恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

2017年3月書店売上ランキング

気がつけば、3月も終わり新しい年度が始まりましたね。よく店に遊びに来てくれていた大学生の友人たちは、こぞって東京へと旅立ったようです。引越しのトラックの多さと、初々しい若者とその両親と思われるグループを見かけると、左京区が学生の街だということに改めて気付かされます。

 

それでは今回は2017年3月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『角砂糖の日』山尾悠子 LIBRAIRIE6

幻想小説家・山尾悠子、幻の短歌集

 

2位『美しい街』尾形亀之助 夏葉社

前月に引き続き好調、尾形亀之助詩集復刊

 

3位『ムービーマヨネーズ 創刊号』Gucchi's Free School

日本未公開の映画を紹介するリトルプレス

 

4位『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会 ELVIS PRESS

もはや定番、あざやかで心地よい気づきと学びの本

 

5位『孤独がきみを強くする』岡本太郎 興陽館

地道に売れ続けている一冊、再読する岡本太郎の言葉

 

6位『魔女の12ヶ月』飯島都陽子 山と渓谷社

自然を尊び、知り尽くした魔女の「暮らし」と「知恵」

 

7位『MONKEY vol.11 ともだちがいない!』スイッチ・パブリッシング

毎号、売れてます。柴田元幸責任編集文芸誌、第11弾

 

8位『あおいよるのゆめ』ガブリエーレ・クリーマ WORLD LIBRARY

イタリアの仕掛け絵本、取扱い店はまだまだ少ない様子

 

9位『野菜』細川亜衣 リトル・モア

恵文社男性陣も食いついた、旬の野菜50種を味わうレシピ集

 

10位『ぼくのおじいちゃん』カタリーナ・ソブラル アノニマ・スタジオ

パネル展開催中、版画調の絵が可愛らしいポルトガルの絵本

 

第1位は、幻想小説家・山尾悠子、幻の短歌集『角砂糖の日』です。

f:id:keibunshabooks:20170401215839p:plain

f:id:keibunshabooks:20170401215844p:plain

f:id:keibunshabooks:20170401215910p:plain

恵比寿のLIBRAIRIE6/シス書店内企画展から生まれた新装再刊版、初版は即完売、待望の第二版が入荷しましたが、こちらも在庫僅少となっております。各章のはじまりに挿入された、合田佐和子さん、まりのるうにいさん、山下陽子さんの挿画もとても素敵です。ご希望の方はお早めに。

 

第3位は、日本未公開の映画を紹介・上映するGucchi’s Free School制作のリトルプレス『ムービーマヨネーズ 創刊号』。

f:id:keibunshabooks:20170401220021j:plain

 

f:id:keibunshabooks:20170401220837p:plain

f:id:keibunshabooks:20170401220840p:plain

この文章量、質の高さでなんと900円!(しかも税込!)創刊号のテーマでもある青春映画というジャンルを、美術、講義、地理、英語、建築、音楽、家庭科、国語など、8つの授業科目に振り分け、順を追って解説。教科書のような表紙からも想像できるように、一貫して学校をモチーフにしたアートワークも購買欲をそそります。ミルハウザーの短編が映画化された「シスター・フッド・オブ・ナイト」柴田元幸評はじめ、豪華な寄稿陣も魅力的です。買いの一冊。

 

 9位は、熊本に住む料理家、細川亜衣さんのレシピブック『野菜』。

f:id:keibunshabooks:20170401221003j:plain

f:id:keibunshabooks:20170401221019p:plain

f:id:keibunshabooks:20170401221022p:plain

ふきのとうのおかゆ、たけのこの春巻き、春の白和え、そら豆わんたん、焼きいもと唐辛子のフォカッチャ、などなど、暖かくなりスーパーの野菜売り場も賑わう今の時期におすすめです。単に料理工程が書かれているのではなく、メモ書きのような文章でつくり方がそれとなく書かれ、各レシピの後に寄せられた細川さんに直接語りかけられているような、ちょっとしたコツや美味しい食べ方が、この本を読む人にとって特別なものへと昇華させているのではないでしょうか。写真も美しい一冊。

 

今月のランキングは個性的な本が、偏りなく紹介できました。

ちょっとした紹介文をそれぞれの本に付けてみましたがいかがでしょうか。

来月もお楽しみに。

 

