恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

ギャラリーアンフェール通信 8/7号

うだるような暑さが続く夏も盛り。いかがお過ごしですか?

公園の木陰で涼んでいると、毎日炎天下の中、子どもたちが元気に遊び回っています。虫とりに水遊び、サッカーやかくれんぼ…遊びの輪に通りすがりの知らない子も加わってとても賑やか。「一緒に入れて!」「名前なんていうん?」だけですっかり遊び仲間になれる子どもたちがなんだかうらやましくてほほえましくて。

ギャラリーも、ある意味遊び場だなと思うことがあります。思い思いの展示をしていただき、それを見て思い思いに楽しんでもらう。作家さんとお客さんが初めて出会って作品を前にいろんなおしゃべりをしたり、一緒に見にきた人と作品についてあれこれ話がはずんだり。そんな場面と公園の光景がふと重なって、うれしくなったこのごろです。このギャラリーで過ごす時間が、気ままに思いきり楽しんでいただけるひとときになればさいわいです。

この先一ヶ月も、わくわくするような展示が目白押し。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

田島 木綿「郵便箱」

2017/8/8(火)-8/14(月) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)

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詳細:http://www.keibunsha-store.com/gallery/5667

8日からスタートする田島木綿さんの展示。ボール紙で作られたのは「郵便箱」。メールやSNSの送信ボタン一つですぐに連絡が取れる便利な世の中に、今も時間をかけて届けられる郵便物。手紙をしたためたり、箱に贈り物を詰めたり、そんな手間の中で思い浮かべるのは送る相手の顔。それを受け取って、一つ一つ郵便屋さんの手でポストへ届けられる。今の時代では気が遠くなるような時間かもしれませんが、かかる時間の分だけ、人と人のつながりを感じます。懐かしささえ覚える本物そっくりにつくられた郵便箱。久しぶりに手紙でも出してみようかなと思うようなほっと優しい気持ちになれる展示です。ぜひ足をお運びくださいませ。

 

小野由理子「happy birthday to skirt!」

2017/8/15(火)-8/21(月) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)

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詳細:http://www.keibunsha-store.com/gallery/5774

動きやすいパンツスタイルもいいけれど、スカートにした日はなんだか少し、心が躍って、いつもよりちょっとお行儀がよくなったりする。女性にとって、スカートって特別なものかもしれません。"スカート屋さん"小野由理子さんのオリジナルテキスタイルで作られた12ヶ月分のありったけの幸せを詰め込んだ12着のスカートたち。どんなスカートが並ぶのでしょうか。素敵なスカートに出会えますように。どうぞご期待ください。

 

安本麻美「いろとはな」

2017/8/22(火)-8/28(月) 10:00-21:00(最終日は18:00まで)

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詳細:http://www.keibunsha-store.com/gallery/5786

草木染や染料インクをにじませて作られた作品や、つまみ細工を制作されている安本麻美さんの展示です。草花からいただいた"いろ"でつくられる"はな"のように人の心を和ませる作品。初めて作品の写真を拝見した時、なんだかやわらかい気持ちになりました。花屋さんに並ぶ花や、道端に咲いている草花を見ては、自然の力でこんなにきれいな色になるのかとその色合いに驚くこともしばしば。そんな草花の色でつくられる作品、どんないろのどんなはなに出会えるか、とても楽しみですね。

 

<ギャラリーアンフェールでは一年先までレンタルお申込みを受付中!>

空き状況 http://www.keibunsha-store.com/availability

利用規程 http://www.keibunsha-store.com/about-gallery/rules

見学、相談も随時受付けています。まずはお気軽にお問合せください。

恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール(担当:上田)

E-mail:enfer@keibunsha-store.com

TEL:075-711-5919

 

(上田)

今週の新入荷、8月第1週

今週の新入荷、8月第1週をお届けします。

 

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先ほど終わったばかりの「数学ブックトーク」。独立研究者の森田真生さんが、数学にまつわる本を紹介し、その魅力を解説する毎回人気のイベントです。当店では3ヶ月に一度開催しています。2年前、30歳という若さでデビュー作『数学する身体』(新潮社)が小林秀雄賞を受賞した、目下最注目の書き手です。

 

