恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

平成二十九年秋 イイダ傘店 日傘・雨傘展示受注会

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会期中最初の日曜はあいにくの台風到来でしたが、連日、たくさんのお客様で賑わっています。先にこちらの記事でもご紹介していますが、今回の受注会では日傘は新作の5種、雨傘は二十九年・春の生地よりお選びいただけます。

今回の案内状のデザインにも採用された新作テキスタイル「葉っぱ」は、緑色の植物模様を散りばめたものと、それを反転したように、葉の部分の色を抜いた紺地のものの2パターン。特に紺色のものは傘の内側の方が葉の形がくっきり、外側は絣にも似た味わいのある表情です。会場内で傘を開き検討されるお客様の姿が見れるのも、イイダ傘店さんの展示ならでは。

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傘以外の商品も多数販売しています。新作のハンドタオルやご祝儀袋、2018年カレンダー。前回もご好評いただいたケータリングバッグは、傘柄と、人気のおでん柄をご用意しています。薄くて軽い傘生地を使用した大容量のこちら。使わないときはクシャクシャと丸めて、ころんとコンパクトに。お買い物や旅先で便利な品です。


会期は残り7日間、沢山のご来場をお待ちしております。

 

平成二十九年・秋 イイダ傘店 日傘・雨傘展示受注会

会場:恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール
日時:9月13日(水)- 9月25日(月)
10時 - 21時 ※最終日の展示は18時までです。

 

(田川)

 

とっとりとりどり2017 のおしらせ③

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鳥取県の名産品や、スタッフが見つけたおいしいもの、を揃えたフェア「とっとりとりどり」が今週末より始まりました。今回は型染作家の関美穂子さんに、和紙を用いた作品もいくつか制作頂いています(詳しくは こちら)。会場の天井から吊るされた鳥や提灯型の飾りも、関さんお手製。因州和紙に型染めし、表面にはこんにゃく糊を塗り仕上げた、見かけ以上に強度のあるものです。これらの創作のきっかけは、大因州製紙協業組合付属の和紙資料館を訪れたことから。鳥取市青谷にあるこの資料館は、世界各地、古今東西の紙の資料2000点余りが収蔵、展示された場所。その中のお祭りや神事で使われていたお飾りが持つ、素朴で不思議な美しさにインスピレーションを得て生まれた品々です。

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加えて、「鳥取にありそうなお店のマッチ」なるものも販売しています。マッチと一緒に、関さんのコメントも添えていますので、ご来場の際はあわせてご覧くださいませ。

こちらでも少しご紹介しますと…
鳥取を訪れた際に印象に残ったのは、70、80年代風の喫茶店や食堂の佇まいや店名でした。砂丘の前には、「砂丘フレンド」や「すりばち」といった飲食店、海沿いの道にはファンシーショップを思わす喫茶店があったり、なんだか味わい深いお店が沢山ありました。きっとマッチがあったら思わず持ち帰りたくなるような、そんな雰囲気です。鳥取旅行の思い出をつめた、鳥取にありそうな、あったかもしれないお店のマッチを作りました。

 

とっとりとりどり2017
9月16日〜9月29日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

◎コウボパン小さじいち パンの販売
9月23日(土)12時30分より 生活館フロア内にて
※今回、小さじいちさんは在廊されません。パンのみの販売です。売り切り次第、終了とさせて頂きます。

 

これまでの記事:
とっとりとりどり2017 のおしらせ①
とっとりとりどり2017 のおしらせ②

 

(田川)

今週の新入荷、9月第3週

現在、神戸のKIITOで開催中の「Robert Frank: Books and Films, 1947-2017」展。ある年上の友人にその話をしていたら、後日神戸に行ったからとその展示図録を買ってきてくれました。小さい頃父親が仕事の帰りに玩具を買ってきたときのあの気持ち。前に中国に旅行に行った同僚が私の好きなイラストレーターの作品集を買ってきてくれたこともありました。この仕事をしていると本をプレゼントされることが意外と少ないのですが、嬉しいものですね。

 

さて、今週入荷した活きの良い本を紹介する「今週の新入荷」、9月第3週をお送りします。

 

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ロシアの児童文学やその周辺文化を紹介する雑誌『カスチョール』。実に3年の期間を空け、33・34合併号が届きました。特集は「日本人留学生が過ごした1960~1970年代のモスクワ」です。「アフリカの年」と呼ばれる1960年、多様な人材育成を目的に途上国の学生を支援するべくソ連のフルシチョフが設立した民族友好大学。カスチョールの会の主宰田中泰子さんをはじめ、そこで学んだ日本人留学生の回想記を中心に今号は構成されています。

