恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、7月第1週

その週に入った活きの良い本をご紹介する「今週の新入荷」、7月第1週。

 

ご近所さんから、何冊か本が届いています。

 

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まずは、恵文社から自転車で10分。浄土寺のホホホ座さん編集・発行の『焙煎家案内帖(京都編・一)』。自家焙煎の豆を扱う、京都の喫茶店、カフェ、コーヒー店の焙煎家5人に話を聞くインタビュー集。読書生活に欠かせない美味い珈琲。お店で飲んで気に入れば豆を買って帰り、家で挽いてゆっくりと楽しむ。何気なく頼んでいるいつもの珈琲にどれだけの労力とこだわりが込められているか、当の客は知る由も無く、そんな苦労をおくびにも出さない店主たちの姿勢をみれば、もしかすると知らなくて良いことなのかもしれません。そうはいっても聞いてみたい焙煎の話。なぜ自分で煎るようになったのか、焙煎、ドリップのこだわりなど、いずれも個性的な店主たちが語っています。極端に専門的な話に踏み込まず、あくまで珈琲を嗜むだけの私たちにも楽しめる内容となっています。

 

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奥野薫平/六曜社、佐藤洋平/swiss coffee,plants、きたむらゆかり/ガルーダコーヒー、吉川孝志/HiFi Café、伊藤幸治/Windy…、若手からベテランまで、京都に住む人にとってはおなじみの味の裏側を知る機会に。(京都編・一)と銘打たれているということは、今後も刊行が続くのでしょうか。楽しみです。

 

続いて恵文社から徒歩数分の矢萩多聞さん宅から。中学校に通うのをやめ、その年から毎年半分以上をインドで過ごすようになったという特殊な経歴をもつ、装丁家で自身も画家の多聞さん。ご近所ということもあって本当に良くしていただいております。

 

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そんな多聞さんが、KAILASの松岡宏大さん、野瀬奈津子さんのお二人と一緒に作り上げた一冊『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』。南インドの〈Tarabooks〉は、彼らの小さな工房で製紙、印刷、製本まで、全て職人の手作業によって絵本を制作する、日本では考えられない在り方をしている出版社です。当店でもこれまでにタラブックスの本を紹介してきましたが、日本でも数冊、翻訳されたものが出版されているのでご存知の方も多いかもしれません。こちらの本は世界で初めて、タラブックスという出版社そのものに焦点をあてた一冊です。工芸品のような絵本を生み出す職人たちや、タラブックスが出来上がるまでが丁寧に紹介されています。聞けば、こちらの本が出来上がるまでに3年以上の歳月がかかっているそうで、現地への取材を繰り返し、時々インドならではの肩透かしをくらいながらようやく完成した、著者のインドへの愛がたっぷり詰まった本に。

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8月の頭には3daysで刊行記念のイベントを企画中。タラブックスの工房で出た余り紙をカバーにあしらった特装版も会場で販売する予定です。近日中に詳しくお知らせできると思いますので、こちらもぜひご注目ください。

 

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そして多聞さんが東京のブックフェス用に制作したシリーズ「アムブックス」が、いよいよ当店にも入荷。「ちいさくつくり、ちいさく売る」という思いのもとはじまった、各都道府県に1店舗のみで販売するという実験的な試み。近所のよしみもあって、京都ではひとまず当店のみの取り扱いとなります。ラインナップは、多聞さんがイラストと一緒にインドで日常的に使われる愉快なしぐさを紹介した『インドしぐさ事典』、イラストレーターにして、インド料理ユニット「マサラワーラー」武田尋善さんが、南インドの寺町マドゥライを歩き、出会った料理、寺、牛追い祭を紹介した旅行記『スーパルマドゥライ』、KAILAS松岡宏大さんが世界中で買い集めた珍品迷品を紹介した『ひとりみんぱく123』の3冊。店頭で手にとってみてください。

 

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母、くどうなおこ。子、松本大洋。親子の共演によって誕生した絵本『いるじゃん』。太陽や風。虫や星とともに呼吸する。人間は決してひとりではないという力強い言葉と、そっと読む者に寄り添うような絵。泥んこになって取っ組み合って、川で疲れ果てるまで遊んだあとの、心地よい疲れと言葉にならない充足感を思い出す。幼い頃の、遠い記憶に響きような、懐かしく、やさしい絵本です。『SUNNY』でも描かれていたように、松本大洋のこれまでの根底に流れている子供への憧れ、尊敬が込められた夏休みに読みたい、美しい一冊に。

 

今週はここまで。来週もお楽しみに。

 

〈今回紹介した本〉

『焙煎家案内帖(京都編・一)』ホホホ座編・発行

www.keibunsha-books.com

『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』

矢萩多聞 松岡宏大 野瀬奈津子(玄光社)

www.keibunsha-books.com

『インドしぐさ事典』矢萩多聞(アムブックス)

『スーパルマドゥライ』武田尋善(アムブックス)

『ひとりみんぱく123』松岡宏大(アムブックス)

※アムブックスは店頭のみの販売

『いるじゃん』くどうなおこ作 松本大洋絵(スイッチ・パブリッシング)

www.keibunsha-books.com

 

(鎌田)