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そんな森田さんがはじめて絵本の文章を手がけた『アリになった数学者』が福音館書の「たくさんのふしぎ」の9月号として出版されました。「1とは何か」を説く絵本を作りたいという出版社の要請を受け、3年の歳月をかけてようやく完成したこちらの本。ある日、アリになった(生まれ変わった)数学者が、人間だった頃に探求していた数学から派生する思想や、奇数、偶数といった数字について、思索に耽りながら滔々と語る内容となっています。四千字程度でという依頼があったにもかかわらず、森田さんが提示した原稿はおよそ一万字。おそらく、同シリーズ最多の文字数で語られた唯一無二の絵本になりました。数学研究者ではなく、独立研究者と自他ともにそう呼ぶように、森田さんが追い求める世界は数学に留まらず、多岐に渡ります。森田さんが著作や、イベントで触れる、ピタゴラス、ウィトゲンシュタイン、デカルトら、数学を基盤としながら、その他の世界でその概念そのものを生み出してきた大家と同じように、そういった知識を蓄え、他と比較し、研磨してきた森田さんの見る視点がそのまま表れた、絵本でありながら、他のジャンルでも価値のある一冊に。

 

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森田さんの手描きの数式が採用されたこちらのページ。実はラッセルの提唱した定理が書かれています。本来、小学中学年を対象にしたシリーズですが、我々大人が読んでもいろいろなことを想起させられます。絵を担当したのは、日本人ではじめてマリメッコのデザイナーになり、現在は京都のSOU・SOUで活躍する脇阪克二さん。絵に起こしにくい、ともすれば専門的な内容を見事に表現されています。月刊誌のため、増刷はされません。ご希望の方はお早めに。

 

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続いては、デザインの父、ブルーノ・ムナーリの代表作ともいえる絵本『闇の夜に』。少しの間、出版社品切状態でしたが、生誕100周年を記念して新装版が刊行されました。ページ上部の穴を覗くと、夜空に浮かんだ満月に。ギザギザと幾重にも重なって空けられた穴は洞窟に、半透明の紙は魚が泳ぐ水に。プロダクトデザイン、絵画、造形、知育玩具、あらゆるジャンルに精通したムナーリが、生前精力的に取り組んでいた絵本の制作。遊ぶように取り組んだであろう遊び心が存分に詰まった一冊です。翻訳はブローティガンの翻訳で知られる藤本和子さんです。イタリアから届いたムナーリ展の図録等、関連書籍も多数ご用意しております。

 

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巻き毛の可愛らしい男の子がおばあちゃんの家に遊びに行き、粉だらけになりながら一緒にパンを作って食べた一日を写した、可愛らしい絵本のような写真集『PAIN パンの本』。ピーナツバターパン、あんパン、酒粕パン、木の実とフルーツのパン…ちょっとしたレシピも収録されています。上部がミシンで縫われた、小麦粉の袋をイメージしたというパッケージもあわせてお楽しみください。取扱店を見る限り、京都では書店の取り扱いはこれまでなかったようです。プレゼントにもおすすめの一冊。ぜひこの機会にご注目ください。

 

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昨今、多くの場面で目にするテーマ「小屋」。若者の間でも平屋に住むことが小さなブームになっていると聞きます。今回このテーマに取り組んだのは、ミニマリズムを「住」の視点から発信するグループYADOKARI。リトルプレス「月極本」はじめ、短いあいだに多くの書籍を手がけ、小さく住まう、という現代人の関心が集まる話題には必ずといってよいほど登場する注目のグループです。『ニッポンの新しい小屋暮らし』は、他拠点生活、田舎暮らし…国内で少しずつ増えている小屋を中心に据えた新しい豊かさ、価値観を11の実例から提示する一冊。

 

夜分に失礼いたしました。

今回はここまで、また来週もお楽しみに。

 

〈今回紹介した本〉

『アリになった数学者 たくさんのふしぎ9月号』文・森田真生 絵・脇阪克二(福音館書店)

www.keibunsha-books.com

『闇の夜に 新装版』ブルーノ・ムナーリ 訳・藤本和子(河出書房新社)

www.keibunsha-books.com

『PAIN パンの本』(Falt books)

www.keibunsha-books.com

『ニッポンの新しい小屋暮らし』YADOKARI(光文社)

www.keibunsha-books.com

 

(鎌田)

 

 

