ただいま書店奥の壁面にて『魔女のシークレット・ガーデン』刊行記念のちいさな原画展を開催中です。
著者の飯島豊陽子さんは、横浜元町でハーブと魔女グッズの専門店「グリーンサム」を営む筋金入りの魔女通な人。いえ、「通」なんて俗な表現は適当ではないかもしれません。現代において魔女の世界をよみがえらせ、そのスピリットを忘れないでおこうという、魔女界への案内人とでも言えるでしょうか。先の著書『魔女の12ヶ月』では、魔女の暮らしと知恵を豊富な知識と共に楽しいコラムで紹介、そこに描かれた魔女ライフは多くの人々を魅了しました。
新作であるこの『魔女のシークレット・ガーデン』でも、魔女の暮らしを伝える興味深い内容は健在です。今回は庭や森を舞台とした、魔女と植物との付き合いについてが主なテーマ。魔女の秘密の庭、それだけでもそそられる気がしませんか。そこには「パワーをあげる夏至のハーブ」や「異界との境界にある植物」「秋のメランコリーを吹き飛ばすハーブ」など、奇妙で面白そうな項目がたくさん。
自然のパワーをもらって月夜を闊歩する魔女ならではの世界観がこの本には詰まっています。もちろん魔女をモチーフとした面白さ、というだけではなく、実際に私たちの日々の生活にも役立つ知恵も豊富に授けてくれます。自然の声を聴きながら自身の体に耳をすませば、これらの植物がより身近に感じられ、魔女の暮らしに一歩近づけるかもしれません。
描かれたイラストの、古い植物図鑑を思わせる独特の存在感も素晴らしく、この展示ではその原画を間近に見ることができます。そして、飯島さんが手作りで制作された魔女人形(非売品)も一体展示され、よりいっそう雰囲気を盛り上げてくれます。
ほか、魔女の庭・魔女の森の2つにわけてそれぞれの四季を描いた鳥瞰図も販売中。鬱蒼とした魔女の庭と森が不思議な雰囲気を醸し出しています。同じく販売中の魔女の庭の塗り絵とともに。
著者の飯島さんによれば、もともと魔女は森と村の境界にいた、つまり、異界と現実との境目にいた存在とのこと。そんな魔女は異界の入り口でもあると同時に、日常をほんの少し変えてくれる素敵な力を貸してくれるのかもしれません。この展示は、飯島さんが唱える魔女の様々な魅力の一端に触れられるユニークなものとなっています。この機会にぜひご覧ください。
飯島都陽子『魔女のシークレット・ガーデン』(山と渓谷社)刊行記念原画展
2019年3月13日-3月31日
恵文社一乗寺店 書籍フロアにて
余談ですが、ちょっと古い世代にとっては、子どもの頃は占い本や魔法使い入門など、物語以外にも魔女的な本がいろいろ周りにあった気がします。古今から人々を、特に女性たちの心を捉えてきた魔女なるもの。ある日魔法が使えたら、と夢想した女の子の心を思い出しながら、どこか懐かしい気持ちでこの本を開いてみてはいかがでしょうか。内に眠る魔女の心が知らないうちに目覚めるかもしれません。
『魔女のシークレット・ガーデン』
飯島豊陽子 / 山と渓谷社
1600円+税
(テキスト:能邨 / 撮影:韓)