恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

宮田織物 わた入れはんてんフェア①

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陶器やお洋服、パンの販売や植物が並ぶこともあるミニギャラリーですが、今度は江戸時代より親しまれてきた和服のひとつ、『はんてん』の展示会を開催いたします。おばあちゃんが古いを着物を解いて仕立ててくれた、そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。防寒着や作業着として、少し古臭いイメージをお持ちかもしれませんが、会場にお越しの際は、ぜひ羽織ってみてください。いちど着てみれば、その暖かさに驚くはず。まるでお布団に包まれているようなぬくもりです。
下の写真は、今回ご紹介する宮田織物さんの自社倉庫で、はんてんを着た社員さんたち。

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宮田織物さんは創業大正2年。久留米絣から出発し、昭和40年から、わた入れはんてんを作り始めています。織り、縫製、わた入れ、全て熟練スタッフの手作業。そして最後に一針一針と手でとじることが、宮田はんてんのフィット感の秘訣です。というのもミシンでとじると、中のわたが固定されて着心地も固くなってしまうのだとか。モダンさを取り入れつつ、手仕事に基づいた高品質を核とした商品です。

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追って詳細をご案内いたします。(店内で当店スタッフにも着てもらいました)

 

宮田織物 わた入れはんてんフェア
10月28日~11月10日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

佐々木知子「台所と風景」

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京都を拠点に活動を行う写真家・佐々木知子さんによる写真の展示と、その作品を収録した2018年カレンダーを販売しています。昨年は、陶芸家の小野哲平さん、布作家の早川ユミさんのお宅の台所を中心に撮影しまとめた2017年カレンダーを制作した佐々木さん。今回のテーマも台所。切った果実の汁が滴るまな板。油が跳ねたり、ぐらぐらと煮立つ音が聞こえそうな鍋の中。12の風景を、月めくりでおたのしみいただけます。

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・カレンダー「台所と風景」

どこかの台所にある12の風景
風景からは物語が生まれる 
物語がまたどこかへ
誰かの台所へ続いていくことを

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佐々木知子「台所と風景」
10月14日〜10月27日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

(田川)

shiro solo exhibition 「odd world」

昨年初めて当店で個展をしていただき大好評だったシロさんの展示を、今年も開催中です。今回もたくさんの方にご来場いただき、初日開店直後のみ入場・購入に制限をもうけさせていただきましたが、皆様にご協力いただき、無事初日を迎えることができました。心より御礼申し上げます。

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日本画と刺繍作品を製作されているシロさん。昨年初めて拝見した時は、その色彩感覚に鼓動が高鳴りました。溢れんばかりの色の洪水。小さなキャンバスから色とりどりの無限の世界が広がっているような日本画や、刺繍とは思えないくらい立体的に縫い込められた作品。今回も、たくさんの作品でギャラリーを彩っていただきました。

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「odd world」の楽しい予感が高まる入口。すてきに展示していただきました。

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全て刺繍でつくられた大きなキツネのぬいぐるみ。お花をいっぱい抱えて、今にも動き出しそうに生き生きと豊かな表情です。

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じっと見ていたら絵の中に吸い込まれてしまいそうな日本画。細かいところまでたくさんの色で描かれて、とてもパワフルな世界が広がります。

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賑やかにずらりと並ぶ、手の平ほどの可愛らしい動物たちも全て刺繍。まるでodd worldのカーニバルみたい、楽しい音楽が聴こえてきそうでわくわくします。

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会場にはシロさんの作業スペースも。ぎっしり山のように積まれた素材。ここからシロさんの手で生み出される作品。先週もちょうどアヴリルさんの展示で糸から生まれたたくさんの作品を拝見しましたが、人の手で生み出されることのすごさとか、無限の可能性を改めて感じて、胸がざわめいて、なんとも幸せな気持ちになりました。

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会期中はほぼずっと在廊予定のシロさん。作家さんとお客さんが出会う機会も楽しみながら、ぜひゆっくりお過ごしください。ご来場をこころよりお待ちしております。


shiro solo exhibition 「odd world」
開催期間:2017年10月17日(火)~10月23日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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色に溢れた奇妙な世界「odd world」に住むユニークな動物たちの楽しい日常。
日本画家・刺繍作家のシロによる、カラフルで心踊る作品たちをどうぞご覧下さい。