八月のガラス

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今回で3度目を迎える「八月のガラス」展。長野のガラス吹き、前田さんのつくるコップやお皿が今回もミニギャラリーに届きました。「ぷつぷつのこっぷ」「へにゃへにゃのコップ」「水のコップ」「ジュースのコップ」と、種類ごとにに一応品名がついていますが、同じ種類でも1点ずつ異なります。その捉われない伸びやかなかたちが、前田さんらしさ。思わず笑ってしまうぐらいの自由度です。
お酢の瓶、窓ガラスを素材に溶かしたものは、少し青みがかった仕上がりになっています。これでお水を飲んだら、お酒を飲んだらと楽しんでみてください。

 

前田一郎 八月のガラス
8月5日 - 8月18日
恵文社一乗寺店生活館ミニギャラリー

 

(田川)

夏のよそおい

先日よりこちらのページでもご紹介していますが、
暑い季節を軽やかに過ごせるような商品が続々と入荷しています。

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SWISH! Denim white hat 税抜5000円
WONDER BAGGAGE SUNNY ドローストリングパック 税抜11000円
バッグブランド「WONDER BAGGAGE」より届いた、SUNNYシリーズ新作のバッグは、フラップ部分と本体を2本のドローコードでつないだ仕様。既存の開け口にファスナーを用いたシリーズとは異なり、フラップをめくり上げることでスムーズに開閉できます。軽量かつ、コンパクトに折り畳めますので旅先でのバッグとしても便利です。当店ロングセラーSWISH!のデニムハットとのコーディネイトもぴったり。

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うなぎの寝床 MONPE 板染ストレッチ/グレー 税抜12000円

また、先日までミニギャラリーで展示頂いた「うなぎの寝床」より、ストレッチタイプのもんぺも入荷しています。生地の横糸にポリウレタンを配合することでより伸縮性が高く、機能的なこちら。男性にも人気のラインです。素材が綿100%ではないので、厳密には久留米絣生地とはいえませんが、同じ筑後にある工場で作られています。文人絣(久留米絣を代表する柄のひとつ)に似た模様を表現し、近くで見ると細かな白い線が入っているのがわかります。綿生地に比べて起伏がある表情で、夏場にこそ着心地の良い一着です。

店頭でご試着頂くこともできますので、お気軽にお声かけくださいませ。

 

(田川)

2017年7月書店売上ランキング

7月は写真家のドキュメンタリー映画を二本見ました。「パリが愛した写真家/ロベール・ドアノー<永遠の3秒>」「Don't Blink ロバート・フランクの写した時代」。まだ学生の頃、祇園の京都現代美術館〈何必館〉で両者の写真展を見て以来、心の中でずっとこの時代の写真家たちに憧れてきました。こうしてドキュメンタリーとして彼らの人生や作品を振り返ることができたのは、とても勉強になりましたし、同じ写真家や画家、映画監督、同時代に集った芸術家たちがお互いに刺激を受けながら自身の創作活動に傾倒していく様が清々しく、どこか羨ましく感じます。

 

それでは、2017年7月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会(ELVISS PRESS)

上半期当店のベストセラー。本書から派生する本を選んだブックフェアを店頭にて開催中

 

2位『おさまる家』井田千秋

家の中のお気に入りの場所を描いたイラスト集、待望の重版分

 

3位『WYP Vol.1 DENMARK 僕らは生きる場所を選べる。』THE WORLD YOUTH PRODUCTS

デンマークに暮らす人々へのインタビューを通じて、これからの生き方のヒントを探る

 

4位『タラ・ブックス』矢萩多聞 松岡宏大 野瀬奈津子(玄光社)

工芸品のように美しい絵本を作り出す南インドの小さな出版社を紹介した入魂の一冊

 

5位『「いる」じゃん』作・工藤直子 絵・松本大洋(スイッチ・パブリッシング)

母、子の共演によって生まれた、どこか懐かしく清々しい絵本

 

6位『CDT 02 鳥獣虫魚』TDC(BOOK PEAK)

日本を代表するグラフィックデザイナーが一堂に会する紙とインキの同人誌

 

7位『切手小論』森田晃平

美術、文学、映画、あらゆる場に登場する切手にフォーカスをあてたリトルプレス

 

8位『手繪京都日和』Fanyu(林凡瑜)

台湾のイラストレーターが見つめる京都の街

 

9位『ぼくはパン Je suis le pain』金子敦 金子泰子(Blood Tube Inc.)

