恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

オカベマキコ 結城琴乃 巡回二人展【幻影】

薄暗がりにぽうっと静かに灯る幻影たち。ギャラリーに一歩足を踏み入れるとふと違う世界に迷い込んだような、時間の流れがふっと変わるような不思議な空気感。「いつか見た雨の景色」をテーマに、硝子作家のオカベマキコさんとクラフト作家の結城琴乃さんによる巡回二人展【幻影】を開催中です。

f:id:keibunshabooks:20170709114940j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709115006j:plain

3年前の梅雨が明けるか明けないかという同じ頃にも当店で展示をしていただき、いつも見慣れたギャラリーがなんだか違う場所のようなドキドキと、心地よい静けさを過ごしたことが印象に残っています。今回もよりお二人の世界観を堪能していただける空間になりました。

f:id:keibunshabooks:20170709163006j:plain

雨粒がキラキラ光る蜘蛛の巣。夢か現かいつかどこかで見たような、儚げな景色を閉じ込めたランプ。

f:id:keibunshabooks:20170709163301j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709115135j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709162902j:plain

時間の蓄積を感じさせる蜘蛛の巣が繊細なレースのように幻影を飾ります。遠い思い出を慈しむような穏やかなひととき。

f:id:keibunshabooks:20170709115237j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709115244j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709115340j:plain

お二人のアクセサリーも展示販売。針金と小さな硝子粒で作られたアクセサリーは、その繊細さが心をくすぐります。

f:id:keibunshabooks:20170709115138j:plain

f:id:keibunshabooks:20170709115337j:plain

ため息がこぼれるほど美しい空間。暑さを忘れて、どこからか聴こえる雨音にいつまでも耳をすましていたくなる展示です。どうぞお運びくださいませ。ご来場をこころよりお待ちしております。

f:id:keibunshabooks:20170709115115j:plain


オカベマキコ 結城琴乃 巡回二人展【幻影】
開催日程:2017年7月4日(火)-7月10日(月)
開催時間:10:00-21:00(※初日は12:00から/最終日は17:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

2013年より始まった、硝子作家 オカベマキコとクラフト作家 結城琴乃による巡回二人展
硝子と針金、異素材を融合し生まれる作品は幻影のように儚く漂います
3年ぶりの恵文社での開催となる今回は、いつか見た雨の景色をテーマに
木々に静かに落ちる雨、水滴をまとった蜘蛛の巣、息づく小さな生き物etc..を展示します

幻影ツリーやオブジェ、雨降りランプ、幻影雨粒アクセサリー他
各作家オリジナル作品を展示販売

 

(上田)

今週の新入荷、7月第1週

その週に入った活きの良い本をご紹介する「今週の新入荷」、7月第1週。

 

ご近所さんから、何冊か本が届いています。

 

f:id:keibunshabooks:20170708211030j:plain

まずは、恵文社から自転車で10分。浄土寺のホホホ座さん編集・発行の『焙煎家案内帖(京都編・一)』。自家焙煎の豆を扱う、京都の喫茶店、カフェ、コーヒー店の焙煎家5人に話を聞くインタビュー集。読書生活に欠かせない美味い珈琲。お店で飲んで気に入れば豆を買って帰り、家で挽いてゆっくりと楽しむ。何気なく頼んでいるいつもの珈琲にどれだけの労力とこだわりが込められているか、当の客は知る由も無く、そんな苦労をおくびにも出さない店主たちの姿勢をみれば、もしかすると知らなくて良いことなのかもしれません。そうはいっても聞いてみたい焙煎の話。なぜ自分で煎るようになったのか、焙煎、ドリップのこだわりなど、いずれも個性的な店主たちが語っています。極端に専門的な話に踏み込まず、あくまで珈琲を嗜むだけの私たちにも楽しめる内容となっています。

 

f:id:keibunshabooks:20170708211040j:plain

奥野薫平/六曜社、佐藤洋平/swiss coffee,plants、きたむらゆかり/ガルーダコーヒー、吉川孝志/HiFi Café、伊藤幸治/Windy…、若手からベテランまで、京都に住む人にとってはおなじみの味の裏側を知る機会に。(京都編・一)と銘打たれているということは、今後も刊行が続くのでしょうか。楽しみです。

 

