恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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2017年9月書店売上ランキング

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昨日、小説家の滝口悠生さんがご来店くださいました。滝口さんが買ってくださった本は、猪熊弦一郎のエッセイ『私の履歴書』。滝口さんが芥川賞を受賞した『死んでいない者』の表紙画は猪熊弦一郎の作品で、何かその組み合わせに感動しながら、レジを打ちました。著者初の長編小説となる新刊『高架線』(講談社)に今回もサインをいただきました。特典の冊子もすべて滝口さんのサインとイラスト入りです。ぜひ。

 

それでは9月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『お菓子の包み紙』甲斐みのり(グラフィック社)

蒐集家・甲斐みのりさんが20年の年月をかけ集めたレトロな包装紙のコレクション

 

2位『アリになった数学者 たくさんのふしぎ9月号』森田真生 脇阪克二(福音館書店)

数学ブックトークでお馴染み、独立研究者・森田真生さんが文章を初めて手掛けた絵本

 

3位『鶴と亀 禄』小林直博 小林徹也(オークラ出版)

ファンキーなおじいちゃんおばあちゃんを写した人気フリーペーパーが書籍化

 

4位『うしろめたさの人類学』松村圭一郎(ミシマ社)

最貧国・エチオピアで20年近くフィールドワークを続けてきた文化人類学者による単著

 

5位『販路の教科書』越前ものづくり塾(EXS Inc.)

ものづくりに携わる人々に向けて開かれた10回にわたる連続講義の冊子版

 

6位『かのひと 超訳世界恋愛詩集』菅原敏 久保田沙耶(中日新聞東京本社)

気鋭の詩人が訳し直す、いにしえの恋愛詩をまとめた詩集

 

7位『ムービーマヨネーズ 創刊号』Gucchi's Free School

日本未公開の映画を紹介するリトルプレス、現在の在庫分で終売!

 

8位『なくなりそうな世界のことば』吉岡乾 西淑(創元社)

世界の50の少数言語を、それぞれの地域の暮らしや習慣を紹介した一冊

 

9位『発酵文化人類学』小倉ヒラク(木楽舎)

ロングセラーです。発酵カルチャーの冒険、異色の経歴を持つ著者によるデビュー作

 

10位『埴原一亟 古本小説集』埴原一亟 山本善行撰(夏葉社)

戦前戦後の雑踏の中で忘れられた作家の古本にまつわる作品を集めた一冊

 

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第1位は、甲斐みのりさんの『お菓子の包み紙』です。9月の頭から中頃まで、【「お菓子の包み紙」&「地元パン手帖」合体フェア】と題し、生活館ミニギャラリーにて展示と実際にお菓子や地元パンの販売を行いました。まるたや洋菓子店のあげ潮、はしもと珈琲のakio blend、小浜食糧のクルス缶…、その土地に足を運ばない限り、普段お目にかかれない品々。我々スタッフもその素朴なデザインと味の虜に。すぐに完売となってしまったものもありましたが、ご来場いただいた皆様には甲斐さんの愛する世界を存分に目と舌でお楽しみいただけたことと思います。展示に際して甲斐さんにインタビュー形式で蒐集の魅力を語っていただいた小さなちいさな冊子『甲斐みのりさんに聞く「集めるということ」』も制作しました。今回制作した部数のみのご用意です。お早めに。

 

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第4位は、9月半ばの発売以来当店でもたくさんの方が手に取られている『うしろめたさの人類学』です。最貧国のエチオピアで20年近くのあいだフィールドワークを実施した文化人類学者の松村圭一郎さんによる著作。例えば、人は生まれ持って「男らしい」のではなく、社会の制度や習慣の中で「男らしさ」を身につけるように。構築された概念やイメージは事物を規定し、ときに除外する。そこに何ら正当性はない構築されたものへの批判を叫び続けるのではなく、どうやったら構築しなおせるかという問いへの転換を促す「構築人類学」という新しい学問手法を扱った、あらゆる可能性に溢れた一冊です。他者との関り、寛容さ。安易な表現を使うならば、日常を息苦しく感じている方は読んでみてください。パッと目の前が明るくなるかもしれません。

 

なお、明日の夜には松村さんと、『ナチスのキッチン』などの著作で知られる藤原辰史さん、ふたりの人文学者によるトークイベントを開催します。19時開演、お席ご用意できますので、お時間のある方はぜひご参加ください。詳細はこちら

www.mishimasha.com

 

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第9位は、5月の発売以来継続して売れている『発酵文化人類学』です。「美術手帖」10月号の「新しい食」特集に著者の小倉ヒラクさんが登場したこともあり、発売時の勢いが再燃。発酵とはなにか、時にその微生物への愛を爆発させながら掘り下げられたユニークな一冊です。気になっていたという方は、まず「美術手帖」の特集を読むのも良いかもしれません。〈人類学〉を扱った本を二冊並べて紹介してみました。顕微鏡で覗くように、細かな部分から社会を見る。狭い世界を扱っているようで、何事にも通用し得る普遍性をもった本たちです。こういった本も積極的に取り上げていきたいと思います。

 

それでは今回はこのあたりで。

また来月もお楽しみに。

 

(鎌田)