恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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中脇初枝さん・ひろせべにさんによる「あそびうた」の本

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4月刊行予定の、中脇初枝さん編、ひろせべにさん絵による『あそびうたするものこのゆびとまれ』『あそびうたするものよっといで』。この二冊について、発売に先立って少しだけご紹介します。

 

当店でもオンラインショップにてご予約をただいま受付中ですが、先日、版元の福音館書店からあらためてゲラ刷り原稿を見せてもらいました。パラリとめくり一目見て、このお二人の仕事の素晴らしさに目は釘付け、そして遊び歌の世界の多様さと奥深さに感じ入りました。

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 あーぶくたったにえたった…
 なべなべ そこぬけ そこが ぬけたら かえりましょ…
 どちらに しようかな てんの かみさまの いうとおり…
 わしの うちの わしの木に わしが いちわ とーまった…
 おさらに おはしに ぼたもち だんご…

 

こんな風に、日本各地、時代時代で受け継がれてきた子どもたちの遊び歌が、二冊あわせて80以上紹介されており、その軽やかなリズムにあわせて描かれた、ひろせべにさんのカラフルで少しスパイスの効いた挿絵が、なおいっそう愉快な印象を鮮やかにしてくれます。

 

誰もが知っている歌もあれば、地域性の濃いものもあり、自分の覚えているうたとは微妙に違うものもあれば、聞いたこともないものもあったり。それは読む人にとって様々でしょう。ちなみにこれを書いている私自身は、上にご紹介した歌5つのうち後の2つは全く知りませんでした。年齢や育った土地によって、個人差が出るところでしょうね。それも読みどころのひとつであり、興味深い点です。

 

編者の中脇さんが言うには、あそびうたは子どものあいだで完結するものも多く、保育園や小学校ごとに異なる場合もあるとか。あそびうたの独特の面白みは、そんな風に限られた中で歌われ伝えられる希少性やある種の儚さにもあるのでしょう。そうやって、ひとつひとつ丹念に集めた歌のあそびかたを紹介した巻末の解説も、なんとも言えず笑いと好奇心を誘います。これは、『きみはいい子』(ポプラ文庫)などをはじめ、子どもを題材にした好著を持ち、昔話や民俗学にも造詣の深い中脇さんならではの仕事であり、遊び歌の文化をこれからの時代へとつないでゆく「たすき」のような役割を果たす作品とも言えるかもしれません。

 

でも、そんな理屈は抜きにして、ぜひ開いたところから声にして読んでみてください。懐かしい記憶、新しい発見、遠い時代への感傷や知らない土地への思い。そんな様々な気持ちと共に、そのテンポのよい言葉の連なりに、ユーモアあふれる情景に、思わず笑みがこぼれることは間違いありません。子どもと一緒に、あるいは大人だけで、自分一人で。本当に、それぞれをこしらえてきた子どもたちのセンスには脱帽です。

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それにしても、各歌に思いきり独自の解釈で絵をつけ続けたひろせべにさんの、予想を楽しく裏切ってくれるイラストは素晴らしいの一言です。ひとや動物、ダルマにおばけたちが戯れる、ひろせさんにしか描き得ない境地を、どうぞ歌と共に存分にお楽しみください。こうなると、二冊本というのは本当に贅沢なつくりであるとしみじみ実感する次第です。

 ※ただいま当店のみの予約特典として、ひろせべにさんの挿絵を元にしたポストカードを3枚おつけしております。数に限りがありますので、ぜひお早めにお求めください。

 

あそびうたするものこのゆびとまれ
あそびうたするものよっといで
中脇初枝 編 / ひろせべに 絵 / 福音館書店
各1,600円+税
4月上旬入荷予定

 

(能邨)