(鎌田)

今週の新入荷、3月第5週

その週に入荷した活きの良い本をご紹介する、「今週の新入荷」。本日も盛りだくさんの内容でお届けします。

 

f:id:keibunshabooks:20170331183009j:plain

まずご紹介するのは、2016年9月から2017年1月まで、ベルナール・ビュフェ美術館で開催されていた本展の公式図録『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』です。フランスの国民的写真家であり、パリの街中で見かけるドラマチックな瞬間や、風刺の効いた一幕を表情豊かに写した作品を数多く残したロベール・ドアノー(1912-1994)。「パリ市庁舎前のキス」に代表されるように、《イメージの釣り人》とも評されるドアノーの作品の醍醐味は、ヒューマニズムに溢れた人間描写といえます。そのドアノーらしさが最もよく表れているジャンルともいえるポートレイトに着眼点を置いた図録です。

 

f:id:keibunshabooks:20170331183035p:plain

f:id:keibunshabooks:20170331183125p:plain

実は京都に住む人にも馴染み深いドアノー。その理由は八坂神社前にある京都現代美術館・何必館です。館長の梶川氏は、ドアノーはじめ、当時のパリに集った写真家たちと多く交流を持たれていたそうで、ロベール・ドアノー、アンリ=カルティエ・ブレッソン、ウィリー・ロニスら、その年代の写真を愛する者にとってはなんともありがたいコレクション展を毎回開催されています。同館が編纂する数多くの図録も素晴らしいので、立ち寄られた際は要注目。(次回4/5からはアンリ=カルティエ・ブレッソン展!)

 

f:id:keibunshabooks:20170331185337j:plain

f:id:keibunshabooks:20170331183204p:plain

そして、ついに十五巻すべてが出揃った土曜社刊『マヤコフスキー叢書』ロシア・アヴァンギャルドを代表する詩人、ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・マヤコフスキー。いまや、マヤコフスキーの作品に触れることができる数少ない資料。土曜社らしい、素朴かつ、クールなデザインと、各巻の当時の写真を用いたアートワークも魅力的なシリーズです。

f:id:keibunshabooks:20170331185425j:plain

マヤコフスキー訳の第一人者、小笠原豊樹さんの新訳を前提にはじまったこちらの叢書。残念ながら翻訳作業を進めるなかで小笠原さんは亡くなられました。小笠原さんのレイ・ブラッドベリや、ロス・マクナルドの作品の翻訳を読んでいた私にとってはショックな事件で、当時読者を装って土曜社に叢書の刊行存続を問い合わせたことをよく覚えています。過去の選集をもとに全巻の発行を完遂した土曜社さんと、新訳を死の際まで続けた小笠原さんに心からの拍手を。

 

f:id:keibunshabooks:20170331183235j:plain

海外文学つながりでもう一冊。今最も注目される翻訳家・藤井光編『文芸翻訳入門』。英米に限らず、ロシア、チェコ、スラブ、韓国など、多国籍な言語を相手取る旬な翻訳者たちが集い、思いおもいの文芸翻訳論を語り合う、海外文芸翻訳の良い入門書です。こちらについては、あまりに長文になったため、他のブログで詳しく紹介させていただきました。よろしければあわせてご覧ください。

keibunshabooks.hatenablog.com

 

f:id:keibunshabooks:20170331183256j:plain

米軍ハウス、文化住宅、古民家などをリノベーションし、そこに暮らす人々を取材し、写真豊富に紹介するシリーズ『FLAT HOUSE LIFE』。絶版状態だったvol.1、vol.2に新規物件を加え、待望の合本『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊しました。古いイメージを取り払い、住んでみたらこんなに便利だったという平屋の魅力を存分に伝える一冊です。待ちわびていた方も多いのではないでしょうか?

