恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

高橋あおば「parade+」

ギャラリーアンフェールでは、北海道を拠点に活動されている髙橋あおばさんによるクレヨン画展「parade+」を開催中です。

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昨年夏に当店では初めて展示していただきました。ダイナミックな構図の不思議な景色が広がる大きな絵や、クレヨンを熱で溶かして陶板に描かれた花々など、クレヨンのイメージを覆されるような作品がとても印象的でした。(昨年の展示の様子

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今回は、なんとも可愛らしい動物たちのクレヨン画がずらり!ずっと髙橋さんの頭の中にいたという動物たちが、ぞろぞろと絵の中に開放されて、お披露目を思いっきり喜んでいるような、それはそれは可愛らしくて、今にも楽しい音楽が聞こえてきそうな賑やかなパレード。

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木製パネルや画用紙の上に塗り広げられたクレヨンは、スクラッチで描かれる細かい描写だったり、溶かしたクレヨンが油絵のような不思議な質感だったり、とても表情豊か。誰もが知っているクレヨンの無限大の表現力に驚きます。

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今回はグッズもたくさんご用意いただきました。前回の展示でも人気だったポストカードに加え、ブックカバーにもなる包装紙やレターセットも。

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そしてこちらは絵の中だけじゃ飽き足らず、色とりどりにおめかしして、ブローチになった動物たち。手描きのイラストを一つ一つ切り抜いて手作りされているブローチは、少しずつ色が違って、どれにしようか選ぶのも楽しい。贈り物にもぴったりです。

 

会期中は毎日在廊予定で、在廊中はクレヨン画やブローチの公開制作もされています。クレヨンを使って見たこともない魔法のように描かれる絵や、楽しいブローチが出来上がる様子をぜひ間近でごらんください。

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動物たちの賑やかなパレードをいつまでも眺めていたくなる楽しい展示になりました。ご来場をこころよりお待ちしております。


高橋あおば「parade+」
開催期間:2019年6月18日(火)-6月24日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は16:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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楽しいことをしていたら 楽しいことが集まってきた
集まった足音は踊り出し 輪になって広がる

頭の中で歩き回っていた動物たちを解放しました。
彼らは甘えたり、イタズラをしたり、集まってお話したり楽しい時間を過ごしています。
好きなこと、好きなものを大切にしていると暖かな様子に引き寄せられて、いつの間にか楽しいことが集まってパレードになっていました。
トコトコ パタパタ ドンドン 足音たちは踊り出し、形になった音たちは空を泳いで遠く遠くに広がっていきます。
作品はクレヨン画や絵の中の動物たちが外の世界に飛び出して出来たブローチも出品いたします。クレヨン画からデザインしたポストカードやレターセットなどの紙雑貨も展示販売。

<画材と題材>
アイロンの熱で溶かした蜜蝋クレヨンを紙の上に垂らして下地を作ります。
その上にクレヨンをのせて動物を描き、ニードルで引っ掻いて形と模様を作り出していくスクラッチ技法で描いています。
蜜蝋クレヨンとぺんてるのクレヨンの二種類を使っています。
筆は使わずアイロンで溶かしながら描くので独特な表現ができます。

<髙橋あおば プロフィール>
1987 札幌生まれ
2006 札幌啓成高校 卒業
2010 北海道教育大学岩見沢校 美術 絵画 卒業
2012 北海道教育大学岩見沢校 大学院 修了


(上田)

『マッチ・ラベル 1950s-70s グラフィックス』刊行記念 マッチ箱展

 

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アンフェールフロアの壁面一角では、今年4月にグラフィック社より刊行された『マッチ・ラベル 1950s-70s グラフィックス』出版記念のマッチ箱展を開催中です。

 

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兵庫県神戸市の地場産業として、高度成長期には日本全国あらゆる業種で作られたマッチ。ふとした折に胸の内ポケットから取り出される、お店の屋号や看板メニュー、外観や内装の意匠、土地の歴史や風物を反映したデザインを施された、小平型や寸二、寸四型など種々のサイズの小さな箱。喫茶店やレストラン、ボウリング場やタクシーなど喫煙可能な場所が今よりも格段に多く、インターネット到来以前でもあった当時、実用品として持ち歩かれる電話番号を印字したオリジナルのマッチは、お店や企業にとって最も効果的な広告、宣伝媒体として機能していました。

 

