という何気無い一言だったそうです。そして札幌で広がった活動の幅や、出会った人々。最初の一冊でもあるこちらでは、坂本さんとの対談からこれまでの数年を振り返る、彼らのルーツを探るような内容となっています。暮らしを良くするには、置かれた現状を嘆くだけではなく、実際に行動すること。なんでも実践してみる彼らの姿に勇気付けられます。今後の活躍にも注目したい一家です。

 

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最後に。広く開けたジャンルではないにもかかわらず、『こけし時代』はじめ当店では根強い人気のこけし本。今回刊行された『伝統こけしの本』は、こけしそのものの定義や歴史、種類を紹介したヴィジュアルブックです。著者はグラフィック社「民芸の教科書」の萩原健太郎さん。直接職人を訪ね、生の声とともに民芸を私たちに届けます。本書でも、11もあるこけしの系統をそれぞれ区分し、伝統を引き継ぐ13人の現役工人にインタビューを実施した、こけしファンにはたまらない一冊です。そして、京都のこけし好きと言えば欠かせない、マヤルカ古書店のなかむらあきこさんも巻末にて、自身のこけし愛を語られています。

 

それでは、今週はここまでとさせていただきます。

来週もお楽しみに。

 

(鎌田)

 

〈今回紹介した本〉

■『Turpentaine』nakaban(nowaki)

www.keibunsha-books.com

■『ニューテレポーテーション』高橋由季(ELVISS PRESS)

www.keibunsha-books.com

■『よむ 暮らしかた冒険家』(暮らしかた冒険家)

www.keibunsha-books.com

■『伝統こけしの本』萩原健太郎(スペースシャワーネットワーク)

www.keibunsha-books.com

小野由理子「happy birthday to skirt!」

歩くたび、風が吹くたび、ふわりとかろやかに舞うスカート。お気に入りのスカートを着ただけで、その一日が特別になる。スカートには不思議な力があるような気がします。そんなスカートが並ぶ、”スカート屋さん”小野由理子さんの個展「happy birthday skirt!」を開催中です。私たちが暮らす12ヶ月に幸せな物語が添えられたオリジナルテキスタイルでつくる、12着のスカート。

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ふれるだけでうっとりするような上質なシルクやリネン。型染めや絞り染め、刺繍やハンドカッティングなどで彩られた、とびっきり特別なスカートたち。

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踊るようにゆれる、広げると円になるスカート。心まで染まりそうな鮮やかなスカート。描かれた天使のようにふわっと飛び立てそうなスカート。見たこともないような心躍るスカートには、幸せな日を約束してくれる魔法がかけられているよう。

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スカートの他に、とろっとしなやかなシルクのスカーフも。いずれも受注生産にてお届けします。ご試着も可能なので、ぜひお気軽にお声かけください。

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特別な日に、特別な日にしたい日に、着たくなるとっておきの宝石のようなスカートです。ぜひごらんくださいませ。ご来場をこころよりお待ちしています。

 

小野由理子「happy birthday to skirt!」
開催日程:2017年8月15日(火)-21日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

スカート屋さんをはじめました。
ふわりひらりと舞うように心が軽い。そんな見た事もなくてはじめて聞いたような素敵なスカートを作ろう。
特別で贅沢な時間を届けたいと願ったスカートです。
12ヶ月の輪の中で過ごす私たちの為に、ありったけの幸せを詰め込んで12着作りました。
受注生産にてお承りいたします。

小野由理子/Yuriko Ono
1990年生まれ。テキスタイルアーティスト。オリジナルテキスタイルを様々な手法を使って制作。スカートに仕立てている。

 

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(上田)

今週の新入荷、8月第2週

今週の新入荷、8月第2週をお届けします。

 

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 2017年、創業60年を迎えた長野県の霧ヶ峰高原沢渡に佇むクヌルプ・ヒュッテ。今週まずご紹介するのは、小屋主人の松浦夫妻や常連としてこの場所に集う人々へのインタビューを通じて"クヌルプ"の60年の来歴と高原の豊かな日々を描き出した『山の家 クヌルプ』です。