「ウズベキスタン日記」「イラン・ペルシア日記」のデザインユニット初の絵本

 

10位『つるとはな 5号』(つるとはな)

90歳をこえるパワフルな人生の先輩が登場する雑誌、第5弾!

 

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第1位は、先月もご紹介した『世界をきちんとあじわうための本』。ペンで何かを書く、靴を履く、呼吸をする。日常の何気ない行為のなかに存在する世界をあじわうためのヒントをあたえてくれる一冊。書店店頭では『「世界をきちんとあじわう」ためのブックフェア』と銘打った選書フェアも引き続き開催中です。フェアの様子と、本の詳しい説明を数日前に別の記事で紹介しています。よろしければこちらもあわせて、御覧ください。

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keibunshabooks.hatenablog.com

 

また、8月20日(日)にはフェアに合わせたトークイベントを開催します。ゲストとして、著者のホモ・サピエンスの道具研究会から山崎剛さん、木田歩さん、坂井信三さん、そして『介護するからだ』(医学書院)、『ミッキ-はなぜ口笛を吹くのか』(新潮社)など、身体動作や声に関わる興味深い著作を多数手がける細馬宏通さんをお招きしたスペシャルな内容です。まだまだご参加承っておりますので、ぜひふるってご予約ください。詳細、ご予約はこちらから。

http://www.cottage-keibunsha.com/events/20170820/

 

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第4位は、8月3日から8月5日までの3日間限定で、当店イベントスペースCOTTAGEにて関連イベントを開催している『タラ・ブックス』。副題に「インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」とあるように、南インドの小さな工房で、製紙、印刷、製本、すべて手作業によって工芸品のように美しい絵本を制作する世界でも他に類を見ない出版社「Tarabooks」を現地への取材を中心に紹介した一冊です。

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今回のイベントでは、インドから取り寄せた絵本と、大きな額に入ったアートプリント、雑貨などなど、さながら出張版タラ・ブックスといって良いほど、極彩色の賑やかな展示となっております。特に今回揃った絵本は、まだ国内で馴染みのない作家の作品や、新作も多数ご用意しております。明日土曜日までの開催となります。お近くの方は涼みがてらお立ち寄りください。

http://tarabooks.jp/event20170803/

 

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第5位は、工藤直子、松本大洋親子の共作による絵本『「いる」じゃん』。主人公の男の子は、太陽や夜空に輝く星々、虫や木々にまで「オッス!」と挨拶します。生きている限り、人間はどうあっても一人ではないという力強いメッセージが込められた心地の良い作品です。扇風機に向かって叫ぶ場面など、実は夏にぴったりの一冊。プレゼントにも喜ばれるかもしれません。

また、発行元のスイッチ・パブリッシングの特設サイトでは随時親子の対談記事がアップロードされています。親子ならでは肩の力が抜けた会話。こちらからご覧いただけます。

https://www.iru-jan.com

 

それでは、今回はここまで。

何やらリンクだらけになってしまいました。

また来月もお楽しみに。

 

(鎌田)

「世界をきちんとあじわうための」ブックフェア・トークイベント

店頭フェアのご案内。

 

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『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会 ELVISS PRESS

 

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呼吸をする。靴を履く。鞄を持つ。電車を待つ。

何気ない日常の動作の中に隠された、あるいは普段気づきもしない、世界をあじわうためのヒント。当たり前にそこにあるものの豊かさに気づいて暮らしていけるなら、そんな幸福はありません。例えば、大人になってから紙をはみ出して、机にまでペンで何かを描こうとはしない。あんなに広かった小学校のグラウンドが狭く見えるような、どこか寂しく、懐かしい感覚。私たちが大人になって忘れてしまった、対峙するもの全てが輝いて見える、あの感覚を取り戻すきっかけとなる一冊です。当店でも多くの方の手に取っていただいており、2017年当店で一番よく売れている本です。

 

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そういった経緯もあり、今回の「世界ときちんとあじわうための」ブックフェアを考えました。

上質な本というのは、どのジャンルに落とし込んでも面白く、その本の専門以外にも波及するような求心力があります。『世界をきちんとあじわうための本』もまさしくそんな一冊で、一度ページを開くと、「あぁ、あんな本もあったなぁ」と、これまでに読んだ数々の本とリンクするような感覚を与えてくれます。今回のフェアでは、発行元のELVISS PRESSさんにご協力いただいて、『世界をきちんとあじわうための本』と併せて読んでいただきたい副読書を、「世界の手触り」「日常の観察」「わたしとあなたのあいだ」という3つのテーマに分けて選書しました。