 

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加えて、当店でも5月に上映会を開催したアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインへのロングインタビューや、S・マルシャークが子どもに宛てて書いた、本邦初訳の詩「ミスター・ツイスター」も収録しています。こちらの詩、とてもユニークです。アメリカの元大臣、実業家、大富豪のミスター・ツイスターがある日思いついたロシア旅行。根っからの差別主義者のツイスターさんは有色人種が大嫌い。旅先でも白人だけが泊まるホテルを探すも、ロシアにそんなホテルはなく…。この詩が書かれたのは随分昔の話ですが、まるで現在のアメリカの誰かさんを思わせます。

カスチョールという言葉は、ロシア語で「たきび」を指します。1991年の創刊以来、四半世紀に渡ってロシアの子どもの本の魅力を伝えてきた本誌ですが、次号の35号をもって終刊を予定されているそうです。専門的な内容ではありますが、ぜひこの機会に魅力的なロシア児童文学の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

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ニューヨークの建築書出版社〈Princeton Architecture Press(プリンストン・アーキテクチュラル・プレス)〉が発行する絵本たち。誰もが知っているような世界中の名建築が完成するまでをイラストとともに紹介する「Who Built That?(誰が建てたの?)」シリーズから、今回は〈MODERN HOUSES〉〈SKYSCRAPERS〉〈BRIDGES〉の三冊が入荷しました。フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジェの代表的な建築をその外観だけでなく、その完成までの過程や、なぜ革新的だったのかを平易な言葉で紹介。英語表記ではありますが、難しい表現はありませんので自然にお楽しみいただけることでしょう。単に建築を扱ったドローイング集としても魅力的です。

 

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同じくPrinceton Architecture Pressが制作したスタンプキット『STAMPVILLE』もおすすめです。三角、平行四辺形、格子、レンガ柄、窓、扉、電線…、一見何とでも捉えることができる図柄をした25種類のスタンプ。紺色と黄色のインクパッドを駆使して組み合わせれば家や、ビル、工場、樹木など、私たちが街頭で目にするもの全てをスタンプから生み出すことができます。少し試してみましたが、建築を専門とする出版社が手掛けただけあって良くできています。

 

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また別の出版社にはなりますが、『My First Shapes with Frank Lloyd Wright』も同じ建築を扱った絵本です。丸、三角、四角。こちらはフランク・ロイド・ライトの建築の細部を見ると多くの場面で基盤として用いられている幾何学的形状に焦点をあてて紹介するボードブックです。小さなお子さんがかたちを学ぶのにぴったりの一冊。

 

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京都文化博物館で今週末まで開催中の「世界最高の写真家集団マグナム・フォト創立70周年 パリ・マグナム写真展」の図録も入荷しています。ブレッソン、キャパらが設立したマグナム・フォト。いままでにも多くの場で会員たちが撮影した写真を目にしてきましたが、今回の展示、あるいは図録は創設期から戦後、復興期、解体期、そして現在まで、世界情勢に合わせ期間が設定され、それとともにマグナムの写真もどう変わってきたか紹介する構成をしています。まさしくマグナム・フォトが歩んできた70年の歴史を総攬する一冊です。巻末にはいしいしんじさんの解説とも小説ともとれる寄稿も収録。

 

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埼玉、福島県で行われた『ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて』展の図録もあわせて入荷しています。跳んだり、跳ねたり、人や動物とともに過ごした幸せな瞬間をおさめた写真たち。およそ160点の作品と、時代背景や撮影技法にまつわるコラムなど読み物としても充実しています。邦訳新刊としてはラルティーグ唯一の写真集です。

 

今週はここまで。また来週もお楽しみに。

〈今週ご紹介した本〉

■『カスチョール 33・34合併号』(カスチョール編集部)

www.keibunsha-books.com

■『WHO BUILT THAT?』Ddier Cornille(Princeton Architecture Press)

www.keibunsha-books.com

■『My First Shapes with Frank Lloyd Wright』Lydia Ortiz(mudpuppy)

www.keibunsha-books.com

■『パリ・マグナム 展示会図録』(コンタクト)

www.keibunsha-books.com

■『ジャック=アンリ・ラルティーグ 展示会図録』(コンタクト)

www.keibunsha-books.com

(鎌田)