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本書は、そんな時代の空気を詰め込んだ文化遺産としてのマッチとそのデザインを、業種やカラー、モチーフ別に紹介するカタログのようなビジュアル・ブック。現在は閉店してしまったお店や、時代の変化により衰退した産業、技術革新により変化し失われてしまった習慣や懐かしい文化を思い起こさせるメディアとしてのマッチ箱と出会うことの楽しみを伝えます。何より、店ごとの個性やこだわりがイラストやデザインの意匠として凝縮された手のひらサイズの箱は、小さきものを愛でる感性を心地よく刺激してくれます。

 

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開催中のマッチ箱展では、本書の著者、小野隆弘さんが実際に蒐集してきたコレクションから、モノトーン、ブルー、グリーン、ピンクやイエローなどカラー別に集められたマッチを収めた木枠のクリアパネルを展示しています。色別に集められたページは書籍にもありますが、実際にひと所にまとめられたマッチ箱とそのバリエーション豊かな意匠の数々の実物がご覧いただけるのは非常に貴重な機会。また、京都のお店やホテルのマッチだけを集めたパネルも今回あわせて送っていただきました。かつてこの街に存在した喫茶やグリル、ベーカリーなどのマッチには、長くこの街に暮らす人には馴染みぶかく懐かしいものもきっと含まれていることでしょう。ぜひじっくりご覧になってみてください。

 

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神戸に生まれ、小学生の頃よりマッチ箱のイラストに魅せられ蒐集をはじめたという著者の小野さんは、マッチ箱・マッチラベル・関連資料を常設する私設の博物館「たるみ燐寸博物館」を2015年より営む、生粋のマッチ愛好家。その継続的な蒐集の履歴を一冊にまとめた本書と本展示は、移り変わりゆく街の記憶を残す小さな文化遺産としてのマッチの魅力と、蒐集することの楽しみ(そして、管理・保存することの大変さ…)をあらためて感じさせてくれます。ぜひ書籍を手に取って、「あの頃」の街とお店と人々の空気に触れてみてください。

 

当店の店頭・オンラインショップにて書籍をご購入のお客様には、先着特典としてマッチをプレゼント。かつて広告として機能していたマッチのスタイルを踏襲するように、本書と「たるみ燐寸博物館」を宣伝するオリジナルの特典です。この機会にぜひお求めください。

 

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『マッチ・ラベル 1950s-70s グラフィックス』(グラフィック社)

刊行記念 マッチ箱展

2019年6月15日 - 6月30日

恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール 壁面一角にて

 

 

(テキスト:涌上 / 撮影:韓)

 

『くらすことの本』刊行記念  “くらすこと” 全国キャラバン vol.1

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「わたし自身のものさしをみつける」をテーマに活動する「くらすこと」が、今年、『くらすことの本』を創刊しました。『くらすことの本』では、暮らしや食、こども、 お母さん、からだとこころ、家族、子育て、教育、つながり、女性としての生き方などのテーマとし、【今を生きるわたしたちの新しい智慧】を紹介、提案しています。

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刊行記念フェアでは、『くらすことの本』に登場する方たちの著書と、くらすことが選書した本を集めたブックフェアのほか、くらすことのカフェでも使用しているイイホシユミコさんのオリジナルの器や、自然な香りが人気のFloatのナチュラルコスメなど、くらすことの定番やからだやこころにオススメの人気のアイテムを集めた、くらすことの店も出張オープン。さらに今回のイベントにあわせて、本誌にご登場いただいた中川たまさん、kuboぱんさん、セトキョウコさん、余 韵(yoin)さんなどの焼き菓子やベーグル、ジャム、調味料などのおいしいものもご用意いただけることになりました。
生活にプラスすることで、よりすこやかな日々になるような本やアイテム。
2週間限定の盛りだくさんな出張ショップに、どうぞ遊びにいらしてください。

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おいしいものでご参加いただくみなさん
※6月22日より販売開始、数量限定

▶︎ 中川たま:パンケーキミックス、ジャム
料理家。ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。日々の暮らしに寄り添い季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しむ。著書に『デイリーストック 朝、昼、晩 日々の料理の味方』(グラフィック社)、『少ない材料で、簡単に作れる、たまさんちのおおらかなおやつ』(家の光協会)等。

▶︎ kuboぱん(久保輝美):ベーグル ※22日限定での販売です。
さいたま市浦和で小さな店舗を開いています。パン教室からスタートし、現在はベーグルとシュトレン等を販売。料理家さんのワークショップや作家の作品展示など、活動が広がっています。もっと楽しい場づくりをしたいです。