先日、著者のアラタ・クールハンドさんがふらっとお立ち寄りくださいました。震災後、九州に転居されたというアラタさん。北九州の人のおおらかさ、若者が古い時計屋を改装して新しい小さなお店を開こうとしていること、米軍基地があった名残にみる居住域の区分けなど、興味深い話が次々と。このようなことを皆さまにも聞いてもらえるような場を設けようと、イベントを企画中です。お楽しみに。

 

その他、P・オースターの新刊、著者の生涯を断片的に回想する『内面からの報告書』(新潮社)、4/13に関連イベントの開催も決まった音楽家・大友良英さんが大阪築港赤レンガ倉庫で行ったグループ展と展示的音楽の記録『音楽と美術の間』(フィルムアート社)、など多数入荷しております。

 

それでは、また来週。

《今回紹介した本》

『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』ベルナール・ビュフェ美術館

www.keibunsha-books.com

『マヤコフスキー叢書 全十五巻』マヤコフスキー 小笠原豊樹訳 土曜社

www.keibunsha-books.com

『文芸翻訳入門』藤井光編 フィルムアート社

www.keibunsha-books.com

『FLAT HOUSE LIFE1+2』アラタ・クールハンド TWO VIRGINS

www.keibunsha-books.com

(鎌田)

書店内『文芸翻訳入門』フェアのご案内

店頭フェアのご案内。

 

f:id:keibunshabooks:20170331184606j:plain

私自身刊行の案内を受けてからずっと待ちわびていました。藤井光編、『文芸翻訳入門 言葉を紡ぎ直す人たち、世界を紡ぎ直す言葉たち』(フィルムアート社)。

 

いきなり話が逸れますが、日本翻訳大賞というものをご存知でしょうか?西崎憲、柴田元幸、岸本佐知子、金原瑞人、松永美穂らが発起人、選考委員となって生まれた文学賞です。作家、一般の読者関係なくその年に出版された翻訳本を推薦することができる開けた試みで、これまでに選出された作品は韓国、チェコ、バスク、クレオールと、いずれも英米文学以外のまだまだ日本ではマイナーな国にルーツをもった文学たち。(選考委員たちが翻訳した作品を除外している事情もあるとして。)

 

それらの作品の翻訳を手掛けた、まさに旬な翻訳者たちが、編者である藤井光さんを中心に集い、各々の翻訳論を語った一冊が『文芸翻訳入門』です。

 

f:id:keibunshabooks:20170331184641j:plain

冒頭の藤井さんの章は特に読み応えがありました。みなさんも受験の際に苦戦したであろう英文の下線部訳をフォーマットに、古くは150年前の翻訳作品からはじまり、森鴎外、伊丹十三、村上春樹の翻訳へと時代を追って解説し、時の移ろいとともに進化を遂げてきた翻訳の世界を存分に掘り下げています。例えば、かの有名なポーの「モルグ街の殺人」を1913年に森鴎外が訳したものと、1962年に訳された谷崎精一のものを比較し、直後訳と意訳のバランスを論じ、村上春樹訳のレイモンド・カーヴァーを挙げ、それまで「忠実になぞる」ものであった翻訳が「対話する」という関係に打って変わったことを解説しています。誰もが知る有名な訳例をもって、どの分野の翻訳においても当てはまるような、わかりやすく、興味深い導入となっています。

 

今、書店に並んでいるものが新しい訳なのか、半世紀前に訳されたものなのか、注意深く読んでいる読者はそれほど多くないはず。前に読んだ本で、コピーライターの鈴木康之さんが「翻訳は色眼鏡を通すこと」だと書いていたような記憶がありますが、普遍的なはずのひとつの文学作品が、その色眼鏡の数だけ、その時代や翻訳する人によって見え方が変わってくるという点にこそ翻訳作品を読むという醍醐味があるのではないでしょうか。祖父と古典文学の話をし、遠いフランスの友人と片言の英語でクンデラの作品について語り合う。そこにある共通言語はいつだって文学でした。そんな自身の経験を思い出しつつ、ひとりでも多くの人にこの本が届くようにと願いながら、この文章を書いています。

 

f:id:keibunshabooks:20170331184721j:plain

現在、書店内の一角にて、『文芸翻訳入門』を中心に据えたフェアを開催中。目印はヴィンテージの旅行鞄です。ご来店の際は、ぜひお立ち寄りください。

 

f:id:keibunshabooks:20170331184749j:plain

(鎌田)