夫妻がそれぞれに生き延びた太平洋戦争にまで話は遡り、そこから読書を通じた出会いや、やがて始まった山小屋での日々、居候や宿泊者たちの記憶、屋号の由来でもあるドイツの作家ヘッセのことや読書のこと、高原の美しい四季や手仕事のことなどを丁寧に辿ってゆくテキスト。30年来この場所を訪れ続けるという東京の編集出版事務所・エクリが、一宿泊者としてあらためて聞き出した夫妻の来し方と豊かな年月の物語は、隅々まで磨き上げられた木造の山小屋に流れた懐かしい時間を生き生きと描き出します。

テキストの合間の20のカラーページでは、山や自然をテーマに写真を撮る野川かさねさんが撮り下ろした雰囲気たっぷりのクヌルプの様子、山小屋主人が語った「理想の山小屋」を描いた伊藤弘二さんの挿絵なども掲載されています。この場所を愛する人も、初めて知る方も、ぜひ60年の来歴をともに回想しながら、3年に及んだというインタビューから生まれたこの美しい一冊を紐解いてみてください。

 

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伊丹市立美術館で現在開催中(~8/27)、画家・O JUNと彫刻家・棚田康司による2人展の公式図録『O JUN×棚田康司 鬩(せめぐ)』。これまでにも二度にわたる2人展を開催し、互いの作品を通じた20年来の交流を続ける両者による、三度目となる"一騎打ちの鬩ぎ合い"を実現した展覧会場の様子を収めた作品集です。

それぞれに18歳頃に制作していた自画像や、お互いの子どもの頃の写真を交換して制作した作品など、記憶や自画像を巡る「わたし×わたし」、素材も道具も次元も異なるそれぞれのシリーズ作を一つの空間で重ね合わせた「絵画×彫刻」、アトリエを共にした6日間の制作合宿で共有した互いへの質疑応答ノートとともに近年の作品を展示した「O JUN×棚田康司」。3セクションからなる展覧会の作品群を収載したこちらの一冊。制作合宿では、同じ女性モデルをO JUN氏はキャンバスに描き、棚田氏は丸太からその立ち姿を掘り出したりと、モチーフをともにすることで生まれる緊張感や互いの差異に豊かさを見出す試みも展開されました。手を動かし、そこに感触を確かめながら制作に向かう二人の作家を小説家の視点から捉えた滝口悠生氏が寄せたテキスト、作家たち自身が綴った制作に向かう日々の日記なども収録。あらゆる時代に互いに影響を与えあってきた画家と彫刻家の関係性をなぞりながら、各々の制作に打ち込む作家二人の関係性とその軌跡はものづくりを行う人々にとって大いに刺激となるのではないでしょうか。

展覧会場では会期中にも公開制作が行われています。その道程を振り返りながら制作の現場そのものにも立ちあう機会を設けた展覧会というのは非常に貴重です。この機会にぜひ伊丹まで足を運んでみられてはいかがでしょうか。

 

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 アイルランド出身、カナダ在住のアーティスト、Nigel Peake(ナイジェル・ピーク)。大学で建築を学び、住居、建築物、窓、都市などをモチーフに、緻密な描線で構成されるカラフルで美しいドローイング作品を数多く発表しています。

本書『There』は、2015年におよそ一ヶ月ほど滞在したパリのアパートの部屋の3つの窓から日々眺めていた風景を、そのおよそ一年後、同じパリの別のアパートで記憶を頼りに描いたドローイング集。向かいの建物に並ぶ等間隔の窓やその屋上、中庭に色濃く繁茂する植物や家並みの重なり。青いペンで描かれた印象的な風景の数々。毎日そこに住みつづける、あるいは毎日そこで立ち働くことで場所と人との関係性が日々変化してゆくように、世界を絵画のフレームのように切り取る窓を通じて日々無意識に触れる"そこ"にある景色もまた、記憶の底にゆっくりと沈潜し、いつしか心象化してゆくものなのかもしれません。

Nigel Peakeのドローイングはこのほか、詩的な物語を展開しながら様々な風景をシネマティックに経巡る絵本『In The Dark』も同時入荷しています。いずれも貴重なセルフパブリッシングの作品集ですので、お求めの方はぜひお早めに。

 