続いて恵文社から徒歩数分の矢萩多聞さん宅から。中学校に通うのをやめ、その年から毎年半分以上をインドで過ごすようになったという特殊な経歴をもつ、装丁家で自身も画家の多聞さん。ご近所ということもあって本当に良くしていただいております。

 

f:id:keibunshabooks:20170708211130j:plain

そんな多聞さんが、KAILASの松岡宏大さん、野瀬奈津子さんのお二人と一緒に作り上げた一冊『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』。南インドの〈Tarabooks〉は、彼らの小さな工房で製紙、印刷、製本まで、全て職人の手作業によって絵本を制作する、日本では考えられない在り方をしている出版社です。当店でもこれまでにタラブックスの本を紹介してきましたが、日本でも数冊、翻訳されたものが出版されているのでご存知の方も多いかもしれません。こちらの本は世界で初めて、タラブックスという出版社そのものに焦点をあてた一冊です。工芸品のような絵本を生み出す職人たちや、タラブックスが出来上がるまでが丁寧に紹介されています。聞けば、こちらの本が出来上がるまでに3年以上の歳月がかかっているそうで、現地への取材を繰り返し、時々インドならではの肩透かしをくらいながらようやく完成した、著者のインドへの愛がたっぷり詰まった本に。

f:id:keibunshabooks:20170708211155p:plain

8月の頭には3daysで刊行記念のイベントを企画中。タラブックスの工房で出た余り紙をカバーにあしらった特装版も会場で販売する予定です。近日中に詳しくお知らせできると思いますので、こちらもぜひご注目ください。

 

f:id:keibunshabooks:20170708211349j:plain

そして多聞さんが東京のブックフェス用に制作したシリーズ「アムブックス」が、いよいよ当店にも入荷。「ちいさくつくり、ちいさく売る」という思いのもとはじまった、各都道府県に1店舗のみで販売するという実験的な試み。近所のよしみもあって、京都ではひとまず当店のみの取り扱いとなります。ラインナップは、多聞さんがイラストと一緒にインドで日常的に使われる愉快なしぐさを紹介した『インドしぐさ事典』、イラストレーターにして、インド料理ユニット「マサラワーラー」武田尋善さんが、南インドの寺町マドゥライを歩き、出会った料理、寺、牛追い祭を紹介した旅行記『スーパルマドゥライ』、KAILAS松岡宏大さんが世界中で買い集めた珍品迷品を紹介した『ひとりみんぱく123』の3冊。店頭で手にとってみてください。

 

f:id:keibunshabooks:20170708211421j:plain

f:id:keibunshabooks:20170708211500p:plain

母、くどうなおこ。子、松本大洋。親子の共演によって誕生した絵本『いるじゃん』。太陽や風。虫や星とともに呼吸する。人間は決してひとりではないという力強い言葉と、そっと読む者に寄り添うような絵。泥んこになって取っ組み合って、川で疲れ果てるまで遊んだあとの、心地よい疲れと言葉にならない充足感を思い出す。幼い頃の、遠い記憶に響きような、懐かしく、やさしい絵本です。『SUNNY』でも描かれていたように、松本大洋のこれまでの根底に流れている子供への憧れ、尊敬が込められた夏休みに読みたい、美しい一冊に。

 

今週はここまで。来週もお楽しみに。

 

〈今回紹介した本〉

『焙煎家案内帖(京都編・一)』ホホホ座編・発行

www.keibunsha-books.com

『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』

矢萩多聞 松岡宏大 野瀬奈津子(玄光社)

www.keibunsha-books.com

『インドしぐさ事典』矢萩多聞(アムブックス)

『スーパルマドゥライ』武田尋善(アムブックス)

『ひとりみんぱく123』松岡宏大(アムブックス)

※アムブックスは店頭のみの販売

『いるじゃん』くどうなおこ作 松本大洋絵(スイッチ・パブリッシング)

www.keibunsha-books.com

 

(鎌田)

