恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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今週の新入荷、8月第3週

今週の新入荷、8月第3週をお届けします。

 

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何かと良くしていただいている「器と本の店 nowaki」さん。少し前まで開催されていたnakabanさんの展示に際して発行された一冊『Turpentine』が届きました。2年前刊行された『よるもや通信集』に続く、nakaban漫画集第2作です。(※『よるもや通信集』は版元品切中。)もう先月のことですが、こちらの展示のオープニングライブが当店のイベントスペースで開かれました。nakabanさんのライブペインティング+幻燈と、植田真さんのギター。完全に即興のセッションだったそうですが、まるで映画を見ているような、展開が次々に変わっていく素晴らしいパフォーママンスでした。

 

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Turpentine / ターペンタインは油絵を描くときに使われる松脂の精油のこと。生い茂る松林から始まる海辺の街を舞台にした7つの話は、どこか風も爽やかで、ふらっと旅に出たくなるような作品です。なんとなく頭に浮かんできたのは佐々木マキの漫画で、そういえば作品集の名前は『うみべのまち』だったと、自分の頭の中で合点がいきました。nowaki編集室の筒井大介さんは、絵本の編集者として数多くの書籍を手がけていて、nowakiから出版される本ももちろん筒井さんの編集によるものです。nakabanさん、筒井さんとお話しする中で、多くの少年たちと変わらず、幼い頃漫画をこよなく愛していたことを聞き、普段絵本の絵を担当することが多いnakabanさんの漫画集がなぜnowakiから刊行されたのか、その理由がよくわかりました。「ガロ」や往年の漫画雑誌に掲載されていたような、ほんのり薄暗い、絵本のような本です。夜寝る前に眺めたい一冊。

 

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続いて、イラストレーター・高橋由季さんのイラスト集『ニューテレポーテーション』。名古屋のON READINGさんで行われていた展示に合わせ制作されたこちらの一冊。とびきりキュートな女の子のイラストを描く高橋さん。今回の作品集では、テレポーテーション、テレキネシス、テレパシーといった超能力を使う女の子の姿を描きます。作品によってはコマ割がされていたり、短いページの中にストーリーが組み込まれていたりと、時折漫画のような手法がとられたユニークな作品です。

偶然にも同時期に発行された、ギャラリー併設の本屋が制作した2冊の作品集。何かと共通項を探してしまいます。あわせていかがでしょうか。

 

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お金がないと贅沢はできないのか。ないものねだりからあるものみっけの考え方へ。

誰もが思い浮かぶ豊かな生活への憧れから生まれる、漠然とした未来への不安。その前提ともなる暮らしにまつわる常識を作り直す広告や映画、編集を生業とするある一組の家族からなる編集・冒険チーム「暮らしかた冒険家」。彼らの仕事や考え方に紙媒体で触れる『よむ 暮らしかた冒険家』の第一号が入荷しました。

 

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エコハウス、自給自足、キャンドルナイトなどなど、あらゆる行動を起こし、「君たちの暮らしはアートだ」と坂本龍一に言わしめた彼らが2014年に移住した北海道、札幌。そのきっかけは第一回札幌国際芸術祭のディレクターとして指揮をとった坂本さんの「札幌に引っ越せる?」という何気無い一言だったそうです。そして札幌で広がった活動の幅や、出会った人々。最初の一冊でもあるこちらでは、坂本さんとの対談からこれまでの数年を振り返る、彼らのルーツを探るような内容となっています。暮らしを良くするには、置かれた現状を嘆くだけではなく、実際に行動すること。なんでも実践してみる彼らの姿に勇気付けられます。今後の活躍にも注目したい一家です。

 

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最後に。広く開けたジャンルではないにもかかわらず、『こけし時代』はじめ当店では根強い人気のこけし本。今回刊行された『伝統こけしの本』は、こけしそのものの定義や歴史、種類を紹介したヴィジュアルブックです。著者はグラフィック社「民芸の教科書」の萩原健太郎さん。直接職人を訪ね、生の声とともに民芸を私たちに届けます。本書でも、11もあるこけしの系統をそれぞれ区分し、伝統を引き継ぐ13人の現役工人にインタビューを実施した、こけしファンにはたまらない一冊です。そして、京都のこけし好きと言えば欠かせない、マヤルカ古書店のなかむらあきこさんも巻末にて、自身のこけし愛を語られています。

 

それでは、今週はここまでとさせていただきます。

来週もお楽しみに。

 

(鎌田)

 

〈今回紹介した本〉

■『Turpentaine』nakaban(nowaki)

www.keibunsha-books.com

■『ニューテレポーテーション』高橋由季(ELVISS PRESS)

www.keibunsha-books.com

■『よむ 暮らしかた冒険家』(暮らしかた冒険家)

www.keibunsha-books.com

■『伝統こけしの本』萩原健太郎(スペースシャワーネットワーク)

www.keibunsha-books.com