▶︎ セトキョウコ:焼き菓子、ジャム、調味料
料理家。自然に恵まれた八ヶ岳南麗の野菜や果物を使って、ケータリング、雑誌・書籍へのレシピの提供などの仕事をしています。ストックフードのブランド【菜と果】では、季節の果物や野菜を使ったストックフードや菓子を作って、各地の店舗にお送りしています。

▶︎ 余韵(姜優子):焼き菓子
植物性素材、季節の野草を使ったお菓子を、余韵(yoin)という名前で焼菓子を中心に作っています。子どもの進学に合わせ、現在は東京と佐賀を行き来する生活をしています。

▶︎ かるべけいこ:焼き菓子
熊本・阿蘇で自然農法を実践する夫とともに自給自足に取り組みながら、料理教室や自然食品を用いた加工品の販売を行っています。カカオクッキー、ローズマリークッキー、紅茶クッキー、ハニークッキーなど、一口ほおばれば素材の味わいが広がるおやつをお届けします。

 

『くらすことの本』刊行記念
“くらすこと” 全国キャラバン vol.1
ポップアップストア +ブックフェア at 恵文社
6月22日 - 7月5日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

SOU PROJECT+サチシルバージュエリー「かばんとアクセサリー」

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ギャラリーアンフェールでは現在、SOU PROJECT+サチシルバージュエリー「かばんとアクセサリー」を開催中です。

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帆布鞄や小物を制作されているSOU PROJECTさんは昨年も展示をしていただきました。友禅染の技法を応用して独特の風合いに仕上げられたオリジナル帆布がひときわ目を引きます。一つ一つ刷毛で手染めされているので同じものがふたつとありません。その大胆に美しく染め上げられた布でつくられる鞄や小物は、かわいらしいフォルム、ありそうでなかった形、使いやすさを追求されていて、今回も心をくすぐられます。

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筒状のこちらは新作のボディバック。懐かしいプールバックのようなデザインです。パラフィンキャンバスという蝋引きの帆布を使われていて、独特のシワ感、革のような不思議な素材感が楽しい。スポーティーな印象もあって男性にも人気です。細長いのでワインボトルを入れてお呼ばれに出かけるなんてのもよさそう! 

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昨年の展示でも好評だった「スマホポーチ」には新しくひと回り大きなサイズも登場。私も昨年から愛用していますが、軽くて、これを使えばボトムスのポケットは空っぽにできるので、とても身軽に散歩に繰り出せます。 

 

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サチシルバージュエリーさんはシルバーや真鍮でつくられるシンプルで美しいアクセサリー。女性らしい華奢なデザインのものや、コーディネートのアクセントになってくれそうな大ぶりのものなど、眺めるのも楽しいアクセサリーがずらりと並びました。

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コロンと愛らしい石が使われたものもあります。やわらかいシルバーの輝きは気もちまで穏やかにしてくれるよう。毎日愛用したいシンプルなものや、おめかし気分にぴったりのドレッシーなもの、ついうっとりと眺めてしまいます。

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繊細な線が軽やかに揺れる様子はとても美しくて可愛らしくて、付けていることに気づいた時にふふっとうれしくなれるすてきなアクセサリー。

 

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気負わず毎日使えて、使っているのがふとうれしくなるようなアイテムが揃いました。お二人は毎日在廊予定。とても気さくなお二人なので、おしゃべりも楽しみながらどうぞゆっくりお過ごしください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

SOU PROJECT+サチシルバージュエリー
「かばんとアクセサリー」
開催期間:2019年6月11日(火)-17日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は16:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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SOUPROJECT
(ジャンル:帆布・トートバック・ショルダーバック・がま口・小物)
「ワンランク上の日常に寄り添ったデザインを」をコンセプトに
京都で帆布鞄を制作しています。
京都に古くから伝わる友禅染の技法を応用して、染め~縫製まで
完全オリジナルなアイテムです。

サチシルバージュエリー
(ジャンル:シルバーアクセサリー)
京都市左京区にて、 シルバージュエリーを製作しています。
ナチュラルやシンプルな装いに寄り添う
シルバージュエリーを作っています。
銀線で作るピアスのシリーズは、ふんわりと軽く、
付けていることも忘れるほどですが、存在感があります
型をとらず、一点一点手作りしています。
世界にただ一つのジュエリーです。

 

(上田)