(上田)

今週の新入荷、10月第2週

あまりに暑かったので、思い切って大学ぶりに頭を丸めた途端に、急に寒くなり早くも後悔しています。気合は入ってよかったのですが、似合う服がありません。皆様も髪を切られる際は一度踏みとどまってみては。

 

それでは、今週の新入荷、10月第2週をお届けします。

 

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まずご紹介するのは、吉田篤弘さんの新刊『京都で考えた』です。作家が古本屋やレコード店、喫茶店を停留所にしながら京都の街を歩き、考えたことを綴った書き下ろしエッセイです。この“停留所”という表現は本文にも登場するわけですが、京都に住んでいる人であればぐっとくる言い回しではないでしょうか。と、またつらつらと書き始めてしまいましたが、これまでにしつこいほどこの本を紹介してきました。そろそろ別のことを書けと言われる頃合いかと思いますので、今回は内容ではなく、外縁に触れてみます。

 

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実はこの本が実際に届く前に、発行元ミシマ社の三島さんにその時点でまだこの世に一冊しか出来上がっていないという見本を触らせていただきました。手にとって、まず思い浮かんだのは、吉田さんの本だと触覚から伝わってくるという感覚でした。吉田浩美さんとのアート、デザイン・ユニット〈クラフト・エヴィング商會〉として、自著をはじめ、数多くの装丁をてがける吉田さんですが、そのデザインにはやはり一貫したものがあり、今回の新刊はよりその個性が色濃く出ている印象です。特に、世田谷文学館で開催されたクラフト・エヴィングの展示の際に同館より発行された一冊『おるもすと』とよく似ています。その理由は、紙か、版型か、厚さか、何か。ともかく、自分の中では双子のような本で、もしかすると皆様にも同じ感覚を持っていただけるのではという期待も込めて、久しぶりに『おすもすと』も仕入れました。この本の企画は三島さんから、私がまだ学生の頃よりお話をうかがっていて、書店員という枠を離れて、ずっと待ちわびてきた本でもあります。本書の京都で販売されているものについている帯の裏面にコメントを載せていただきました。ありがとうございます。

 

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続いては、翻訳家・柴田元幸さんが責任編集を務める文芸誌『MONKEY』vol.13です。今回は「食の一ダース 考える糧」と銘打った〈食〉特集。メインディッシュは、堀江敏幸、ブライアン・エヴンソンらの短編に、竹花いち子さんが作ったその話にまつわる料理の写真が添えられた頁です。ありそうでなかった試みで、その作品の質はもちろんのこと、新しい小説体験になることは間違いありません。ただ、食特集というと温かいスープとパンと…といった旨そうな食卓を想像されるでしょうが、そんなことはなく、柴田さん曰く「美味しそうとは言いがたい話の方が、美味しそうな話に比べて多数派になりました。」、同時にいずれの作品も「いい味を出している」とも。前号から続く特集の後編となる「日本翻訳史 明治篇」や、タダジュンさんが挿画を手がけ、柴田さんが訳し下ろしたボブ・ディランのノーベル賞受賞公演のスピーチも収録。編集者としての柴田さんのバランス感覚には毎回脱帽します。ちなみに表紙の猿の絵は長新太によるもの。

 

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今回の『MONKEY』にもアンケート寄稿をしている音楽家・小島ケイタニーラブ。柴田さんをはじめ、多くの作家と幾度となく共演すしてきた、文学のフィールドに限りなく近い存在です。今回、東京の本屋、SUNNY BOY BOOKSから発売されたCDブック『わたしたちの聲音』は、小島さんと作家・温又柔さんによる共作。ペソアや横光利一の作品を軸に、制作された物語と歌の往復書簡です。当店で小さな展示を開催したタダジュンさんの作品集を出版したのもSUNNY BOY BOOKS。実はまだうかがったことがなく、5坪しかないという小さな本屋から発信されている一連の熱に触れ、次回東京に行く際はぜひ立ち寄ってみたいと思わされました。

 

 