うなぎの寝床 MONPE販売会 のお知らせ

f:id:keibunshabooks:20170706202355j:plain

f:id:keibunshabooks:20170706202414j:plain

f:id:keibunshabooks:20170706202424j:plain

8日からのミニギャラリーでは「MONPE」の販売会がはじまります。
九州筑後地方のものづくりや人の魅力を発信するアンテナショップ「うなぎの寝床」が、地元・久留米絣の工房と組んで生まれた現代版もんぺ。これまでも店頭やサイトにて一部販売させて頂いてきましたが、今回は無地以外にも花、縞模様などの豊富な柄をご用意頂いています。

f:id:keibunshabooks:20170706204706j:plain

花柄・黄 税抜15000円

f:id:keibunshabooks:20170706203613j:plain

f:id:keibunshabooks:20170706203727j:plain

鰹縞・グレー 税抜11000円
※モデル身長は157cm。花柄/鰹縞ともにSサイズを着用しています


もんぺと聞くとどうしても畑仕事、作業着…のイメージがありますが、こちらは腰回りをすっきり、特にひざ下を細身にしているので見た目もカジュアル。ジーンズのような日常着として、男女問わず履きやすい1枚です。素材も基本は綿(ストレッチ生地のみ、横糸にポリウレタン)を使用していますので軽く、ジーンズよりかさばらずに、旅行の際の持ち運びにも便利です。

サイズもS~Lまで揃うこの機会に、ぜひご試着くださいませ。
こちら のページでも、スタイリング例をご紹介しています。

 

うなぎの寝床 MONPE販売会
7月8日 - 7月21日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

2017年6月書店売上ランキング

急にゴーヤチャンプルが食べたくなることってありませんか。昨日ふと衝動に駆られて、ゲリラ豪雨のなか、スーパーをはしごすること3軒。結局、肝心のゴーヤが見つけられず、出かける前に念入りに組み上げた隙のない献立は見事に崩れ去りました。常にスーパーにあるものとして認識していたのがそもそもの間違いだったのか。次、ゴーヤを見かけたら買い溜めしてしまいそうです。

 

ゴーヤへの愚痴はさておき、2017年6月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』根本千絵

原爆で失われた風景。ガラス乾板からたどる長崎の「響写真館」と八人の兄妹

 

2位『手繪京都日和』Fanyu(林凡瑜)

台湾のイラストレーターが見つめる京都の街

 

3位『わざわざの働きかた』パンと日用品の店 わざわざ

長野の山の上に店を構える、小さなパン屋の経営と考え方

 

4位『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会(ELVISS PRESS)

上半期当店のベストセラー。本書から派生する本を選んだブックフェアを店頭にて開催中。

 

5位『台湾男子がこっそり教える!秘密の京都スポットガイド』男子休日委員会 エクスナレッジ

台湾のアーティストユニットによる『左京区男子休日』の日本語翻訳版

 

6位『捨てられないTシャツ』都築響一(筑摩書房)

誰しもが一枚は所有しているであろう〈捨てられないTシャツ〉の奇妙なカタログ

 

7位『愛の台南』川島小鳥 講談社

台湾を愛してやまない写真家による、台南市案内

 

8位『ソール・ライターのすべて』青幻舎

初の国内版作品集。店頭在庫分再び完売間近。

 

9位『きょうごめん行けないんだ』柳本々々 安福望(食パンとペン)

イラストレーターと文筆家のSNSを通した往復書簡

 

10位『DAWN』小幡彩貴(commune Press)

様々な媒体で活躍するイラストレーターが台湾で行った展示の際に製作した作品集

 

f:id:keibunshabooks:20170703170005j:plain

1位は、『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』です。著者の根本千絵さんの長崎生まれの母親が亡くなるまで語らなかった原爆のこと。亡くなったあと、実家の引き出しで見つけた被曝手帳。そこには被曝年齢「十七歳」の文字が。この一冊の手帳からすべてがはじまり、母の兄妹と、彼らの父が営んだ「響写真館」の在りし日を、1300枚に及ぶネガからたどる写真集が誕生しました。時代とともに薄れゆく遠い記憶を、あるひとつの家族の歴史から振り返り、我々の世代まで届ける、ぜひ一度は手に取っていただきたい一冊です。

f:id:keibunshabooks:20170703170040j:plain

当店スタッフの思いもあり、6/6から6/19までの期間、ギャラリーアンフェールにて、写真展を開催いたしました。ガラス乾板という、当時のネガも並び、本書に登場する人々が生きた時代を存分にあじわうことができる素晴らしい展示となりました。会期中には著者の根本千絵さんと、造形作家・岡﨑乾二郎さんによるトークイベントも実現。展示とトークイベントは終了いたしましたが、引き続き写真集は店頭でご覧いただけます。

