恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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今週の新入荷、9月第1週

今週の新入荷、9月第1週をお届けします。

 

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まずは、石川直樹さんの写真集『知床半島』から。

標高6194m。アラスカの最高峰デナリ単独登頂に成功した僅か一ヶ月後に訪れた知床半島。北海道の東端、オホーツク海に突き出した最涯ての地。流氷やホエールウォッチングを目当てに観光客も集う場でありながら、冬の山は地元の人でさえも近づけない、人よりも動物の影が濃い極限の地と化します。知床の自然に魅了され、夢中で写真を撮って以来、毎月のように知床を訪れるようになったそうです。

 

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テキストを読んでいて興味深かったのは、「環境や動物、植生ばかりでなく、住んでいる人の雰囲気も、知床とアラスカはどことなく似ているように感じられる」という一文。一面に広がる氷の世界や、夏になると顔を出す豊かな緑。今回の写真集を見ると、石川さんの過去の作品や星野道夫が伝えてきたアラスカの姿が確かに重なります。日本で唯一、ヒグマ対策のフードボックスを設置していたり、ぼんやりと知った気になっていた知床の自然は、遥かに私たちの想像を超えているようです。そして、そこに暮らす人々。ページを進め、巻末に向かうにつれて、学生や家族、街の風景や祭の様子を収めた写真が増えていきます。知床といえば自然という単調なイメージに留まらない、多様性を存分に伝える写真集です。これまでにも山や自然の姿にあわせて、周囲の登山隊やそこに住む人々を撮ってきた石川さんだからこそ作り得た一冊といえます。

 

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こちらと対を成すように制作されたもう一冊の本『SHIRETOKO! SUSTAINABLE』。写真集『知床半島』の中心があくまで自然だったことに対し、これまでと違った知床の魅力を伝えるためのブランドブックとして生まれたこちらはほとんどが住人たちのポートレートで構成されています。自然と人。厳しい寒さと上手く付き合いながら共存する姿から、知床の日常を垣間見ることができます。ぜひ二冊あわせて読んでいただきたい本たちです。どちらも知床斜里町観光協会から直接仕入れています。いつか訪れてみたい場所がひとつ増えました。

 

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続いて、京都の印刷屋・修美社が発行する印刷と紙のトライアルブック『襲美』。

京都在住の若手作家、写真家、デザイナーら4人と修美社が共作したアートブックです。特徴はその作り。A2サイズのポスターを折り、一冊の本に仕立てています。水のつややかな表現や、木目のようなあたたかい雰囲気。作家たちと印刷のプロたちが実際に何度も実施した試行錯誤の様子が付属の冊子に記録されています。思っていた色合いを印刷で出すというのは、案外難しいもの。実際にこちらに収録された作品を見ながら、どうやってこの色や雰囲気を出したのか解説が入る、これから何か作ってみようという方にきっと役立つ一冊です。

 

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同じく修美社から、印刷の現場で毎日のように出る余り紙「紙出(しで)」を使った、アソートによるノート『星屑ノート』も合わせて入荷しております。紙の色も厚さもそれぞればらばら。紙好きにはたまらない一冊ではないでしょうか。

 

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次にご紹介するのは、nakaban+植田真、ふたりの画家による作品集『夜明けまでにはまだ時間がある。』。こちらは西荻窪のギャラリー&ショップURESICAで開催された「夜明けまでにはまだ時間がある。/Dawn is still an hour away.」展の際に発表された絵画をまとめた一冊です。実際に展示された内容に加え、未発表の習作やふたりが交わした往復書簡も一部収録されています。

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「輝く夜」、「島嶼の記憶」、「雨の音」…。展示の前、これから生まれる絵のために用意されたそこから何か物語がはじまるような、詩的な言葉たち。左のページに言葉、右のページに二人の作品が並びます。ページを進めるとふたりの合作が顔を覗かせます。夜、眠る前にいかがでしょう。

 

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現在生活館ミニギャラリーで開催中の「お菓子の包み紙&地元パン手帖合体フェア」に合わせ、12ページの小さな冊子『甲斐みのりさんに聞く「集めるということ」』を著者の甲斐みのりさんと製作しました。通販をご希望される声が多かったため、本日より当店オンラインショップでも販売しております。表紙は関美穂子さん。フェア用に仕入れた地元パンは初日からほぼ完売してしまいましたが、展示は9/15まで開催しております。ぜひご来場ください。

 

それでは今週はここまで。

また来週もお楽しみに。

 

〈今週ご紹介した本〉

■『知床半島』石川直樹(北海道新聞社)

www.keibunsha-books.com

■『SHIRETOKO! SUSTAINABLE』石川直樹/七郎(知床斜里町観光協会)

www.keibunsha-books.com

■『襲美』成田舞・守屋友樹・三重野龍・佐貫絢郁(修美社)

www.keibunsha-books.com

■『夜明けまでにはまだ時間がある。』nakaban+植田真(URESICA)

www.keibunsha-books.com

■『甲斐みのりさんに聞く「集めるということ」』甲斐みのり+恵文社一乗寺店(恵文社一乗寺店)

www.keibunsha-books.com

(鎌田)