「ピッカピカの一年生」(小学館)、「セブンイレブンいい気分」(セブン-イレブン)をはじめとした、人々の記憶に残る名作広告を世に送り出してきた杉山恒太郎。
彼自身によることばと、18人の才人によって語られた彼の人物像、様々な角度から描かれた人間味のあるエピソードを収録した『僕と広告』ブックフェアを書籍フロアにて開催しています。
2018年12月に発刊された本書は、杉山のACC(全日本シーエム放送連盟)の「クリエイター殿堂」入りを記念し書籍化されたもの。元電通の執行役員で、現在は広告制作会社ライフパブリシティの代表取締役でもある杉山を取材したロングインタビューを収録。
また、コムデギャルソンの川久保玲をはじめ、俳優の小林克也、伊武雅刀、音楽家の大貫妙子、漫画家の井上雄彦、グラフィックデザイナーの葛西薫、中村勇吾、ワタリウムの和多利恵津子など、彼と関係性を持つ人々によるインタビューをまとめたなんともバラエティ豊かな一冊となっています。
杉山のインタビューを読み進めていくと、ある時期まで広告クリエイターという仕事に違和感を感じていたことを漏らす箇所があるかと思えば、広告をつくることの奥深さや面白さについて語られている箇所も。
コメントを寄せたある人は、杉山が自身を無趣味と言っていたと話し、またある人は興味を惹かれれば脇目も振らずどこへでも遊びに行く、とても好奇心にあふれた人だと話します。杉山恒太郎という人物の変化自在な姿が垣間見えながら、いかに杉山が仕事、人生を謳歌してきたか。またどのようにして周りの人々を巻き込み、日本の広告業界の「本流」を歩いてきたかがこの一冊を通した浮かび上がってくる、そんな幸福感につつまれた一冊です。
フェア期間中、これまでに杉山と関わりを持った才人たちによる書籍や、広告と言葉にまつわる書籍、また杉山自身が強い影響を受けたという書籍もならべて紹介しています。こちらも併せてお楽しみください。
「広告嫌いの広告好き」を公言する杉山を巡るオーラルバイオグラフィと呼べる構成であり、日本のクリエイティブシーンの躍動的な証言集でもある『僕と広告』。
ひとつの広告クリエイターの豊かな創作の背景と、多面的な人脈をこれだけ描いた本はそう多くはありません。
文庫本サイズでありながら、ハードカバーである装丁デザインも美しい仕上がりとなっている一冊を、ぜひご堪能ください。
杉山恒太郎『僕と広告』ブックフェア
2019年5月28日-6月30日まで
(韓)