恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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2018年年間書籍売上ランキング

今年も実感が湧かないまま、一年が終わろうとしています。今日は一年を振り返る日。数日前、プロ野球の好プレー集を見て思い立ち、2018年、当店で多くの方の手に取られた本をランキングとしてまとめました。

 

1位『数学する身体』森田真生(新潮社)

 

2位『観察の練習』菅俊一(NUMABOOKS)

 

3位『わたしを空腹にしないほうがいい』くどうれいん(BOOKNERD)

 

4位『あおいよるのゆめ』ガブリエーレ・クリーマ(WORLD LIBRARY)

 

5位『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』松本篤/AHA!(武蔵野市立吉祥寺美術館)

 

6位『手繪京都日和』Fanyu(啟動文化)

 

7位『季節の記録』小幡彩貴(commune Press)

 

8位『バウムクーヘン』谷川俊太郎(ナナロク社)

 

9位『色の辞典』新井美樹(雷鳥社)

 

10位『発酵文化人類学』小倉ヒラク(木楽舎)

 

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第1位は、森田真生さんの『数学する身体』文庫版でした。

当店のハイライトとして文句なし。森田さんの専門はもちろん数学ですが、その論は哲学や宗教、技術、教育などあらゆる分野に跨ります。古代の哲学者たちが当然のように数学を嗜んでいたように、本来分岐できない道を束ねて、私たちに紹介する森田さんの論を象徴する一冊として、これからも多くの方に届けたい一冊です。

 

自由にジャンルを横断して、己を突き詰めていくために、森田さんは特定の研究機関に属さず個人で研究をすすめる独立研究者の立場をとられています。昨年の刊行ながら、10位に入った『発酵文化人類学』の著者、小倉ヒラクさんも似た立場に身を置かれている書き手です。

 

「発酵」という現象そのものを対象にするヒラクさん曰く、発酵の分野を研究しようと思うと多くの場合が納豆や酒など、特定の食品にフォーカスをしないと研究機関では予算が出ないそうです。『発酵文化人類学』が面白いのは、発酵というテーマを下地に哲学やその他さまざまなことを学べるからでしょう。この数年は森田さんやヒラクさんのように分野をまたいで活躍する書き手の本が活躍しています。また、森田さんがミシマ社のウェブマガジンで連載してきた『数学の贈り物』が3月に書籍化予定です。こちらもお楽しみに。

 

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第2位は、映像作家・菅俊一さん初の単著『観察の練習』。

「観察とは、日常にある違和感に、気づくこと。」無意識に見逃してしまう身の回りの道端の風景を切り取り、考察する一冊です。取るに足らないものを疑問に思う、面白がる。それを繰り返すことで、自分がこれまでに気づきもしなかった新たな認識が可能になるかもしれません。その導入にまずはここから。文章を書く、絵を描く、写真を撮る、何にせよヒントを与えてくれる一冊です。

 

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第3位は、盛岡の若き歌人、くどうれいんさんの食日記『わたしを空腹にしないほうがいい』。

食べることからはじまる感情の連鎖。日記という表現方法の性質か、過ぎ去るものへの切なさと、日常の豊かさが綴られた一冊です。雑誌『POPEYE』などでも取り上げられた注目の新人。今後の著作刊行が期待されるひとりです。

 

みなさんの今年の読書生活はいかがでしたか。良い本には出会えましたか。本年も格別のご愛顧を賜り、誠に有難う御座いました。新年は1月2日からの営業です。2019年も恵文社をどうぞよろしくお願いいたします。

 

(鎌田)

 

〜おまけ〜

書店スタッフの私的2018年の3冊

 

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鎌田

『さよなら未来』若林恵(岩波書店)

『落としもの』横田創(書肆汽水域)

『サザンと彗星の少女』赤瀬由里子(リイド社)

 

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涌上

『ひとり空間の都市論』南後由和(筑摩書房)

『自然なきエコロジー』ティモシー・モートン(以文社)

『HE LAND IN BETWEEN』Ursula Schulz Dornburg(MACK)