ジョリーメゾンのトッポンチーノ

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ジョリーメゾンのトッポンチーノを紹介するフェアを開催しています。
トッポンチーノとはマリア・モンテッソーリ(1870 – 1952 イタリア医学博士・幼児教育者)により考案された赤ちゃん用のおふとん。イタリア語で小さな枕を意味します。モンテッソーリ教育、の名前はご存知の方も多いことでしょう。モンテッソーリは、産まれたばかりの新生児は母親とできるだけ一緒にいなければならないと提唱しています。赤ちゃんにとって新しい世界は不安でいっぱいだからこそ、親の温かさを感じて過ごすことが大切です。お母さんが忙しいとき、お父さんやおばあさん、おじいさんにも、誰に抱っこされても安心感を与えれらるように生まれたのが、トッポンチーノです。
イタリア発祥のトッポンチーノを、ジョリーメゾンは厳選したオーガニック素材を使い、日本国内の縫製工場で生産しています。また、イラストレーター布川愛子さんデザインによる専用BOXとセットになっていますので、プレゼントとしてもおすすめです。

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会場でいちばん目をひく丸型のマットは、赤ちゃんのうつぶせ、腹ばい、お座りの練習をサポートする、タミータイムマット。中綿として100%コットンをたっぷり入れて、しっかりとした厚みがあるのでお昼寝のときに寝返りがしやすく、その上で遊ぶのにも最適です。加えて会場では、体にやさしい無漂白・無蛍光のピュアコットンでつくるベビーグッズやモンテッソーリ教育の関連書籍も販売しています。

 

ジョリーメゾンのトッポンチーノ
6月8日-6月21日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

「あそびうた絵本」中脇初枝さんお話会が開催されました

中脇初枝さん編集、ひろせべにさん絵による福音館書店「あそびうた絵本」。ただいま開催中の原画展について先日お知らせいたしましたが、展示初日である5月25日には、編者の中脇初枝さんが来店され、あそびうたに関する楽しい催しが行われました。今日はそのご報告です。

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今回の2冊『あそびうたするものよっといで』『あそびうたするものこのゆびとまれ』の面白さや楽しさに実際に触れ、この本の成立の背景や見どころをぜひ直接中脇さんにお伺いできたらという我々の思いから実現したこのイベント。「お話会」という柔らかな呼び名で、よく晴れた土曜日に、大人や子どももまじえて和やかにスタートしました。

中脇さん自身が子ども時代を過ごした高知県での経験や思い出話、そして子どもが生まれた時に「自分の中で眠っていた遊び歌がどんどん湧いてきた」という実体験からは、各地方の言葉や言い伝え、慣習や環境から生まれてくる表現に敬意を払い、子どもの世界に愛情を持つ中脇さんの創作の姿勢が伺われます。

遊び歌のなかには、江戸や明治から続いている発祥の古いものもあれば、昭和の頃、あるいはついこのあいだ生まれたものなど様々。そして世代によって少しずつ形を変えていく。だから「あなたとあなたの子どもでは、同じ地域に住んでいても違う歌を歌うかもしれない」という言葉が印象的でした。たとえば、おなじみの「どちらにしようかな…」という”えらびうた”一つとっても、時代と地域で違うことを、実際に会場に集まった人たちに歌ってもらって検証。みなさん笑いながら、その絶妙なズレを実感していました。ちなみに、「子どもはえらびうたで思った結果にならない時は、「なのなのな」など奇数の五文字を増やして自分の好きな方に持っていくんですよね」というお話も個人的に「なるほど~」と面白く思った次第です。

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 そして、それらの遊び歌を今度はみんなであそんじゃおうと、中脇さん自身が歌や手遊びを始めます。「おちゃらかおちゃらか」「ビームフラッシュ!」など茶目っ気たっぷりに演じれば、大人は子どもにかえり、子どもは大喜び。「それ知ってる!」など元気な声が飛び交います。動画でも歌を担当されている天さんの美しい声で、実際どんな風に歌うのかも聞かせてもらいました。

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合間には絵を担当したひろせべにさんとの短いトークも行われ、ファンには貴重な時間。ひろせさんの自由な想像力に感嘆したという中脇さんが「ベスト!」と選んだのは「ぼうずがじょうずにびょうぶにジョーズのえをかいた」(「よっといで」42ページ)でした。関西の人ならば皆知っている、地元の中華チェーン「ハマムラ」の顔のロゴが絵描き歌風になっていることをひろせさんから教わってびっくりした、という中脇さんのお話にも会場が沸きます。

最後は高知県のあそびうた「まないたのうえに かみそりいっぽんのせて ぎっちょんちょんのぎっちょんちょん」(「このゆびとまれ」29ページ)で会場全員が一緒になって体を使い遊びます。「まーないたーのうえにー…」の歌が終わるごとにそのとき当たった人が一人ずつ抜けていく、中脇さんが育った四万十地方に伝わるこのあそびを通じて、あらためてあそびうたの持つ独特のリズムと楽しさ、みなでその時の空間と心を共有する喜びのようなものを感じ取れた気がします。