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最後に、もう一冊。少しでも出版業界に詳しい方はその名前を聞いたことがあるだろう東京の製本会社・美篶堂。そこが主だって活動している〈本づくり協会〉から届いた冊子『BOOK ARTS AND CRAFTS』です。実は少し前に発行されていたのですが、縁あって今回のvol.2から取り扱いをはじめました。特集は「言葉と文字と本の関係」。本が作家の言葉を伝える船とするならば、文字は櫂だろう、というなんとも詩的な一文からはじまります。メインは、詩人谷川俊太郎さんの一篇の詩のためだけに、書体設計士の鳥海修さんが文字を一から生み出すという、本好きにとっては夢のような企画を追ったドキュメンタリーです。実は、当店で開催された平野甲賀さんと鳥海さんのトークショーの際に掘り下げられた話題でもあります。谷川さんの父、哲学者の谷川徹三さんの自著へ施した書き文字の話からはじまり、長きにわたって言葉に向き合ってきた詩人と、文字そのものを見つめてきたデザイナーによる文字談義。もう一度言いますが、本好きには夢のような企画です。ご案内くださった美篶堂の上島さんは会報誌的な面もあるとおっしゃっていましたが、専門的な内容でありながら、誌面からはかなり開けた印象を受けました。vol.1もあわせて入荷しております。

 

それでは、今週はここまで。

来週もお楽しみに。

 

(鎌田)

〈今回ご紹介した本〉

■『京都で考えた』吉田篤弘(ミシマ社)

www.keibunsha-books.com

■『MONKEY vol.13』(スイッチ・パブリッシング)

www.keibunsha-books.com

■『BOOK ARTS AND CRAFTS vol.2』(本づくり協会)

www.keibunsha-books.com

AVRIL 25周年企画展「糸でつながる」

昨年の春、一乗寺に移転された糸屋さんアヴリル。叡山電鉄一乗寺駅から当店に向かう途中にあって、壁一面にずらりと並ぶ糸は前を通って目にするだけでも心が躍ります。色もいろいろ、質感もいろいろ、形もいろいろ、数えきれないくらいたくさんの種類の糸を作られています。

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そんなアヴリルさん、なんと今年設立25周年を迎えられました!ギャラリーアンフェールでは現在、25周年を記念した企画展を開催していただいています。25年という長い時間の中で、ご縁のある方々の作品や糸の使い方を紹介するというとてもすてきなコンセプトの展示になりました。

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ニット作家さんのセーターやストール等の他、アクセサリーや刺繍作品、お店などでラッピングに使われたりと、糸の使い方は本当に無限大。いろんな糸を取り扱われているアヴリルさんだからできる、多彩な作品展です。

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当店でもお世話になっている方々の作品もちらほら。書籍が人気の横尾香央留さんや三國万里子さんの作品も。当店でお世話になっている人たちもアヴリルさんの糸を使ってるんだ!となんだか嬉しくなりました。

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会場では出展作家さんの書籍も販売しています。(本の表紙になっている作品も実際に展示されています!)ぜひ手に取ってごらんください。


ギャラリーでは、当店スタッフ3人が選んだ限定ペラコーンも販売!数種類の糸を組み合わせて小さな糸巻きにされている「ペラコーン」は、アヴリルさんでも人気の商品。

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今回は「秋の夕暮れ時から、秋の夜長の読書」をテーマに、本を連れて帰る秋の夕焼け色、毛布にくるまってまどろむ読書の色、本の世界を夢で見る色の3種類をイメージして選ばせてもらいました。お気に入りが見つかりますように・・よければお土産にいかがでしょう?

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ギャラリーに並ぶ作品を眺めていると、楽しい使い方がまだまだたくさん思い浮かびそう!アヴリルさんは当店から徒歩すぐ(当店を出れば見えるくらい)なので、ぜひ合わせてお立寄りください。

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そして、ますますお店のハシゴをしたくなる特別企画「本と糸にまつわるspecial企画」も実施中!当店でお買い物をされた方全員にお配りする“オリジナルしおり”を持ってアヴリルのお店に行くと、その場で好きな糸を選んでしおりに付けてもらえるという、昨年も大好評だった企画です。当店のどのレジでもお配りしているので、アヴリルさんに立ち寄ったことがないという方も、この機会にぜひお気軽にハシゴしてくださいませ。