 

f:id:keibunshabooks:20170703170058j:plain

4位は、これまで幾度と紹介してきた『世界をきちんとあじわうための本』。まだ見たことのない世界を知るためではなく、見慣れていながらなかなか気づけない世界に出会うためのガイドブック。今月から2017年の後半がスタートしました。実は、上半期の当店のベストセラーはこちらの本でした。

f:id:keibunshabooks:20170703170227j:plain

出版レーベルELVISS PRESSを運営する名古屋の書店ON READINGさんにご協力いただき、7月1日から店頭の一角にてブックフェアをはじめました。題して「世界をきちんとあじわう」ためのブックフェア。知覚、哲学、民族、美術、小説、あらゆるジャンルの、本書と併せて読んでいただきたい本を選びました。こちらについては改めて詳しくブログにて紹介いたします。

 

f:id:keibunshabooks:20170703170113j:plain

6位は、都築響一さんの新刊『捨てられないTシャツ』です。誰しもが一枚は所有しているであろう〈捨てられないTシャツ〉をテーマに70人に取材し、実際の写真とそれぞれのエピソードで紹介した一冊。中にはTシャツの説明は数行で終わり、あとの数ページは提供者の身の上話というものも。都築さん曰く、「これだけ欲しくないTシャツばかり紹介したカタログはない」とのこと。

 

f:id:keibunshabooks:20170703170130j:plain

例えば、この果てしなくどうでも良さそうなデザインのアーカンソーのTシャツは、実はある女性が国内のフェスでラモーンズのジョーイ・ラモーンと血まみれになりながら交換したというドラマチックなエピソードを秘めています。提供者のプロフィールには年齢と、所在地、職業が書かれているのみで、誰のものなのかには言及されていません。さながらオースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』。これまでの都築ワールドと同じように、匿名性を帯びた奇妙な一冊です。

 

f:id:keibunshabooks:20170703170154j:plain

5月27日には、都築さん本人をお招きしてトークイベントを開催いたしました。Tシャツだけでなく、おかしな方向へすすむファッションへの考察など、終始笑いに包まれた一夜に。余談ですが、『賃貸宇宙』には恵文社の上階にあるアパートも載っています。都築さんが教えてくださるまで、私も知りませんでした。

 

今月は以上です。また来月もお楽しみに。

 

(鎌田)

sandpictures fair

f:id:keibunshabooks:20170702201954j:plain

f:id:keibunshabooks:20170702202007j:plain

f:id:keibunshabooks:20170702202018j:plain

現在アンフェールフロア一角にて、砂が生み出す不思議な世界、サンドピクチャーのフェアを開催しています。これらは、砂、水、空気が織りなす自然のアート作品。絵を逆さまにすると空気の泡と泡の間から砂が落ち、まるで雪原や山のような情景を描き出します。砂時計のように刻々と変化する景色は一度切りのもの。

全てのフレーム横に空気穴があるので、付属のインジェクターで空気量を調節し、砂が落ちる速度を自由に変えることができます。(空気を減らすと、速度がはやまります。)

f:id:keibunshabooks:20170702202102j:plain

お部屋に馴染みやすい木調フレームのものから、沖縄の海底から採取した砂を使用したものなど。今回は、サイズや種類の異なるサンドピクチャーを幅広くご用意頂きました。暑い時期にも涼しげな景色を、お部屋に招いてはいかがでしょうか。

 

(田川)

Spaghetti-hair×czucon『DAILY DOTTOLINE EXHIBITION』

ギャラリーアンフェールでは、Spaghetti-hair×czuconDAILY DOTTOLINE EXHIBITION』を開催中です。

f:id:keibunshabooks:20170628231433j:plain

czuconさんは、日常に生きる女性を描いた絵に彼女たちの短い言葉、物語を添えた「Her Stories」を展示。

f:id:keibunshabooks:20170628231443j:plain

f:id:keibunshabooks:20170628231449j:plain

はじける笑顔の女性や深い影を携えた女性…ふとした瞬間の女性の豊かな表情が描かれ、添えられたテキストを読むと額に飾られた個々の女性の人生を垣間みたようで、自分にも重ね合わさったりしてドキッとします。まるで短編小説集を読むように、じっくり堪能したい作品が並びました。

 