とっとりとりどり2017 のおしらせ②

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いよいよ今週末から開催します、とっとりとりどり。先にご紹介した因州和紙に加えて、食品もご用意しています。生地全体にお酒が効いて、じゅわっとした食感が堪らない「亀甲や」ブランデーケーキや、日本有数のミニトマトの産地、鳥取県琴浦市から届くトマトケチャップ、通常は中国地方限定販売の白バラ牛乳サブレなど、京都では手にしにくいものばかり。加えて、昨年に左京区から鳥取県北栄町に移住した「miepump」さんの珈琲豆、も並びます。

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写真はmiepumpさんのお店からの景色。目の前に広がる大豆畑と麦畑。空を遮るものがない、素敵な場所です。10月末には、イイダ傘店さんの展示会も開催とのことですので、お近くの方は是非。

 

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また、会期中の9月23日には、
大山のふもとでお店営む「コウボパン小さじいち」さんのパンの販売も行います。関美穂子さんが制作された上の図案のテーマも、大山。小さじいちさんのパンや、大山牧場で食べたソフトクリームのおいしさから生まれたイメージです。

 

◎コウボパン小さじいち パンの販売
9月23日(土)12時30分より 生活館フロア内にて
※今回、小さじいちさんは在廊されません。パンのみの販売です。売り切り次第、終了とさせて頂きます。

 

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とっとりとりどり2017
9月16日〜9月29日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

とっとりとりどり2017 のおしらせ①

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鳥取県の工芸品や食品を集めご紹介する「とっとりとりどり」を、今年も開催!
販売物を順次ご紹介していきます。


豊かな自然と清澄な水の流れる鳥取は、古くから和紙の産地として栄え、画仙紙・半紙など書道用紙の生産量は国内随一。筆の運びが滑らかで墨がかすれず、濃淡の表現が思いのままに出来ることから「(因州)筆きれず」とも呼ばれてきました。今回は、その産地のひとつ青谷町より、因州和紙の品々が届きます。

 

●大因州製紙協業組合

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便箋表紙のこの意匠に、見覚えのある方も多いはず。楮を使用した和紙として日本一の生産量を誇る大因州製紙からは、名刺や一筆箋、身近な紙文具を販売します。創業者は20代の頃に柳宗悦に出会い、 畑で採れたトウモロコシを差し上げたところ、それを包んでいた和紙の美しさを褒められたのだとか。

●長谷川憲人製紙

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長谷川憲人製紙さんは、青谷町で三代続く手漉き和紙の工房。楮紙を主に三椏、雁皮紙等を漉いており、これまでにはスペインの美術学校等で和紙を紹介、実演したことも。

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今回はこちらの紙を用いて、京都の型染作家・関美穂子さんに、手染の品々を作って頂きました。中でもおすすめしたいのは、国産楮100%の手漉き和紙を表紙に仕立てた、じゃばらノート。鳥取を訪れた時の思い出が図案となっています。写真左が『大山』、右側が『砂丘』をテーマとしたもの。日記やご朱印帳として、また写真を貼りアルバムとしてもお使いいただけます。是非会場にて、実物をご覧いただけましたらと思います。


とっとりとりどり2017
9月16日〜9月29日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

今週の新入荷、9月第2週

今週の新入荷、9月第2週をお届けします。

 

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 今週まずご紹介するのは、2015年台湾をともに訪れた二人の青年が、10日間に及んだ旅程を二年越しに振り返り、撮りためていた写真を並べながらそれぞれに旅の記憶を綴った旅行記、壇上遼+篠原幸宏『声はどこから Where is the Voice Coming From?』。

近年、日本でも注目度が年々増し、人の行き来も盛んな台湾と日本。台湾の食やカルチャースポットを紹介する書籍もここ数年、国内でぐんと増えてきました。その多くが台北や台南を中心にガイドブック的に観光地やお店を紹介したものですが、本書は、あまりこれまでには注目されてこなかった台湾東部への旅を敢行し、あくまで私的な旅の記憶として綴っているのがユニークなところ。印象的で強烈な現地の人々との一期一会の出会い、台湾人と日本人との間に生まれた自身の出自や、かつて一年間の留学生活を過ごした立場から考えることを実直かつ軽快に、時にユーモラスに綴る檀上さん。異様に解像度の高い風景描写や、2年を経てあいまいになりつつある旅の記憶に、夢や過去、フィクションなどを織り交ぜながら小説の文体で綴る篠原さん。ともに行動し、同じ場所を旅しながら、全く対照的な視点で台湾を捉えたそれぞれの文章が並置されることで、同じ場所でも人の数だけ存在する旅というものの本質に触れることができるような一冊となっています。テキストの合間には、それぞれの個性やパースペクティブが表れた印象的で美しい写真が並びます。