 

この週末は隣のコテージにてイベントも開催!出展されている作家さんのワークショップをはじめ、カフェコーナーやトーク、販売コーナーなど盛りだくさん。憧れの作家さんのワークショップとあって、連日たくさんの方にご参加いただいています。

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糸がつないだ25年。まだまだこれから先もたくさんのご縁を紡いでいかれるんだろうなと、改めて糸の魅力を見つけることができました。ご来場いただいたみなさんにもすてきなご縁が訪れますように。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

AVRIL 25周年企画展「糸でつながる」
開催期間:2017年10月10日(火)-10月16日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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アヴリル設立25周年を迎え、糸の魅力、糸あそびの楽しさやアイデアを広げるきっかけとなる企画展を恵文社一乗寺店にて開催します。
編んだり、織ったり、巻いたり、垂らしたりなど、糸の使い方に決まりはなく、アイデアは無限大です。
企画展では、25年という時間の中で糸がつなげてくれた、アヴリルとご縁のある方々の素敵な糸の使い方やアイデアを展示・紹介します。
また期間中、AVRIL創作日和を開催。魅力ある作家さんによるワークショップやトークイベントもあります。
この機会にぜひお越しください。

 

[ 出展者(敬称略、順不同) ]
アウラ・ロコ/atelier KUSHGUL/atricot 笹谷 史子/岩切 エミ/eccomin 野口 智子/m.soeur/蔭山 はるみ/片山文三郎商店/グランマーブル/気仙沼ニッティング/SIONE/下田 直子/中川政七商店/西村 知子/BIZARRE/ヒロタ リョウコ/pundamilia/Paper message/Miknits(ほぼ日刊イトイ新聞)/山田 さきこ/横尾 香央留/吉川 紀代子

 

AVRIL 25th Anniversary Special Site> http://www.avril-kyoto-special.com/
関連企画コテージイベントの詳細> http://www.cottage-keibunsha.com/events/20171014/
2016年展示の様子> http://keibunshabooks.hatenablog.com/entry/2016/08/19/213000

 

(上田)

「京都で考えた」発売前夜

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京都にどんな用事があるのかと云うと、さして用事はなく、いつもそうなのだが、ひとりで街を歩いて考えたいと思っている。ふと気まぐれが起きて仏像などを拝観することもあるかもしれないが、行くところはあらかた決まっていて、古本屋と古レコード屋と古道具屋である。あとは喫茶店と洋食屋だろうか。わざわざ京都まで来てどうして、と思う人もいるだろうけれど、じぶんにとって京都という街は、そういった店々を停留所にして、あてどなく歩きまわることに尽きる。そして、歩き回ることが、そのまま考えることになる。―― 『京都で考えた』8頁より

 

明朝から店頭に並ぶ、小説家・吉田篤弘さんの新刊『京都で考えた』。本書では、百万遍や紫野、イノダコーヒー三条支店といった具体的な場所や店の名前を出しながら、作家が京都という街で、どう過ごし、どう考えたかが綴られています。

 

懐かしい匂いのするサスペンスから、こちらまで赤面するような青春モノまで、京都を舞台に書いた小説は多くとも、吉田さんの作品で京都について書かれたことはありませんでした。(予防線を張っておくとすれば、見落としは大いにありうる。)それゆえに、吉田篤弘と京都という組み合わせは意外でしたが、先に載せた冒頭の一節を読んで早くも納得しました。本書に書かれているように、点在する店を停留所にして、街をあてどなく歩き回るという姿は、紛れもなく『つむじ風食堂の夜』や『それからはスープのことばかり考えていた』の舞台になった架空の町、月舟町を彷徨う主人公の背中と重なります。月舟町には、犬のいる映画館があり、スープの美味しいサンドイッチ店があり、無口な店主が営む食堂があります。

 