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誰もが寝静まった深夜の住宅街。陽の光に照らされた日中とは全く異なる表情を見せる夜の家、他者の生活空間。写真家、山谷佑介が赤外線カメラを持ち歩き、東京郊外の住宅街を撮り下ろしたシリーズを一冊にまとめた作品集『Into the Light』。人々が行き交い、自己と他者の領域が中和される日中ではなく、あえて家々が異物としての存在感を放ち、厳とした隔たりを感じさせる夜の時間に、生々しい他者の領域の奇怪さ、踏み込めなさをそのままに作品として表現しています。赤外線で照らし出されたコンクリートや赤みを帯びた軒先の植物は、夜の時間の妖しさとこの世ならざる夢幻に包まれたような感覚を見る者に残してゆきます。

本書を出版するのは、先月リリースされた志賀理江子『Blind Date』も印象深かった国内の写真出版社「T&M Project」。全ページに袋とじを施した『Blind Date』も素晴らしいブックデザインでしたが、本作もまたコデックスをハードカバーで包み込み、折り込みページも多数採用した丁寧な造本です。

今後どういった作品をあらたに届けてくれるのか、いま最も楽しみな出版社のひとつです。

 

その他、近しい人々の記憶とその庭の草木の記録をテキストと切り絵で表現した濱田久美子さんの植物図鑑『guide to plants』、散策にも便利な折りたたみ式のポスター仕様で緑豊かな多摩丘陵を特集した『murren vol.21 the Tama Hills』、写真家・富谷昌子が自身の故郷とめぐる命のあり様を撮り収めた写真集『KITO』、世代を超えて受け継がれる文学の力を進行形で伝える熊本の文芸誌『アルテリ 四号』なども入荷しています。

 

それでは、また次回をお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

■『山の家 クヌルプ』エクリ

■『O JUN×棚田康司 鬩』伊丹市立美術館

■『There』Nigel Peake

■『Into the Light』山谷佑介/T&M Projects

 

(涌上)

田島 木綿「郵便箱」

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ギャラリーアンフェールでは、田島木綿さんの「郵便箱」展を開催中です。壁に展示されたのはボール紙でつくられたいろんな種類の郵便箱。アパートの入口に並ぶ集合ポストや、昔おばあちゃんの家にあったような懐かしいデザインの郵便ポストなど、どれも本物そっくり。

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イギリスで現代美術を学び、リサーチ型の作品を中心に、世界各国で制作をされてきた田島さん。今回の展示も郵便のあれこれを眺めてできた作品、とのことで、赤くないポストが並んだ不思議なインスタレーション空間になりました。

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家に帰ってポストを開けて、見覚えのある字で書かれた手紙、久しぶりの友だちからの便りに胸がはずむ。首を長くして待つ便り、毎日一目散に帰ってポストを開ける。そんなことも以前に比べてだいぶ少なくなったような気がします。メールやSNSですぐに連絡が取れる便利な世の中で、今も郵便屋さんが一軒一軒まわってポストに届けてくれる郵便。手紙を書いて、相手に届けるまで、今の感覚だと途方もないような時間がかかるけれど、田島さんのいう郵便が運ばれるための「優しい約束事や知恵」が、今もこれからもずっとあってほしいなと思いました。

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久しぶりに手紙でも書いてみようかな、そんなことを考えたり。どうぞごゆっくりお楽しみください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

田島 木綿「郵便箱」

開催日時:2017年8月8日(火)-8月14日(月)

開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)

開催場所:ギャラリーアンフェール

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郵便は、人の手を介し時間をかけて運ばれます。その行程には、届けるための優しい約束事や知恵があり、それらは、しばしばクリエイティブな工夫に由来しています。

「郵便箱」展では、そのような郵便のあれこれを眺めてできた作品を展示します。

誰もが一度は使ったことがある郵便に、ほんの少し目を向けることで、小さな発見がありますように。

[作家紹介]

田島木綿(たじまゆう)

イギリスで現代美術を学び、リサーチ型の作品を中心に制作している。世界各地を旅し、日本、イギリス、フランス、セルビアなどで調査、制作、展示を行う。現在は、埼玉を拠点に活動している。

http://www.thegreenhousestudio.net

 

(上田)