SAWA「new collection フェア」

f:id:keibunshabooks:20170331132818j:plain

f:id:keibunshabooks:20170331132828j:plain

手芸作家・松田紗和さんの新作フェアが、本日よりはじまりました。昨年春にはマクラメレースの本を上梓された松田さん。その書籍にも掲載されているような平結びのブレスレットや、フェルトを土台に、しゃこ結びと巻結びを組み合わせたブローチなど、繊細で女性らしいアクセサリーが並んでいます。
マクラメは、ボードにピンで糸を固定し、均一なテンションで編み結び、模様を作りあげる技法。単色の糸で編まれた、一見シンプルな品だからこそ、その精巧さ、技術の高さが伝わります。

f:id:keibunshabooks:20170331132839j:plain

f:id:keibunshabooks:20170331132847j:plain

f:id:keibunshabooks:20170331132854j:plain

f:id:keibunshabooks:20170331132900j:plain

new collectionと題された今回のフェアは、目に楽しい新作が多数。立体感のある小花のようなピアスやイアリング、アザミの花をモチーフにしたユニークな形のブローチなど。春の装いを彩る品々。お立ち寄りの際は、ぜひご覧くださいませ。


SAWA「new collection フェア」
3月31日(金)~4月15日(土)
10:00~21:00(最終日 ~18:00)

 

(田川)

今週の新入荷、3月第4週

早いもので3月も終わりが近づいてきました。

新生活に向けての準備を整える方も多いであろう時節、忙しなさの合間にもふっと一息をついて本を開き気づけばいつしか熟読を始めてしまう、そんな余白の時間を日常のなかに忘れないように持っておきたいものです。

それでは、3月第4週の新入荷をお届けいたします。

 

卵黄、酢、塩、胡椒にオリーブオイル。それらをどんな配分と力加減で混ぜるかによって固まるか柔らかくなるかが決まるマヨネーズ。脚本、キャスト、天候など様々な要素からなる映画も、その配分と混ぜる時の力加減で生きるか死ぬかが決まる。雑誌作りもまた然り。

f:id:keibunshabooks:20170324193720j:plain

フランスの映画批評家アンドレ・バザンの「マヨネーズ理論」をそのタイトルに冠した新しいムービーカルチャーマガジン『ムービーマヨネーズ』。日本未公開の映画を紹介・上映するGucchi’s Free Schoolにより、青春映画の特集上映イベントにあわせて制作されたこちらの創刊号。そのクオリティの高さから映画好きのあいだで大きな話題を呼んだものの手に入る機会の極めて少なかった一冊が増刷され、取り扱いが可能になりました。売れ行きを見ていても、いかに本誌を手にする機会を待望されていた方々が多かったかを感じます。

f:id:keibunshabooks:20170324194927j:plain

リチャード・リンクレイターの長編第2作"Slacker"、ティーン文化と青春映画の源流を追ったマット・ウルフのドキュメンタリー"Teenage"、スティーブン・ミルハウザーの短編を映画化したキャリン・ウェクター"The Sister Hood of Night"など、昨年Gucchi’s Free Schoolにより上映された7本の映画をイラスト付きで紹介するページに始まり、字幕翻訳家による翻訳講義、青春映画の舞台となったアメリカの土地マッピング、ハイスクールの建築空間解説、映画に見るティーンのファッション変遷など、共感を軸にするだけでない、時代や文化、バックグラウンドそのものに着目するような映画の楽しみ方を様々なヴァリエーションで体現し紹介してゆきます。

ティーンムービーをテーマにしたドキュメンタリー"Beyond Clueless"に登場する約200本の青春映画全作解説とチェックドリルはデータとしても非常に貴重で、映画鑑賞の参考としても重宝することでしょう。柴田元幸、山崎まどか、三宅唱ら豪華な執筆陣によるテキストも収め、フルカラーでこの価格設定。映画そのものの魅力はもちろんそうですが、対象を楽しむ視点や態度を教えてくれるような愛と熱量があふれた一冊。今後の展開も大いに楽しみなリトルプレスです。

 

f:id:keibunshabooks:20170324192702j:plain

今週届いた2冊の絵本。ノルウェーのデザインユニット、ヨーコランドによる『パンやのブラウンさん』と、ポルトガルのイラストレーター、カタリーナ・ソブラルによる『ぼくのおじいちゃん』。どちらもデザイン性にすぐれた楽しい絵本です。途中から展開するメタ構造により色の存在そのものが物語を牽引する前者と、その組み合わせやトーンに見られる作家の色彩センスとこだわりが目に楽しい後者と。それぞれの地域性、お国柄も感じ取れるような2冊、プレゼントにもおすすめしたい可愛らしい絵本たちです。

