恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、3月第5週

その週に入荷した活きの良い本をご紹介する、「今週の新入荷」。本日も盛りだくさんの内容でお届けします。

 

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まずご紹介するのは、2016年9月から2017年1月まで、ベルナール・ビュフェ美術館で開催されていた本展の公式図録『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』です。フランスの国民的写真家であり、パリの街中で見かけるドラマチックな瞬間や、風刺の効いた一幕を表情豊かに写した作品を数多く残したロベール・ドアノー(1912-1994)。「パリ市庁舎前のキス」に代表されるように、《イメージの釣り人》とも評されるドアノーの作品の醍醐味は、ヒューマニズムに溢れた人間描写といえます。そのドアノーらしさが最もよく表れているジャンルともいえるポートレイトに着眼点を置いた図録です。

 

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実は京都に住む人にも馴染み深いドアノー。その理由は八坂神社前にある京都現代美術館・何必館です。館長の梶川氏は、ドアノーはじめ、当時のパリに集った写真家たちと多く交流を持たれていたそうで、ロベール・ドアノー、アンリ=カルティエ・ブレッソン、ウィリー・ロニスら、その年代の写真を愛する者にとってはなんともありがたいコレクション展を毎回開催されています。同館が編纂する数多くの図録も素晴らしいので、立ち寄られた際は要注目。(次回4/5からはアンリ=カルティエ・ブレッソン展!)

 

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そして、ついに十五巻すべてが出揃った土曜社刊『マヤコフスキー叢書』ロシア・アヴァンギャルドを代表する詩人、ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・マヤコフスキー。いまや、マヤコフスキーの作品に触れることができる数少ない資料。土曜社らしい、素朴かつ、クールなデザインと、各巻の当時の写真を用いたアートワークも魅力的なシリーズです。

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マヤコフスキー訳の第一人者、小笠原豊樹さんの新訳を前提にはじまったこちらの叢書。残念ながら翻訳作業を進めるなかで小笠原さんは亡くなられました。小笠原さんのレイ・ブラッドベリや、ロス・マクナルドの作品の翻訳を読んでいた私にとってはショックな事件で、当時読者を装って土曜社に叢書の刊行存続を問い合わせたことをよく覚えています。過去の選集をもとに全巻の発行を完遂した土曜社さんと、新訳を死の際まで続けた小笠原さんに心からの拍手を。

 

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海外文学つながりでもう一冊。今最も注目される翻訳家・藤井光編『文芸翻訳入門』。英米に限らず、ロシア、チェコ、スラブ、韓国など、多国籍な言語を相手取る旬な翻訳者たちが集い、思いおもいの文芸翻訳論を語り合う、海外文芸翻訳の良い入門書です。こちらについては、あまりに長文になったため、他のブログで詳しく紹介させていただきました。よろしければあわせてご覧ください。

keibunshabooks.hatenablog.com

 

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米軍ハウス、文化住宅、古民家などをリノベーションし、そこに暮らす人々を取材し、写真豊富に紹介するシリーズ『FLAT HOUSE LIFE』。絶版状態だったvol.1、vol.2に新規物件を加え、待望の合本『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊しました。古いイメージを取り払い、住んでみたらこんなに便利だったという平屋の魅力を存分に伝える一冊です。待ちわびていた方も多いのではないでしょうか?

先日、著者のアラタ・クールハンドさんがふらっとお立ち寄りくださいました。震災後、九州に転居されたというアラタさん。北九州の人のおおらかさ、若者が古い時計屋を改装して新しい小さなお店を開こうとしていること、米軍基地があった名残にみる居住域の区分けなど、興味深い話が次々と。このようなことを皆さまにも聞いてもらえるような場を設けようと、イベントを企画中です。お楽しみに。

 

その他、P・オースターの新刊、著者の生涯を断片的に回想する『内面からの報告書』(新潮社)、4/13に関連イベントの開催も決まった音楽家・大友良英さんが大阪築港赤レンガ倉庫で行ったグループ展と展示的音楽の記録『音楽と美術の間』(フィルムアート社)、など多数入荷しております。

 

それでは、また来週。

《今回紹介した本》

『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』ベルナール・ビュフェ美術館

www.keibunsha-books.com

『マヤコフスキー叢書 全十五巻』マヤコフスキー 小笠原豊樹訳 土曜社

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『文芸翻訳入門』藤井光編 フィルムアート社

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『FLAT HOUSE LIFE1+2』アラタ・クールハンド TWO VIRGINS

www.keibunsha-books.com

(鎌田)