書店内展示のご案内。
スロヴァキアの女性写真家、マーリア・シュヴァルボヴァーの写真集『Swimming Pool』国内版が発売されました。スロヴァキア国内の10の水泳施設で撮影されたこちらの作品集。絵画のような、水彩パステルの色彩。未来を思わせる被写体、直線的な建築。不思議な世界、異質な空間。どこか未来的で、懐かしい。
撮影の舞台となったいずれの水泳施設もスロヴァキアの社会主義時代の機能主義建築とよばれる無機質な建物です。直線的なタイルやプールを背景、キャンバスとして、配置された人物との間に生まれる微妙なバランス。彼女の写真が未来的な要素を持ちながら、シュルレアリスムの気配を感じさせる理由はここにあります。(改めて眺めていると、競泳水着、水泳帽という出で立ちもSF的。)
子供の頃、親に連れて行かれた屋内プールは、初めて体験した身近な異世界でした。やけに反響する声が天井から聞こえるようで、緊張したのをよく覚えています。彼女はスロヴァキア人で、こちらは日本人。もちろん原体験が重なるわけもないのですが、プールという無機質な空間は等しく特別な郷愁を与えるように思えます。
1988年生まれの彼女は、チェコスロヴァキアの共産党支配を実際に体験していません。それでも身の回りを取り巻くようにその名残を感じながら育った彼女は、生れ育った国を表現する方法として、当時の建築にフォーカスをあてました。
色々と書きましたが、この写真集を目の前にして、得られる感情が全てです。海外の写真集が国内版として発売される機会はそう多くありませんし、新しい写真家であればなおさらです。奥深くもキャッチーな一冊。普段、写真集を買う習慣が無いという方にこそ手にとっていただければと願っております。書店奥、暖炉上の壁面にて『Swimming Pool』のパネル展を年末まで開催中です。真冬にプールの写真集、いかがでしょうか。
写真集『Swimming Pool』パネル展 ー2018年12月31日まで
『Swimming Pool』
著者:マーリア・シュヴァルボヴァー
発行:青幻舎 ¥3800(税抜)
(鎌田)