急にゴーヤチャンプルが食べたくなることってありませんか。昨日ふと衝動に駆られて、ゲリラ豪雨のなか、スーパーをはしごすること3軒。結局、肝心のゴーヤが見つけられず、出かける前に念入りに組み上げた隙のない献立は見事に崩れ去りました。常にスーパーにあるものとして認識していたのがそもそもの間違いだったのか。次、ゴーヤを見かけたら買い溜めしてしまいそうです。
ゴーヤへの愚痴はさておき、2017年6月の書店売上ランキングをお知らせします。
1位『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』根本千絵
原爆で失われた風景。ガラス乾板からたどる長崎の「響写真館」と八人の兄妹
2位『手繪京都日和』Fanyu(林凡瑜)
台湾のイラストレーターが見つめる京都の街
3位『わざわざの働きかた』パンと日用品の店 わざわざ
長野の山の上に店を構える、小さなパン屋の経営と考え方
4位『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会(ELVISS PRESS)
上半期当店のベストセラー。本書から派生する本を選んだブックフェアを店頭にて開催中。
5位『台湾男子がこっそり教える!秘密の京都スポットガイド』男子休日委員会 エクスナレッジ
台湾のアーティストユニットによる『左京区男子休日』の日本語翻訳版
6位『捨てられないTシャツ』都築響一(筑摩書房)
誰しもが一枚は所有しているであろう〈捨てられないTシャツ〉の奇妙なカタログ
7位『愛の台南』川島小鳥 講談社
台湾を愛してやまない写真家による、台南市案内
8位『ソール・ライターのすべて』青幻舎
初の国内版作品集。店頭在庫分再び完売間近。
9位『きょうごめん行けないんだ』柳本々々 安福望(食パンとペン)
イラストレーターと文筆家のSNSを通した往復書簡
10位『DAWN』小幡彩貴(commune Press)
様々な媒体で活躍するイラストレーターが台湾で行った展示の際に製作した作品集
1位は、『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』です。著者の根本千絵さんの長崎生まれの母親が亡くなるまで語らなかった原爆のこと。亡くなったあと、実家の引き出しで見つけた被曝手帳。そこには被曝年齢「十七歳」の文字が。この一冊の手帳からすべてがはじまり、母の兄妹と、彼らの父が営んだ「響写真館」の在りし日を、1300枚に及ぶネガからたどる写真集が誕生しました。時代とともに薄れゆく遠い記憶を、あるひとつの家族の歴史から振り返り、我々の世代まで届ける、ぜひ一度は手に取っていただきたい一冊です。
当店スタッフの思いもあり、6/6から6/19までの期間、ギャラリーアンフェールにて、写真展を開催いたしました。ガラス乾板という、当時のネガも並び、本書に登場する人々が生きた時代を存分にあじわうことができる素晴らしい展示となりました。会期中には著者の根本千絵さんと、造形作家・岡﨑乾二郎さんによるトークイベントも実現。展示とトークイベントは終了いたしましたが、引き続き写真集は店頭でご覧いただけます。
4位は、これまで幾度と紹介してきた『世界をきちんとあじわうための本』。まだ見たことのない世界を知るためではなく、見慣れていながらなかなか気づけない世界に出会うためのガイドブック。今月から2017年の後半がスタートしました。実は、上半期の当店のベストセラーはこちらの本でした。
出版レーベルELVISS PRESSを運営する名古屋の書店ON READINGさんにご協力いただき、7月1日から店頭の一角にてブックフェアをはじめました。題して「世界をきちんとあじわう」ためのブックフェア。知覚、哲学、民族、美術、小説、あらゆるジャンルの、本書と併せて読んでいただきたい本を選びました。こちらについては改めて詳しくブログにて紹介いたします。
6位は、都築響一さんの新刊『捨てられないTシャツ』です。誰しもが一枚は所有しているであろう〈捨てられないTシャツ〉をテーマに70人に取材し、実際の写真とそれぞれのエピソードで紹介した一冊。中にはTシャツの説明は数行で終わり、あとの数ページは提供者の身の上話というものも。都築さん曰く、「これだけ欲しくないTシャツばかり紹介したカタログはない」とのこと。
例えば、この果てしなくどうでも良さそうなデザインのアーカンソーのTシャツは、実はある女性が国内のフェスでラモーンズのジョーイ・ラモーンと血まみれになりながら交換したというドラマチックなエピソードを秘めています。提供者のプロフィールには年齢と、所在地、職業が書かれているのみで、誰のものなのかには言及されていません。さながらオースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』。これまでの都築ワールドと同じように、匿名性を帯びた奇妙な一冊です。
5月27日には、都築さん本人をお招きしてトークイベントを開催いたしました。Tシャツだけでなく、おかしな方向へすすむファッションへの考察など、終始笑いに包まれた一夜に。余談ですが、『賃貸宇宙』には恵文社の上階にあるアパートも載っています。都築さんが教えてくださるまで、私も知りませんでした。
今月は以上です。また来月もお楽しみに。
(鎌田)