恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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今週の新入荷、7月第4週

今週の新入荷、7月第4週をお届けします。

 

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『NEUTRAL』『TRANSIT』などのトラベルマガジンを世に送り出してきた編集者の加藤直徳さん。彼が新たに手掛ける雑誌『ATLANTIS』創刊に先がけ、新雑誌を生み出すまでの過程そのものを6冊にわたって丹念に追いかけるzineシリーズ『ATLANTIS zine』の1号と2号が同時入荷しています。

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1号ではタイトルとコンセプトを、2号では特集と判型を決めていく過程をテキストや対話、見取り図のようなメモなどを交えながら紹介。わたしたちが本屋で実際に目にする完成したかたちの雑誌になるまでに、編集者はいったいどのような試行錯誤を経ているのか、作り手側からの視点は書籍や雑誌の作り手だけでなく読み手にとっても興味深いものです。

また、末井昭、横尾忠則といった70年代~80年代の雑誌を語るうえで欠かせない「センセイ」たちや、『Studio Jornal knock』の西山勲、『Spectator』の青野利光など現在形でユニークな雑誌を作り続ける編集者たちへのインタビューも掲載。ここでもまた、それぞれの時代背景のもとで彼らがエディトリアルの現場において何を考え、実践してきたかが語られています。

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手持ちのスマートフォンで写真を撮り、加工を加え、簡単な言葉を添える。テクノロジーの進化によって、意識せずとも日常的に誰もが編集を行えてしまう時代に、あえて紙の束を編み、雑誌として世に問うことを自らの道として選ぶ編集者としての熱意と矜持が誌面の端々より伝わってきます。本シリーズはイシューごとに版型が異なるのもユニークな点。徐々にサイズを大きくしてゆく3号以降も、コンテンツ、取材、フィールドワーク、デザインや言葉など、実務的な試行錯誤と、編集者自身の経験や過去の記録の振り返りを同時並行で展開してゆきます。続刊もぜひお楽しみに。

 

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2015年、福井県越前市で開かれた「越前ものづくり塾」。受け継がれてきた伝統工芸や地域の産業を人々に手渡すにはどんな場と方法があるのか。モノの作り手と使い手を繋ぐ道を通す「販路」の様々な可能性を探る連続講義をまとめた『販路の教科書①』も今週の入荷です。

国内だけではなく海外、地方のエディトリアルショップや都市部のセレクトショップ、個人作家が集うウェブメディアや紙のカタログ、百貨店や展覧会などの現場で、モノの流れを実際に見ながら新たな繋がりを作り出すバイヤー、プランナー、ショップ店主や編集者たちがそれぞれの仕事を語ってゆきます。どんなモノを買い手は求めているのか、どういう売り方が顧客の満足につながるのか、どのように語ることでその魅力を伝えられるのか。モノが溢れ、ライフスタイルは多様化し、さらには震災を経て、作り手が制作や製造だけを担っていればよいという時代は終わり、どこで何を買うかを意識的に考える人々はこれまでになく増えています。地域の産業の担い手やオリジナルブランドを持つ個人の作家にとってそのプロダクトの伝え方や見せかたは今後もますます重要になっていくことでしょう。

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100年以上続く東京土産として有名なある銘菓は、パッケージを季節に合わせ期間限定で変える試みでさらにより多くの人々に買い求められたというエピソードなどは、定番と呼べるワンブランドを持っていることの強みと、それをどのように提示するのかというデザイナーのアイデアがあればこそ生まれるもの。定番を古典に、パッケージをブックデザインに置き換えて考えてみれば、私たちにもその違いは容易に想像することが出来ます。

モノの作り手である作家や製造業の方、デザイナーや小売業者などの伝え手はもちろん、買い手や使い手側からも手に取ってみていただきたい一冊です。

 

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「世界で最も美しい本」と称される装飾写本『ケルズの書』。およそ1200年前、アイルランド中東部のケルズの修道院で完成された同国の国宝でもあるこの装飾写本をテーマにしたアニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密』のオフィシャルアートブックも入荷しています。

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「ケルティック・スパイラル」と呼ばれる渦巻文様を用い、ヴェラム(子牛の皮)に書かれた680ページにも及ぶ装飾写本に魅せられたのは、その監督作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』が昨年日本でも公開され大きな話題を呼んだアニメーター、トム・ムーア。中世絵画に倣い、伝統的な2Dの手描きによって美しいケルト美術の世界を現代のアニメ・デザインに蘇らせました。ピクサーやスタジオ・ジブリに並ぶアイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」より出版された本書では、キャラクター造形や絵コンテ、アニメーションの制作過程などをビジュアルたっぷりに紹介。アイルランドカラーを採用し、緑を基調とした映画の世界をたっぷりと収載した豪華な一冊です。

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京都では8月19日より京都シネマにて公開を迎える本作。店頭ではその公開にあわせたミニブックフェアを8月より開催予定です。ケルズの書に関する書籍やケルト文化を紹介した関連本を展開予定ですので、ぜひ映画とともにお楽しみください。

前作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のアートブックも非常に人気だったというトム・ムーア。今作のアートブックの取り扱いは期間限定となりますのでお求めの方はぜひお早めに。

 

その他、特集としては初めて京都のビルを取り上げたBMCの『月刊ビル 7号』「京都祇園 阪下ビル特集」、ビッグバンから掌におさまるスマートフォンまで人類の壮大な歴史をめぐるポケットサイズの詩絵本『自分におどろく』、 東京都写真美術館で開催中の展覧会カタログでもある荒木経惟のシリーズ決定版となる写真集『センチメンタルな旅 1971-2017-』、エル・リシツキーにアレクサンドル・ロトチェンコ、ヤン・ヒチョルト、ポール・ランドら伝説的デザイナーの論考を収めこれからのデザインへのヒントを探る『GRAPHIC DESIGN THEORY グラフィックデザイナーたちの理論』なども入荷しています。

 

それでは、また次回をお楽しみに。

 

 

■『ATLANTIS zine 01』『ATLANTIS zine 02』SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS


■『販路の教科書①』EXS Inc.

■『DESIGNING THE SECRET OF KELLS』Tomm Moore & Ross Stewart/Cartoon Saloon

 

(涌上)