まさか月舟町とは京都のことだったのでしょうか、だとすればまさに灯台下暗しといったところで、住み慣れた街も途端に輝いて見えるようです。そして京都に住む僕らも同じく、決まった場所を回遊魚のようにぐるぐると周遊することでこの街を楽しんでいます。これは、碁盤の目の中だけで全てが完結するという京都の街の狭さに起因するのかもしれませんが、古本屋に寄って、映画を見て、珈琲を飲んで、一杯やってから帰るという一連の流れが、全て徒歩圏内で済むというコンパクトさは京都の魅力といって良いでしょう。京都の居心地が良いから吉田さんの小説を好んで読んできたのか、吉田さんの作品を読んできたから京都に惹かれて住んでいるのか、今となってはどうでもいいことです。

 

おそらく、吉田さんが使う京都という地名は“街”そのものの代名詞としての機能ももっていて、本書で語られた、時間、本、小説、温泉、店にまつわるあらゆる考えは多くの場合において他の街にも同じことが言えるかもしれません。『京都で考えた』は京都の本であって、京都の本ではなく、読む人によって印象をがらりと変える一冊だと思います。切り口の多い本というのは、総じて良い本が多いですが、私にとっては“街”の本といえそうです。これから二回、三回と繰り返して読んでいきます。

 

いよいよ明日、京都限定先行発売開始。私の他に誰もいない店内、たったひとりの前夜祭。すでに棚に本は並んでおります。皆様にとってこの本が特別な一冊になりますように。

 

(鎌田)

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■『京都で考えた』吉田篤弘(ミシマ社)

装幀:クラフト・エヴィング商會

10/12より 京都限定先行販売

10/20より 全国販売開始

www.keibunsha-books.com

 

■イベント情報:『京都で考えた』吉田篤弘(ミシマ社)刊行記念イベント 
【出演】 吉田篤弘・吉田浩美(クラフト・エヴィング商會)

【日時】 10月17日(火)19:00start / 18:30open

【会場】恵文社一乗寺店

ご予約は恵文社店頭まで、残席僅か

http://www.cottage-keibunsha.com/events/20171017/

 

■フェア情報:書店内にて吉田篤弘&クラフト・エヴィング商會著作のフェアを開催中。世田谷文学館発行『おるもすと』も久しぶりに仕入れました。

 

「じぶんころし − sandglass of desire −」Son Young-A • Park Chae-Eun 二人展

ギャラリーアンフェールでは、当店ご近所の京都造形芸術大学に通う留学生お二人、孫瑛我さんと朴彩恩さんによる展示「じぶんころし − sandglass of desire −」を開催中です。

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二人のイラストのテイストは違いますが、一度見たら忘れられないようなインパクトのある作品が並びます。

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欲望に向かう二人が抱く思いから生まれた今回の展示。自分自身のことなのになんだかとてつもなく遠い存在に思える時もある不思議な存在。それを知ろうとすることは、時にとても辛かったり、傷みを伴うもの。「わたし」を探し、きちんと理解することはもしかすると一番難しいことなのかもしれません。

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「わたし」を知るために繰り返される、嗜好、欲望、葛藤、転覆、孵化というテーマで描かれた作品。陰と陽、裏と表…誰しもがどこかに抱く二面性は、まるでガラスの中を滑り下り、分かれては一緒になり、延々と分かつことの無い時を刻む砂時計。巡り巡ってすべて自分。二人が曝け抉り出したのは人間の本当の姿なのかもしれません。

 

日本語が流暢で笑顔がとてもかわいいお二人です。時間を見つけては在廊されているので、見かけたらぜひ作品についてお話してみてください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

「じぶんころし − sandglass of desire −」Son Young-A • Park Chae-Eun 二人展

開催期間:2017年10月3日(火)〜10月9日(月)

開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)

開催場所:ギャラリーアンフェール

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「わたし」は「わたし」を知らない。「わたし」の奥に潜んでいる何かを知るため、腹を切り、ナカを見る。欲の開放は死を招くが、理解は新たな「わたし」を生み出す。嗜好・欲望・葛藤・転覆・孵化で紡ぎられた「自分殺し」の彼方に存在する「わたし」に私は会いたい。

 

孫瑛我 / ソンヨンア

韓国生まれ。2016年 京都造形芸術大学 キャラクターデザイン学科卒業。現在、京都造形芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻(修士課程)在学中。

https://www.instagram.com/jadegrun104/

 

朴彩恩 / パクチェウン

平凡な大学生です。

https://www.instagram.com/99bada/

 

(上田)