国内の絵本ではまず見かけないような色彩と、版画のような少し擦れた風合いがなんとも可愛らしいポルトガルの絵本『ぼくのおじいちゃん』(アノニマ・スタジオ)。おちゃをしたり、ピラティスやドイツ語を習ったり、友達と一緒に川べりでランチをしたり。こんなに自由な毎日。自分がしたいことをしながら、楽しく暮らすおじいちゃんの姿が小さな子どもの目線から語られています。
実は、この絵本にはもう一人、隣人のライトさんという人物が登場します。会社勤めの若いライトさんと、自由を謳歌するおじいちゃんの対比がこれまた面白い。ライトさんはいつも時間に追われていて、時計職人のおじいちゃんは時計を身につけてさえいない。電子レンジで温めたものをオフィスで食べるライトさんと、芝生の上でランチをするおじいちゃん。宅配ピザを頼むライトさんと、自家製のパスタを愉しむおじいちゃん…。延々とこの調子で物語はすすみます。
そんななかでおじいちゃんからつぶやかれる「わしも むかしは じかんを きにしていた」というセリフ。どのページでもおじいちゃんとライトさんは同じ構図で描かれ、それでも日々の楽しみ方は正反対。きっとそんな含意はないのでしょうが、もしかするとライトさんはおじいちゃんの若いころの焼写しなのかと想像してしまいます。読み返すほどに、歳を重ねるということが楽しくなるような、素敵な物語です。
翻訳はソール・バスや、ミロスラフ・サセックの絵本を日本に紹介してきた松浦弥太郎さん。絵本の雰囲気に合わせ、多色の色鉛筆で書いたと思われる松浦さんサイン入りのものもご用意しております。アノニマ・スタジオの絵本は毎回面白いので、ご興味がある方は調べてみてはいかがでしょうか。当店のオンラインショップでもこれまでにアノニマ・スタジオから出版された絵本の掲載も増やしていく予定です。お楽しみに。
また、現在書店奥の壁面にてパネル展を開催中です。あえてページの順番などを無視して掲示しています。お立寄りの際はこちらも是非ご覧ください。
(鎌田)