実際に遊ばなくとも、あそびうたは本を開き言葉にして読むだけでも楽しいもの。まだご覧になっていない方は、二冊のうちぜひどちらか一冊でも手にとって頂き、あそびうたの豊かな世界に触れてみてください。原画展も7日まで開催しておりますので、ぜひお立ち寄りください。

 

あそびうた絵本 中脇初枝お話会
2019年5月25日開催 恵文社コテージにて

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ひろせべに「あそびうた絵本原画展」
5月25日 - 6月7日
恵文社一乗寺店ミニギャラリー

 

(能邨)

奥山淳志『庭とエスキース』オリジナルプリント展、トーク&スライドショーのご案内

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現在、書籍フロアでは写真家の奥山淳志さんによる『庭とエスキース』(みすず書房)の刊行を記念したオリジナルプリント展を開催中です。

 

関西出身の著者である奥山淳志さんは、1998年より岩手県雫石に移住し、東北の文化や風土、そこに生きる人々にフォーカスを当て、書籍や雑誌を通じて紹介してきた写真家。本書は、彼が東北に移り住んで以来、14年間にわたり日々通い、交流を続けた北海道の新十津川に暮らしたひとりの老人「弁造さん」の記憶を40点の写真と24篇の物語でたどった写文集です。

 

 

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北海道の開拓時代の最後を経験し、その後の経済的な大きな発展にともなう時代の変化への違和感から、一家族が永続的に暮らしていける自給自足の生活を自ら実験的に作り出していくことを選んだ「弁造さん」。

北の大地の気候、風土との対話を繰りかえしながら自然とともに作り上げてきた庭、生活に必需なものだけを集めた小さな丸太小屋、そこに唯一置かれているイーゼルをはじめとする絵の道具。陽気で(可愛げすら感じさせる)ユーモアにあふれた人柄、ありありと語られる開拓時代の不思議なエピソード、作物を植え育て生きる実践的な日々から生まれた生活の思想、作品として完成することのないエスキース(下絵)の重なりと、繰り返し描かれる母娘のモチーフ…。

長い時間を生きてきたひとりの人間のなかにあるさまざまな時間と表情、その側面を、直接の会話はもとより何気ない行為やその表れ、写真家らしい解像度の臨場感を感じさせる美しい風景描写などを折り重ねながらひとつひとつ追想するように綴る著者の誠実な語り口は、「他者」と出会うこと、誰かを想うことの豊かさとその奥行きを、読む者の心身に浸透させるようにじっくりと伝えます。

 

 

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書籍フロア壁面では、弁造さんと過ごした日々に撮影された写真から奥山さん自身が選んだ3点の作品(本書未掲載含む)のオリジナルプリントを展示中です。弁造さんの庭の象徴ともいえる青々と茂るメープルの木、繰り返し描かれたエスキース、そして雪原でにこやかに笑う弁造さんの肖像。

 

また、奥山さん自身が編み、2018年の写真協会賞新人賞を得ることにもなった写真集『弁造 Benzo』(http://benzo-book.atsushi-okuyama.com/benzo/)もあわせて展示しています。こちらは限定数発行の私家版をお借りしているため非売品となりますが、『庭とエスキース』に表現されたもの、弁造さんの庭とその人となりを捉えた写真家の視線をより直接的に感じていただける作品集です。ご来店の際はぜひ手に取ってご覧ください。

 

 

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 今週6月8日には、当店イベントスペース COTTAGE にて、奥山淳志さんをお招きしてのトーク&スライドショーも開催いたします。時系列に語られることなく、小さなエピソードから波紋のように広がる交流、人となり、場所の記憶。被写体と撮影者との距離、人と自然との距離、過去と現在との距離、わたしと他者とのあいだにある距離。そのままならなさや分からなさに向き合いながら、生きることや老いることの実感を14年の歳月のなかで受け取った奥山さんが語る「弁造さん」の物語。

現在は岩手在住の奥山さんですが、大阪生まれで奈良育ち、京都で学生時代を過ごされた関西にも所縁の深い方です。京都で話される貴重な機会ですので、ぜひ奮ってご参加ください。

 

 

 

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奥山淳志『庭とエスキース』 (みすず書房)

刊行記念オリジナルプリント展

2019年5月22日-6月11日

恵文社一乗寺店 書籍フロアにて

 

 

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■『庭とエスキース』奥山淳志(みすず書房)

 

 

(テキスト:涌上 / 撮影:韓)