 

f:id:keibunshabooks:20170324193930j:plain

深瀬昌久や渡辺雄吉らの写真集を刊行してきた東京の写真出版レーベル「roshin books」より7冊目の写真集、柳沢信(やなぎさわ・しん)『Untitled』が届いています。写真家が最も精力的に活動した60〜70年代、日本各地を旅する途上に見つめ、カメラを向けた風景の数々。

f:id:keibunshabooks:20170324194417j:plain

写真は固有の言語であり「写真に言葉はいらない」。そう言い続けたという写真家の作品群は、決定的瞬間と言うにはありふれているものの、日常と捨て置けばついぞすくい取られなかったであろう「写真の時間」を、さらりと衒いなく観る者のまえに取り戻すような強さと美しさをそなえています。言葉で語ろうとすれば抜け落ちていくであろう、写真そのもののなかに存在する"質"を確かめるように、ぜひ手にとってご覧いただきたい作品集です。

 

f:id:keibunshabooks:20170324192709j:plain

最後にご紹介するのはライナー・シュタッハ『この人、カフカ?』。

20世紀を代表する作家として、死後多くの文学研究者によってその複雑な側面が描き出されてきたにもかかわらず、いまだ拭われないステレオタイプな「カフカ風」イメージ、文学から遠く離れたマスメディアによって安直にレッテル貼りされた神話。硬直したイメージを打破し、カフカその人の実像に接近するために、日記や手紙、走り書きやサイン、出版広告や高校修了証、アンケート用紙や遺言状、周囲の人々の回想など、小さな痕跡を拾い集めて提示した本書。ひっかかったエイプリルフールのジョーク、カバンに忍ばせていたインディアン本、唯一嫌悪感をあらわにした同時代の作家について…。小さな断章や断片を膨大に書き残したカフカその人に倣うように、写真や図版を伴って編まれた作家の99の横顔は、それぞれもまたひとつの側面に過ぎないわけですが、ひとつひとつが積み重なりあい、掴み難いカフカその人の奥行きがあらわれ知られるとき、硬直したイメージは氷解し、読み手とカフカとその作品の三者の関係はまた新しく豊かなものになっていることでしょう。著者のライナー・シュタッハは十数年もかけて3巻本の大著となるカフカ伝を書き上げた無類のカフカファンどれだけ読まれ知られても、読まれ尽くされ知られ尽くされることなどない偉大な作家とその作品にあらためて出会う最初の一冊として、ぜひ手に取っていただきたいユニークな書籍です。

 

そのほか、本と本の置かれている環境を主題にした潮田登久子さんの「本の景色/Bibliothecaシリーズ」の2冊目と3冊目『先生のアトリエ』『本の景色/BIBLIOTHECA』、料理家・長尾智子さんの2年近くぶりとなるレシピブック『食べ方帖』、ホラーからダークファンタジーまであらゆる種類の菌類小説を編纂した異色のアンソロジー『FUNGI 菌類小説選集』、皆川明さんがワタリウム美術館で行ったワークショップのドキュメントブック『皆川明 100日 WORKSHOP』なども今週入荷しています。

ご来店の際はぜひそれぞれを手にとってご覧になってみてください。

 

それでは、次回の新入荷もお楽しみに。 

 

《今回ご紹介した本》

『ムービーマヨネーズ 創刊号』Gucchi's Free School

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020949/

『パンやのブラウンさん』ヨーコランド ひだにれいこ訳/WORLD LIBRARY

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020948/

『ぼくのおじいちゃん』カタリーナ・ソブラル 松浦弥太郎訳/アノニマ・スタジオ

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020945/

『Untitled』柳沢信/roshin books

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020963/

『この人、カフカ?』ライナー・シュタッハ 本田雅也訳/白水社

 

(涌上)

 

平成二十九年春 イイダ傘店 雨傘・日傘展示受注会

f:id:keibunshabooks:20170324205356j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324205515j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324205522j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324205532j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324205931j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324205921j:plain