Spaghetti-hairさんは、ワークウエアの制作をされています。

f:id:keibunshabooks:20170628231501j:plain

f:id:keibunshabooks:20170628231508j:plain

プロジェクトメンバーを募り、実際にお店や職場で着用してもらい、よりよい価値、「ずっと使いたい」と思ってもらえることを目標にされたワークウエアたち。自由な発想でデザインされたウエアはどれも「これを着て仕事できたら楽しそう」と思うようなものばかり。制服のイメージを覆されるようです。

 

そしてこちらはお二人のコラボレーション展示。czuconさんの描くKateという学芸員の女性を描いた作品をクローズアップして世界を広げた空間です。

f:id:keibunshabooks:20170628231529j:plain

"Kate"が物語の中で作った版画やKateが着たいワークウエアを展示されています。Kateの物語の中で、作った版画をいつか展示したい場所として当店の名前も出てきます。照れくさくてうれしくて。少し背筋が伸びる気分。

f:id:keibunshabooks:20170628231538j:plain

f:id:keibunshabooks:20170628231546j:plain

 

czuconさんとSpaghetti-hairさんは、制作されているものや様子も全く違うお二人ですが、日常をテーマに制作されたお二人の作品、そしてお二人が共有されている空気感がなんだか心地いいなと感じました。とても自然体で、かっこよくてすてきな女性。Kateのお話も重なって、お二人の作品展をこのギャラリーで開催いただけたのがとてもうれしいです。小さな悩み、大きな悩みがあったり、新しいことにチャレンジしようと前進したい、前進している女性の方にぜひ見ていただきたいなと思った展示会。もちろんどなたでも!ご来場を心よりお待ちしております。

 

Spaghetti-hair×czuconDAILY DOTTOLINE EXHIBITION』

開催日程:2017年6月27日(火)-7月3日(月)

開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)

開催場所:ギャラリーアンフェール

f:id:keibunshabooks:20170702025641j:plain

czuconは日常に生きる彼女たちを描く

Spaghetti-hairは日常を楽しむ為のウエアを作る

 

(上田)

 

今週の新入荷、6月第5週

今週の新入荷、6月第5週をお届けします。

 

f:id:keibunshabooks:20170701001452j:plain

今週まずご紹介するのは、1800年代後半に生きたアイルランド系アメリカ人の測量技師、マーク・ポインターの『造物記』。新大陸を目指し航海を開始したもののやがて難破してしまう船に居合わせた彼が漂流の末たどり着いた未知の島。そこで見た不思議な動植物の数々や、スナ族とウブ人というふたつのコミュニティのそれぞれに奇妙な慣習や高度に発達した文明を記述した、消失したものと思われていた漂流記の写本を、紙屑蒐集家の森田晃平さんが偶然見出し、翻訳出版。というその経緯こそがフェイクであり、すべては翻訳者を名乗る森田晃平さんによる創作であるという異色のリトルプレスです。

f:id:keibunshabooks:20170701000400j:plain

なぜこのような手の込んだ創作物を出版するに至ったのか、その理由はぜひ実際に本書を開いて確かめていただくとして、本書の何よりの魅力は架空の書物を創作する(でっち上げる)ことへの作者のこだわりと情熱が、紙メディアそのものの隅々に至るまで発揮されていること。架空の出版社に架空の書誌コード、冊子に巻かれた帯の推薦コメントを寄せている有名人までも架空で、架空であるがゆえにそのコメントには複数のバージョンが存在するという徹底した自作自演ぶり。子どもの頃に空想や妄想をたっぷり詰め込んだ新聞を創作したことがあるような人々にとってはたまらないであろう何とも楽しい仕掛けが詰まっています。

 

f:id:keibunshabooks:20170702105849j:plain

森田晃平さんのリトルプレスは今回その他にも2種類が入荷しています。美術やデザイン、文学や映画などのカルチャーに、博物学や民俗学など学術的な側面も含みながら、広範な知識を背景に「切手」の魅力を数編のエッセイとコラムで紹介する『切手小論』、その歴史や用語集、表現の系譜や個人的な記憶などを交えながら、人間とは切っても切れない「賭け」について論じた『賭博夜学』。