 

世界の手触り:知覚、アフォーダンス、哲学

日常の観察:既知のはずの世界、日常をまなざす

わたしとあなたのあいだ:コミュニケーション、「私」とそうでないものの境界線、自己と他者

 

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楽しみながら選びました。選んだ本には、200字程度のコメントを付けています。なぜこの本がこのテーマに区分されているのか、想像しながら本の内容と比較しつつ、今回のブックフェアをお楽しみいただければ幸いです。選書のリストと、コメントは冊子にして店頭でお配りしております。また、『世界をきちんとあじわうための本』を引き継ぐ形で刊行が始まった、シリーズ「世界をきちんとあじわう」より、『箱にしまうこと 箱をしまうこと』『生活と研究』もフェアに際して入荷しています。

 

 8月20日(日)には、『「世界をきちんとあじわう」ためのトークイベント』と題したイベントショーを開催します。ゲストは、著者のホモ・サピエンスの道具研究会から山崎剛さん、木田歩さん、坂井信三さん。そして、細馬宏通さんをお招きして、毎日のなかで私たちが「からだ」と「道具」をどのように用いているのか、そして一体“なにを”しているのかを探っていきます。細馬さんといえば、今回のフェアでまっさきに選ばれた『介護するからだ』(医学書院)や、「今日の『あまちゃん』から」(河出書房新社)、「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか」(新潮社)などの著者であり、同時にバンド「かえる目」で作詞・作曲とボーカルをこなす滋賀県立大学の教授です。

この珍しい組み合わせでのトークは、これから先、貴重な内容になること間違い無し!ぜひ奮ってご参加下さい。ご予約詳細は下記からご覧いただけます。

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「世界をきちんとあじわう」ためのブックフェア
会期:2017年8月31日まで 場所:恵文社書店一角にて 

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「世界をきちんとあじわう」ためのトークイベント
日時:2017年8月20日(日)13:30開場 / 14:00開演
料金:1000yen +1drink order
出演:細馬宏通 ホモ・サピエンスの道具研究会(山崎剛、木田歩、坂井信三)
ご予約:http://www.cottage-keibunsha.com/events/20170820/まで

 

(鎌田)

今週の新入荷、7月第4週

今週の新入荷、7月第4週をお届けします。

 

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『NEUTRAL』『TRANSIT』などのトラベルマガジンを世に送り出してきた編集者の加藤直徳さん。彼が新たに手掛ける雑誌『ATLANTIS』創刊に先がけ、新雑誌を生み出すまでの過程そのものを6冊にわたって丹念に追いかけるzineシリーズ『ATLANTIS zine』の1号と2号が同時入荷しています。

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1号ではタイトルとコンセプトを、2号では特集と判型を決めていく過程をテキストや対話、見取り図のようなメモなどを交えながら紹介。わたしたちが本屋で実際に目にする完成したかたちの雑誌になるまでに、編集者はいったいどのような試行錯誤を経ているのか、作り手側からの視点は書籍や雑誌の作り手だけでなく読み手にとっても興味深いものです。

また、末井昭、横尾忠則といった70年代~80年代の雑誌を語るうえで欠かせない「センセイ」たちや、『Studio Jornal knock』の西山勲、『Spectator』の青野利光など現在形でユニークな雑誌を作り続ける編集者たちへのインタビューも掲載。ここでもまた、それぞれの時代背景のもとで彼らがエディトリアルの現場において何を考え、実践してきたかが語られています。

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手持ちのスマートフォンで写真を撮り、加工を加え、簡単な言葉を添える。テクノロジーの進化によって、意識せずとも日常的に誰もが編集を行えてしまう時代に、あえて紙の束を編み、雑誌として世に問うことを自らの道として選ぶ編集者としての熱意と矜持が誌面の端々より伝わってきます。本シリーズはイシューごとに版型が異なるのもユニークな点。徐々にサイズを大きくしてゆく3号以降も、コンテンツ、取材、フィールドワーク、デザインや言葉など、実務的な試行錯誤と、編集者自身の経験や過去の記録の振り返りを同時並行で展開してゆきます。続刊もぜひお楽しみに。

