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恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、4月第3週

今週の新入荷、4月第3週をお届けします。

先日、弊店cottageにて開催された「ぽかんのつどい」。小説家でフランス文学者の山田稔さんを囲むかたちで文藝リトルプレス『ぽかん』に関わる方々やその読者の方々がご近所からも遠方からもたくさん来場されました。開催時間帯に書店でお店番をしていたためイベントの様子を見ることはかなわなかったのですが(無理してでも見ればよかったと大いに後悔しています…)、イベント終了後のcottageに少し足を踏み入れただけで伝わってくる、集まった方々の熱気とイベントの余韻を含んだ充実した空気が何とも印象的でした。もし次回の開催が企画されるなら、ぜひその場に居合わせたいと思います。

その会場でお披露目となったおよそ2年ぶりの発行となる『ぽかん 06』、店頭でも取扱いがはじまっています。

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北九州、門司での幼少期を回想する山田稔さんの新たな連載で幕開ける6号は、画家・松本竣介の風景画の描写から始まる中野もえぎさんの文章、湖に沿った堤防での不思議で小さなやりとりを綴る岩阪恵子さん、明治生まれの詩人・武田豊の来歴を追った澤村潤一郎さん、散歩道の情景を印象深く描いた秋葉直哉さん、多くの読書人を魅了したある文庫を手掛けた編集者としてその盛衰の記憶を綴った服部滋さんの文章などが続きます。恵文社スタッフ・能邨陽子も、店頭での出来事から回想した本を巡る個人的な記憶を寄稿しています。さらには、外村彰さん、扉野良人さん、内堀弘さんのそれぞれに味わい深く読み応えのある連載テキストが並びます。

これまでにも新号が届くたびごとに手に取ってきましたが、2年ぶりとあって、あらためて数ある文藝リトルプレスのなかにおいても稀有で特別な読後感を与えてくれる『ぽかん』に魅了されています。待望された方も、初めましての方も、安易な共感や捉えやすさから逃れるような、読書の本質的な歓びをしなやかに体現する文章の数々に、ぜひゆっくり向き合っていただければと思います。

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 弊店のみの特典として、中西真矢さんによる猫モチーフの蔵書票を先着でお付けします。こちらは数に限りがありますのでぜひおはやめに。

 

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フランス人フォトグラファー、ジェレミ・ステラが採集するようにカメラに捉え収めてきた現代建築家たちが手がけた東京の住宅。その53点の住宅写真を一冊にまとめた『東京の家 tokyo no ie』も今週入荷した一冊。

一般的な建築写真では省略されるはずの、近隣の標準的な建築物や偶然その場を通りかかった人々の姿など周囲の風景を含めて写し出すことで見えてくるのは、現代建築を街の一部として受け入れ溶け込ませる東京という場所の不可思議さ。きわめて個性的な存在感を示すそれぞれの建築物をも呑み込むようにして風景化してしまう雑多さは欧米圏では決して見られないもので、増殖と改変、スクラップ&ビルドを繰り返す東京の統一性の無さそのものが、これらの魅力的な建築の存在を逆説的に許容しているのかもしれません。ストリートフォトと建築写真のはざまにあるようなユニークな視点が捉えたきわめて日常的な風景の連続を眺めながら、長い時間に浴するなかでこれらの景色が今後どのように変化してゆくのだろうかということにも思いは及んでゆきます。

 

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香港のヴィジュアル・アーティスト、YAN Kallenがおよそ半年の間京都に滞在し、漆器や和紙、自然染色など日本の伝統工芸の工房を訪れるなかで生まれたフォトブック『BETWEEN THE LIGHT AND DARKNESS』。職人たちとともに過ごしながら、それぞれの現場において何代にもわたり継承されてきた技術や道具にフォーカスし、その場の空気や物の気配を大切に掬い上げたモノクロプリント。

一個人を超えた伝統の連続性、土地や素材といった自然との調和から生みだされる匠の手仕事。アーティスト本人のテーマでもある東洋的な自然観や美意識が反映された一様一葉は静謐で美しく、被写体が含んできたであろう時間や痕跡の緩やかなダイナミズムを観る者に柔らかく提示します。

現在、京都市の各所で開催中の「京都国際写真祭 KYOTOGRAPHIE」にも出展されている本作。中京区の生活工藝館「無名舎」にて展覧会も行われています。気になった方はぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

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最後にご紹介するのはこちら。

イラストレーター/グラフィックデザイナーの小幡彩貴さんによるイラストzine『DAWN』。深夜から夜明けまで、眠ることなくその時間を迎える街の人々を、まるで映画のワンシーンやスナップ写真のように切り取ったイラストレーション。

友人と、家族と、あるいは一人で。始発電車で、ベッドの上で、あるいは灯台の見える海辺で。前後のストーリーを物語りたくなるようなシーンの数々は、言葉のなかや記憶のなかに迎えたいくつものかつての夜明けを思い起こさせてくれるようです。印象的な表紙を店頭で見かけた際は、ぜひ手に取って、洗練されたタッチと美しいコンポジションで描かれた夜明けまえの無名の人々の姿に目を落としてみてください。

 

 その他、左京区の書店・ホホホ座さんが編集と発行を担われた『かんしゃになろうよ。こころで、』、新旧内外を問わず豪華な執筆陣が集う文学ムック『たべるのがおそい』の3号、写真家・川島小鳥さんの台南案内『愛の台南』、すべての写真をトレーシングペーパーに印刷した異色の写文集『Melancolia storytelling』、ディック・ブルーナの同名展覧会図録『シンプルの正体』、リトルプレス『歩きながら考える』別冊の『酔いながら考える』なども今週入荷しています。

それぞれの詳細は弊店オンラインショップなど参考にしていただけますと幸いです。

 

それではまた来週をお楽しみに。

 

 

《今回ご紹介した本》

『ぽかん 06』ぽかん編集室

www.keibunsha-books.com

『東京の家 tokyo no ie』ジェレミ・ステラ/青幻舎

www.keibunsha-books.com

『BETWEEN THE LIGHT AND DARKNESS』YAN Kallen/MOSSES

www.keibunsha-books.com

『DAWN』小幡彩貴/commune Press

www.keibunsha-books.com

 

(涌上)