日常を離れた旅先での印象的な風景、その土地の名を聞くたびに具体的に思い出せる記憶を持つことの豊かさ。ぜひテキストを読みながらその旅を共に楽しんでみてください。

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そして、本書の作り手の一人である檀上遼さんが2015年に発行した、台湾での一年間の留学生活を綴った『馬馬虎虎』も今回、同時に入荷しています。こちらもあわせてぜひ。

 今月12日からは、大阪・肥後橋の「Calo BookShop & Cafe」さんにて『声はどこから』からの写真を中心とした檀上遼さんの写真展も開催されます。気になった方はぜひこちらにも足を運んでみてください。

 

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必死に気張り、恍惚の表情を浮かべ、白目を剥きながら…。写真家・木村高一郎が、まだ自分でおしりを拭けない自身の息子のトイレに付き添い、その排泄を手伝いながら、子どもが見せる千差万別な表情をカメラに収めた写真集『ともだち』。大人にとっては淡々と無意識に過ぎていく排泄行為ですら、子どもにとっては一生懸命取り組むべき時間。フロイト論ずるところの肛門期、排泄という行為を通して自分の身体と向き合う少年の一生懸命な姿は、とびきり愛らしく、見るものに微笑みを与えます。どんな文化圏に生まれ育った人にも共通の過程と行為を通じて、人間にとっての「生きる」ということをあらためて新鮮に見出させてくれるような作品集です。

 

木村高一郎さんの写真集はこの他、2年間に及び自宅の寝間の天井にカメラを設置し、父、母、子の睦まじくもユーモラスな家族の時間を連続的に記録した『ことば』も届いています。一枚では忘れ去られてしまうような写真も同じ構図から記録され続けることにより、そこに時間とストーリーが生まれるということ。『ともだち』同様、人間の本能的な営為を観測的に捉える視点にユニークな作家性が表れています。こちらもぜひあわせてごらんください。

 

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 丸亀市猪熊弦一郎美術館が発行する『私の履歴書 猪熊弦一郎』。1979年1月、日本経済新聞連載の「私の履歴書」に画家が寄せた文章を集め収めた本書は、2003年の初版発行以来、創作をする人々の間で長らく愛読されてきたロングセラー。ブルーの帯が目印だった本書がこの春、新装改訂版となり帯も一新。当店でも取り扱いを開始しました。

香川県高松市で生まれ丸亀市で育った幼少期から学童期の瑞々しい記憶の数々、画家になろうと決心し上京した美術学生時代、師と仰いだ藤島武二の言葉、パリで出会ったマティスやピカソとのエピソード、友人・藤田嗣治と過ごした疎開先のフランスの片田舎での日々、記録画のため従軍し戦地で見た光景、二十年に及んだニューヨークでの創作の日々など、七十六歳の猪熊が自らの来歴を振り返り、真摯に率直に綴った文章。

一回ごとの文量は4ページほどと少なく、さらりと読めるものながら、いずれも印象的な逸話に彩られた名文ぞろい。猪熊の文筆家としての魅力にも触れることができる一書、手に取りやすい価格ですので、ぜひ手元に置いて様々な折に開いていただければと思います。

 

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 骨董、工芸、美術、建築など独自の目線で美を追求する『工芸青花』の8号。18世紀オランダのデルフト白釉皿、白鳳時代の覆瓦、昭和のブリキ外板など、欠け、擦れた古いモノに息づく時間の美を提示する坂田和實さんの特集にはじまり、スペインのサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院に見る中世ロマネスク美術の魅力、文部省技官として沖縄の戦災文化財を調査復元した森政三が遺した素材も出自も様々な沖縄の古裂の数々、柳宗悦の古美術蒐集家としての顔と仕事、堀江敏幸さんによるクートラス評伝連載などが続きます。

様々な書き手が、自由にその眼で捉えた美しきものを紹介する精華抄ページには、ミナペルホネンのデザイナー皆川明さんの物作りの心得、京都・東山のギャラリー「艸居」が紹介するユーモラスなポップアートなどが書や骨董などとともに並びます。