いずれも通底するのは、ひとつのフレームを設定し、あらゆるジャンルや時代や場所を横断的に経巡る圧倒的な博覧強記ぶりと、一見バラバラに受け止められるはずの知識や情報を繋ぎ合わせるエディターシップの素晴らしさ。読みながら、それが実用的であるか否かを判断する以前に何かを「ただ知る」ということの純粋な歓びを感じずにはいられません。

f:id:keibunshabooks:20170701001543j:plain

f:id:keibunshabooks:20170701001546j:plain

一冊ごとに実際の切手が貼り付けられていたり、花札が貼り付けられていたりと、リトルプレスらしいこだわりが感じられる作りも素晴らしく、イラストやレイアウトなどアナログでありながら行き届いた美意識が反映された紙面にもぜひ注目してみてください。

 

f:id:keibunshabooks:20170701002317j:plain

f:id:keibunshabooks:20170701002335j:plain

f:id:keibunshabooks:20170701002339j:plain

イタリア出身、ベルリン在住のアーティスト、イングリッド・ホラによる『JOMOHOMO』。「Social cement(=社会的結合)」と人々との関係性をその制作のテーマにする彼女が、「なぜ私たちは何もしないための余暇で、何かのアクティビティをしたがるのか」という疑問を着想として制作してきた様々な奇妙な遊具や健康器具のようなオブジェ、それらを用いた展覧会の様子や創作活動に関する対話などを収録したアーティストブックです。一見、まったく用途不明なオブジェの数々は彼女のクリエイションのユニークさを示すと同時に、個々の時間さえ社会的な関係性の中に埋め込まれている現代人や現代社会の成り立ちそのものへの問いをも提示します。

ページ番号はなく、一冊を通じて一日が過ぎてゆくというコンセプトで、全ページに時間を刻む時計が表示されています。そのため、夜明けを迎える時間までを表現した最初の数ページではしばらく暗闇が続くという珍しい仕掛けが。合皮のようなカバーの手触りと光り輝く加工が施された表紙は、ロンドンのデザインスタジオ、Abakeによるデザイン。エディションは365という貴重な作品集ですので、気になる方は是非お早めに。

 

f:id:keibunshabooks:20170701002350j:plain

f:id:keibunshabooks:20170701002400j:plain

f:id:keibunshabooks:20170701002410j:plain

 香港の独立系写真出版社「brownie publishing」より届いた『眩點・視點』。香港でコマーシャルフィルムなどを制作するクリエイター、賴憶南(ライ・イー・ナン)による写真集です。

香港の都市部を遊歩しながら写真家がカメラを差し向けた先に存在するのは、点と線と面から構成される都市の景観と、時代の流れのなかでやがて過ぎ去ってゆくであろう風物、そのなかで漂う都市生活者たちの姿。道行く人々の印象的な後姿や、ガラスで区切られた内部に向けられた視線にガラスが反映した外部の景色が写し込まれた作品群など、繰り返されるモチーフのなかに作家特有のパースペクティブが見て取れます。人々の視線を誤誘導するガラス張りの都市の行き過ぎた近代化をナンセンスな笑いに昇華したのはジャック・タチでしたが(ex.『プレイタイム』)、本作において一枚のスナップにまるで多重露光のように彼此の光景を写し込ませる写真家の手つきからは、現代都市に特有の美しさを見出す詩情のようなものも感じられます。

 

f:id:keibunshabooks:20170702110130j:plain

現在、書店では本書のパネル展も開催中です(~7/14)。香港から送ってくださったプリントの数々、まとめて見るとシックなその世界観に引き込まれます。ご来店の際はぜひこちらもご覧になっていただければ。 

 

その他、病や個人的な悩みなどに書籍を処方する読書療法(ビブリオセラピー)を実践する著者たちによる小説案内『文学効能事典』、11年ぶりの新作を発表したばかりのコーネリアスのアートワークを一冊にまとめた『Cornelius×Idea:Mellow Waves』、暮しの手帖社版が品切れになっていたものの今回愛蔵版として誠文堂新光社より復刊した『イヌイットの壁かけ』、これからの都市のあり様を探求し、ロンドン、香港、渋谷を特集した新創刊の雑誌『MEZZANINE』なども入荷しています。

 

それではまた次回をお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

■『造物記』マーク・ポインター 森田晃平訳/パノラマ諸島社

www.keibunsha-books.com

■『切手小論』森田晃平

www.keibunsha-books.com

■『賭博夜学』森田晃平

www.keibunsha-books.com

■『JOMOHOMO』Ingrid Hora/dent-de-leone

www.keibunsha-books.com

■『眩點・視點』賴憶南/brownie publishing

www.keibunsha-books.com

 

(涌上)