恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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平尾英祐 個展「詩集を抱いて」

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ギャラリーアンフェールでは、平尾英祐さんによる初めての個展「詩集を抱いて」がスタートしました。水中に遊ぶ魚たちのように涼やかに、木版画作品が壁を飾ります。

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真っ先に目に飛び込むのは、中央の大きな作品。「ひとひかげのブルーム」という素敵な名前がついています。遠く高く突き抜ける青空のような、喧騒を遮るようにどぶんと潜るひんやりとしたプールの底のような。深く爽やかな色合いが目の前いっぱいに広がってとても気持ちいい。

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今回の案内状にもなった夕焼けの灯台が描かれた作品は「compass」。思っていたより大きな作品で、全てを包み込む優しさを感じる柔らかい朱の色が印象的です。

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お隣は「kaleido scope」。漁火のような星影のような、散りばめられた光の粒が木版画で美しく表現されています。

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小さな魚が群れをなして、ギャラリーへ誘ってくれるような作品群は"memo"シリーズ。お部屋に飾りたくなるちょうどよいサイズ感の作品は、小さいながらも木版画の魅力がぎゅっと詰まっています。

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頭の中でなら自由に駆け巡らせることができる想像は、見せることができなくて、言葉にするのが難しい。そんなとっておきの景色が、手間隙かけて丹精込めて、紙の上に躍り出たよう。

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印刷の手法として古くから活躍していた木版。日本では江戸時代の浮世絵でめざましく発展したそうで、今もご存知の通り美しい作品が数多く残されています。

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すっと静かに佇む凛とした空気感を纏った作品とは裏腹に、よく見れば躍動する彫り筋。版木に向き合う作家の熱量はきっと凄まじく、そこに色をのせて紙を置きばれんをあてる、木版画ならではの一連の所作も美しい。直接描かれる絵画とは少し違って、作家と、作品と、みる人、それぞれの間に心地よい距離感がある気がします。

そういえば木版画の展示は久しぶりで、今回の平尾さんの作品を眺めていたら、そんな木版画の魅力に思いが巡りました。

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静寂の水底で微かな音をたてて漂う魚たちのように、知らない何処かでそっと飛んでいった一片の花びらのように、儚いけれど一瞬の煌めきが心に触れる。暑さをふと忘れさせてくれる心地よい空間になりました。どうぞゆっくりお過ごしください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

平尾英祐 個展「詩集を抱いて」
開催期間:2019年7月30日(火)-8月5日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は16:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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わたしは散歩が好きで、音楽を聴くのが好きで、絵本が大好きです。
散歩で見つけたあれこれが、音楽のもつイメージが、絵本の慈しみがわたしの作品の種です。

今回が初めての個展なので、どんな空間になるのか、わたし自身楽しみで不安です。それでも、おしゃべりをしたり、静かに見たりと、さまざまな風景を想像するととてもわくわくします。

ただ空間を漂うだけでかまいません。

その時間をときどき思い出して、何かのお力なれば幸いです。

 

 

(上田)