 

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2015年、福井県越前市で開かれた「越前ものづくり塾」。受け継がれてきた伝統工芸や地域の産業を人々に手渡すにはどんな場と方法があるのか。モノの作り手と使い手を繋ぐ道を通す「販路」の様々な可能性を探る連続講義をまとめた『販路の教科書①』も今週の入荷です。

国内だけではなく海外、地方のエディトリアルショップや都市部のセレクトショップ、個人作家が集うウェブメディアや紙のカタログ、百貨店や展覧会などの現場で、モノの流れを実際に見ながら新たな繋がりを作り出すバイヤー、プランナー、ショップ店主や編集者たちがそれぞれの仕事を語ってゆきます。どんなモノを買い手は求めているのか、どういう売り方が顧客の満足につながるのか、どのように語ることでその魅力を伝えられるのか。モノが溢れ、ライフスタイルは多様化し、さらには震災を経て、作り手が制作や製造だけを担っていればよいという時代は終わり、どこで何を買うかを意識的に考える人々はこれまでになく増えています。地域の産業の担い手やオリジナルブランドを持つ個人の作家にとってそのプロダクトの伝え方や見せかたは今後もますます重要になっていくことでしょう。

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100年以上続く東京土産として有名なある銘菓は、パッケージを季節に合わせ期間限定で変える試みでさらにより多くの人々に買い求められたというエピソードなどは、定番と呼べるワンブランドを持っていることの強みと、それをどのように提示するのかというデザイナーのアイデアがあればこそ生まれるもの。定番を古典に、パッケージをブックデザインに置き換えて考えてみれば、私たちにもその違いは容易に想像することが出来ます。

モノの作り手である作家や製造業の方、デザイナーや小売業者などの伝え手はもちろん、買い手や使い手側からも手に取ってみていただきたい一冊です。

 

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「世界で最も美しい本」と称される装飾写本『ケルズの書』。およそ1200年前、アイルランド中東部のケルズの修道院で完成された同国の国宝でもあるこの装飾写本をテーマにしたアニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密』のオフィシャルアートブックも入荷しています。

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「ケルティック・スパイラル」と呼ばれる渦巻文様を用い、ヴェラム(子牛の皮)に書かれた680ページにも及ぶ装飾写本に魅せられたのは、その監督作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』が昨年日本でも公開され大きな話題を呼んだアニメーター、トム・ムーア。中世絵画に倣い、伝統的な2Dの手描きによって美しいケルト美術の世界を現代のアニメ・デザインに蘇らせました。ピクサーやスタジオ・ジブリに並ぶアイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」より出版された本書では、キャラクター造形や絵コンテ、アニメーションの制作過程などをビジュアルたっぷりに紹介。アイルランドカラーを採用し、緑を基調とした映画の世界をたっぷりと収載した豪華な一冊です。

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京都では8月19日より京都シネマにて公開を迎える本作。店頭ではその公開にあわせたミニブックフェアを8月より開催予定です。ケルズの書に関する書籍やケルト文化を紹介した関連本を展開予定ですので、ぜひ映画とともにお楽しみください。

前作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のアートブックも非常に人気だったというトム・ムーア。今作のアートブックの取り扱いは期間限定となりますのでお求めの方はぜひお早めに。

 

その他、特集としては初めて京都のビルを取り上げたBMCの『月刊ビル 7号』「京都祇園 阪下ビル特集」、ビッグバンから掌におさまるスマートフォンまで人類の壮大な歴史をめぐるポケットサイズの詩絵本『自分におどろく』、 東京都写真美術館で開催中の展覧会カタログでもある荒木経惟のシリーズ決定版となる写真集『センチメンタルな旅 1971-2017-』、エル・リシツキーにアレクサンドル・ロトチェンコ、ヤン・ヒチョルト、ポール・ランドら伝説的デザイナーの論考を収めこれからのデザインへのヒントを探る『GRAPHIC DESIGN THEORY グラフィックデザイナーたちの理論』なども入荷しています。

 

それでは、また次回をお楽しみに。

 

 

■『ATLANTIS zine 01』『ATLANTIS zine 02』SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS


■『販路の教科書①』EXS Inc.

■『DESIGNING THE SECRET OF KELLS』Tomm Moore & Ross Stewart/Cartoon Saloon

 

(涌上)