恒例のイイダ傘店さんによる、雨傘と日傘展示受注会。
初日からたくさんのお客様で賑わっています。

雨傘は表情豊かな新作生地から、日傘の場合は、昨年秋のテキスタイルよりお好きなものを選び、それに合う傘のサイズや手元をオーダーいただけます。手元は手に馴染む木製のものや、アクリルのもの、どれを選択するかで生地が明るく見えたり、落ち着いて見えたりと、傘全体の一部分ではありますが、印象が異なってくるから侮れません。

傘以外にも、オリジナルのテキスタイルを生かしたグッズがたくさん並んでいます。
傘を形作る三角形の生地パーツ「コマ」を使用した定番コマバックや、リュックにポーチ。10種類のミニタオルと、たたんだ1枚がちょうど入るサイズのギフト袋など。また、今回はアロマスタイリストのスールネさんによる、日傘内の空間にミストするオリジナルフレグランスも。こちらのフレグランスは、イイダ傘店さんがスールネさんに渡した写真からイメージを膨らませ、ネロリやラベンダー、5つの香りを調合して仕上げて頂いたものだそう。傘を使うのを待ち遠しく思いつつ、バッグやポーチにそっと忍ばせておける小さなアイテムです。

イベントは来月1日(土)18時まで。当店奥、コテージにてお待ちしております。

f:id:keibunshabooks:20170324205958j:plain

f:id:keibunshabooks:20170324210005j:plain

「平成二十九年・春」の雨傘・日傘展示受注会
3/23(木)~4/1(土)
10時〜21時まで ※最終日は18時まで
恵文社一乗寺店 コテージ

 

(田川)

ら工房 かばんいろいろ展

ギャラリーアンフェールでは、株式会社羅工房さんによる「かばんいろいろ展」を開催中です。

f:id:keibunshabooks:20170325011941j:plain

麻生地や手漉き和紙などで和雑貨を製作されている京都の会社、羅工房さん。今回はカバンを中心に集めた展示を開催いただきました。

f:id:keibunshabooks:20170325012000j:plain

f:id:keibunshabooks:20170325012055j:plain

招き猫が大胆にデザインされたものや、シンプルなイラストがプリントされたトートバッグ。大きな書類やノートパソコンもすっぽり収まる大きなサイズ。丈夫な帆布生地で作られているので、たくさん入れても安心。

f:id:keibunshabooks:20170325012007j:plain

f:id:keibunshabooks:20170325012027j:plain

猫好きさんにうれしい猫プリントの小物も。ブックカバーやエコバッグは贈り物にもぴったりです。

f:id:keibunshabooks:20170325012015j:plain

いろんな絵柄がプリントされていて選ぶのも楽しい小さなトート。

f:id:keibunshabooks:20170325012045j:plain

可愛らしいイラストの布張りの箱は、ふわふわの肌触りが心地よくて、お子様のお道具箱にぴったり。

f:id:keibunshabooks:20170325012107j:plain

f:id:keibunshabooks:20170325012114j:plain

f:id:keibunshabooks:20170325012118j:plain

刺し子で立体的できれいな模様がデザインされたショルダー。

f:id:keibunshabooks:20170325012032j:plain

可愛らしい張り子人形も販売しています。

 

なぜか春はカバンを新調したくなる季節。新しい生活に向けて、お気に入りのカバンを探してください。ご来場をこころよりお待ちしております。

f:id:keibunshabooks:20170325011954j:plain

 

ら工房 かばんいろいろ展
開催期間:2017年3月21日(火)-27(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

羅工房では、染色した麻生地に絵柄を手描きした暖簾、タペストリーや
手漉き和紙に絵柄を手摺りをした葉書、ぽち袋、金封などを製作しています。
いつもの仕事とはちがう世界感のモノを作りたくこの「かばんいろいろ展」
を企画しました。

大胆で色鮮かなアバンギャルドなかばんいろいろ。
いつもの毎日が楽しくウキウキするデザインのかばんいろいろ。
ファッションでもなくアートでもなく、ツールとしてのかばんいろいろ。
たくさんの刺激と発見で生まれたかばんがいろいろ。
いろいろ取り揃えてお待ちしております。

f:id:keibunshabooks:20170325013521j:plain

 

(上田)