暑い。気がつくと近頃カレーばかり食べているような。今日、明日とスパイスカレーの第一人者水野仁輔氏によるカレー教室が当店のイベントスペースにて開かれています。普段、家でカレーを作るときはいつも水野さんの本を参考にしていて、カレー作りに慣れてきた最近では、スパイスの配分を自分でアレンジしてみたり、あれこれ楽しいです。
それでは、「今週の新入荷」6月第4週をお届けします。
フットボールカルチャーマガジン『SHUKYU Magazine』。
今回で4冊目となる「YOUTH ISSUE/ユース特集」が届きました。オリンピックのたびに代表チームが“○○世代”という愛称で呼ばれるように、またフル代表以下細かく年齢別にユースチームが組まれているその制度構造からか、いつの時代も世代論が尽きないサッカーというスポーツ。巻頭の石神井高校サッカー部への取材から始まり、江口宏志さん、幅允孝さんら、本好きのあいだでおなじみのプレーヤーも時々登場しながら、サッカーにおける若い世代についてそれぞれの思いが語られています。無論、ここに勝敗や戦術論の出る幕はありません。朝練の前、空気が濃いなかをグラウンドへ急ぐような、懐かしい感覚が蘇ります。
文化人類学者・今福龍太さんのサッカー批評原論『ブラジルのホモ・ルーデンス』(月曜社)をちょうど読みおえたところで、さながら球体が廻るように、夜な夜なサッカーというスポーツについて思いを巡らせています。記号論者のウンベルト・エーコは文化現象としてサッカーを見、論じてきたわけですが、まさに探求対象としてサッカーほど懐の深いスポーツはなく、『SHUKYU Magazine』のように、社会学のフィールドワークと似た手法で編まれる雑誌が日本で生まれるのも何ら不思議ではないのです。
写真家・志賀理江子が、2009年にタイのバンコクで、バイクの二人乗りで疾走する恋人たちを撮影した写真群『Blind Date』。バイクの後部座席に座っている人たちと、何百何千人と眼差しを交わし、その奇妙な見つめあいをカメラという道具をもって触れ、彼女の中の性的などこかにも作用するようだったと自ら語るように、生々しく、それでいて淡々と。全ページに袋とじを施し、書籍全体を特製函で包み込むという非常に凝ったデザインワークも美しい写真集です。
ミシマ社から届いた絵本『おなみだ ぽいぽい』。
ねずみのこどもが、どうしようもない悲しみを涙に変えて、好物のパンの耳に沁み込ませ、天井の穴に向かって放り投げると、通りがかりの鳥がキャッチして食べてしまう…絵本のあらすじを数行で紹介しようとすることほど無粋なこともないかもしれませんが、一見突飛な内容にみえて、悲しみにくれた時、大人にも子供にも寄り添うような優しいお話です。子どもの本専門店メリーゴーランドで働いていた経歴をもち、数多くの本の装画を手がける著者ごとうみづきさんが、長年あたためてきた自身初の自作絵本。現在、絵本売り場にて、数点原画を展示しています。7月の初週ごろまでの展示となりますので、この機会にぜひお立ち寄りください。
アーノルド・ローベルの『ふくろうくん』という本には、悲しみのつまった涙を、お茶に淹れて飲んでしまうという話があります。そんな幼い頃より慣れ親しんだ絵本のことを思い出しながら。
その他にも、47の都道府県をひとつずつ、美しい写真で日本を再発見する雑誌『JAPANGRAPH』第七号沖縄特集や、当店でもお馴染みの『ウズベキスタン日記』『イラン・ペルシア日記』のデザインユニットBlood Tube金子夫妻による初めての絵本『ぼくはパン Je suis le pain』も入荷しています。
今週はここまで。来週もお楽しみに。
〈今回紹介した本〉
『SHUKYU Magazine YOUTH ISSUE』(SHUKYU)
『Blind Date』志賀理江子(T&M Projects)
『おなみだ ぽいぽい』ごとうみづき(ミシマ社)
(鎌田)