恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、9月第3週

現在、神戸のKIITOで開催中の「Robert Frank: Books and Films, 1947-2017」展。ある年上の友人にその話をしていたら、後日神戸に行ったからとその展示図録を買ってきてくれました。小さい頃父親が仕事の帰りに玩具を買ってきたときのあの気持ち。前に中国に旅行に行った同僚が私の好きなイラストレーターの作品集を買ってきてくれたこともありました。この仕事をしていると本をプレゼントされることが意外と少ないのですが、嬉しいものですね。

 

さて、今週入荷した活きの良い本を紹介する「今週の新入荷」、9月第3週をお送りします。

 

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ロシアの児童文学やその周辺文化を紹介する雑誌『カスチョール』。実に3年の期間を空け、33・34合併号が届きました。特集は「日本人留学生が過ごした1960~1970年代のモスクワ」です。「アフリカの年」と呼ばれる1960年、多様な人材育成を目的に途上国の学生を支援するべくソ連のフルシチョフが設立した民族友好大学。カスチョールの会の主宰田中泰子さんをはじめ、そこで学んだ日本人留学生の回想記を中心に今号は構成されています。

 

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加えて、当店でも5月に上映会を開催したアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインへのロングインタビューや、S・マルシャークが子どもに宛てて書いた、本邦初訳の詩「ミスター・ツイスター」も収録しています。こちらの詩、とてもユニークです。アメリカの元大臣、実業家、大富豪のミスター・ツイスターがある日思いついたロシア旅行。根っからの差別主義者のツイスターさんは有色人種が大嫌い。旅先でも白人だけが泊まるホテルを探すも、ロシアにそんなホテルはなく…。この詩が書かれたのは随分昔の話ですが、まるで現在のアメリカの誰かさんを思わせます。

カスチョールという言葉は、ロシア語で「たきび」を指します。1991年の創刊以来、四半世紀に渡ってロシアの子どもの本の魅力を伝えてきた本誌ですが、次号の35号をもって終刊を予定されているそうです。専門的な内容ではありますが、ぜひこの機会に魅力的なロシア児童文学の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

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ニューヨークの建築書出版社〈Princeton Architecture Press(プリンストン・アーキテクチュラル・プレス)〉が発行する絵本たち。誰もが知っているような世界中の名建築が完成するまでをイラストとともに紹介する「Who Built That?(誰が建てたの?)」シリーズから、今回は〈MODERN HOUSES〉〈SKYSCRAPERS〉〈BRIDGES〉の三冊が入荷しました。フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジェの代表的な建築をその外観だけでなく、その完成までの過程や、なぜ革新的だったのかを平易な言葉で紹介。英語表記ではありますが、難しい表現はありませんので自然にお楽しみいただけることでしょう。単に建築を扱ったドローイング集としても魅力的です。

 

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同じくPrinceton Architecture Pressが制作したスタンプキット『STAMPVILLE』もおすすめです。三角、平行四辺形、格子、レンガ柄、窓、扉、電線…、一見何とでも捉えることができる図柄をした25種類のスタンプ。紺色と黄色のインクパッドを駆使して組み合わせれば家や、ビル、工場、樹木など、私たちが街頭で目にするもの全てをスタンプから生み出すことができます。少し試してみましたが、建築を専門とする出版社が手掛けただけあって良くできています。

 

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また別の出版社にはなりますが、『My First Shapes with Frank Lloyd Wright』も同じ建築を扱った絵本です。丸、三角、四角。こちらはフランク・ロイド・ライトの建築の細部を見ると多くの場面で基盤として用いられている幾何学的形状に焦点をあてて紹介するボードブックです。小さなお子さんがかたちを学ぶのにぴったりの一冊。

 

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京都文化博物館で今週末まで開催中の「世界最高の写真家集団マグナム・フォト創立70周年 パリ・マグナム写真展」の図録も入荷しています。ブレッソン、キャパらが設立したマグナム・フォト。いままでにも多くの場で会員たちが撮影した写真を目にしてきましたが、今回の展示、あるいは図録は創設期から戦後、復興期、解体期、そして現在まで、世界情勢に合わせ期間が設定され、それとともにマグナムの写真もどう変わってきたか紹介する構成をしています。まさしくマグナム・フォトが歩んできた70年の歴史を総攬する一冊です。巻末にはいしいしんじさんの解説とも小説ともとれる寄稿も収録。

 

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埼玉、福島県で行われた『ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて』展の図録もあわせて入荷しています。跳んだり、跳ねたり、人や動物とともに過ごした幸せな瞬間をおさめた写真たち。およそ160点の作品と、時代背景や撮影技法にまつわるコラムなど読み物としても充実しています。邦訳新刊としてはラルティーグ唯一の写真集です。

 

今週はここまで。また来週もお楽しみに。

〈今週ご紹介した本〉

■『カスチョール 33・34合併号』(カスチョール編集部)

www.keibunsha-books.com

■『WHO BUILT THAT?』Ddier Cornille(Princeton Architecture Press)

www.keibunsha-books.com

■『My First Shapes with Frank Lloyd Wright』Lydia Ortiz(mudpuppy)

www.keibunsha-books.com

■『パリ・マグナム 展示会図録』(コンタクト)

www.keibunsha-books.com

■『ジャック=アンリ・ラルティーグ 展示会図録』(コンタクト)

www.keibunsha-books.com

(鎌田)