物の本質をつたえるフルカラーのビジュアル、意匠に込められた美に魅せられ、時代や場所を様々に行き巡る書き手たちのテキスト。ぜひじっくりゆっくりページを捲りながらモノに息づく時間に思いを馳せてみてください。

 

その他、写真家の鈴木大喜さんが、キリスト教の聖地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路を歩き、出会った人々や風景を撮り収めた『Camino de Santiago』、絵本作家・酒井駒子さんが筑摩書房のPR誌で二年間にわたって連載した絵と言葉を一冊にまとめた作品集『森のノート』、今までにない音楽、あたらしい医療の可能性をめぐる大友良英さんと稲葉俊郎さんの対話集『見えないものに、耳をすます』、大人と子どもが過ごす大切な時間を描いた絵本、小沢健二と日米恐怖学会『アイスクリームが溶けてしまう前に(家族のハロウィーンのための連作)』なども入荷しています。

 

それでは、また来週をお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

■『声はどこから Where is the Voice Coming From?』檀上遼 篠原幸宏

■『ともだち』木村高一郎/リブロアルテ

■『私の履歴書 猪熊弦一郎』丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

■『工芸青花 8号』青花の会/新潮社


 

(涌上)

「COLORS」natsuki tsukagoshi icing cookies exhibition

f:id:keibunshabooks:20170910041753j:image ギャラリーアンフェールではアイシングクッキー作家・塚越菜月さんによる個展「COLORS」を開催中です。

f:id:keibunshabooks:20170910041454j:image元は菓子職人をされていたという塚越さん。アイシングクッキーと出会い、アイシングクッキー作家としてイラスト、音楽、書籍などさまざまなジャンルで活躍されています。

f:id:keibunshabooks:20170910041536j:image絵とともに 額におさめられた色とりどりのアイシングクッキー。甘い砂糖で彩られたクッキーは、ふわふわひらひらと花開くように可愛らしく、時に艶やかで、お菓子とは思えないほどに表情豊か。

f:id:keibunshabooks:20170910041545j:imagef:id:keibunshabooks:20170910041554j:image勿体なくて食べれないアイシングクッキーを作品として美しく飾って、3-4年は楽しめるそうです。食べられないクッキーの作品。食べ物の持つパワフルさと、儚さが美しく閉じ込められた作品は、ほぼ永久に飾っておける絵画などの作品とはまた違った愛おしさを感じます。

f:id:keibunshabooks:20170910041640j:image会場では、制作過程の映像も上映されています。クッキーというキャンバスに次々といろんな色がのせられていく様子はまるで魔法のよう。アイシングクッキーで心の負が一瞬でも抜け落ちますようにと願う塚越さんの作品。ぜひじっくりご堪能ください。

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「COLORS」natsuki tsukagoshi icing cookies exhibition
開催期間:2017年9月5日(火)-12日(火)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール 

f:id:keibunshabooks:20170910041839j:imageドローイングに合わせてアート(美)とイート(食)を融合、チャーミングの向こう側にある生の悦びを描くアイシングクッキー作家・塚越菜月。約2年ぶりとなる個展は、自身初となる京都にて。世界に溢れるさまざまな色、「COLOR」たちが持つ無限の可能性をアイシングクッキーで引き出してゆきます。ときに華やかに、ときに艶やかに――姓名の煌きにそっと火を灯す、甘美なまでの色たちの脈動をどうか感じてください。
http://www.tsukagoshinatsuki.com/colors/

 

塚越菜月|Natsuki Tsukagoshi
アイシングクッキー作家
2014年春、オリジナル作品の制作を開始。以降『可愛いだけじゃ終わらない』をモットーに、お菓子を使ったアート作品を発信。心が温かくなったり、マイナスな感情がそっと抜け落ちるような"心の空間デザイン"を目指して、画面いっぱいのお菓子と概念を詰め込んだ作品を次々と手がける。今回ライヴでも共演する3ピースユニット・chocolatreをはじめ、辺見えみりプロデュースブランド『Plage』や銀色夏生、奇妙礼太郎、柴田元幸責任編集『MONKEY』、さめざめ、ニシワキタダシとの仕事や、六本木<スヌーピーミュージアム>でのアイシングクッキー・ワークショップ講師など、活動の場を着実に広げている期待のアーティスト。

 

(上田)