恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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今週の新入荷、5月第4週

その週に入荷した活きの良い本をご紹介する「今週の新入荷」。

5月4週をお届けします。

 

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中国の出版社Jiazazhi Pressから発行された、どこからどう見ても煙草の箱にしか見えない、ユニークな写真集『Until Death Do Us Part』。嫌煙のご時世です。こんな写真集、日本では絶対に発売できません。ビニールを剥けば、吸う前の煙草の青い匂いと、角に残った茶色いカス。興味本位で調べてみると、実際に中国で販売されている“紅双喜”という銘柄の箱で間違いないようです。誰かが吸った後のものなのでしょうか、その徹底した遊び心に惹かれます。ちなみに、まとめて注文したというのもあるのでしょうが、当店への入荷時はなんとカートンで届きました。

 

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その外見の突飛さに注目しがちですが、内容もなかなかのもの。「死が二人を別つまで」、この写真集、実はそんなロマンチックな名前をしています。少し昔の話だとは思うのですが、中国では、結婚式に訪れた新郎の男友達に、花嫁が煙草の灯をつけて回るという風習があるそうです。カップルがふざけるように煙草を吸い合い、家族もそれを見て笑い転げている、そんな至福の一場面。また、本書に収録されている写真は撮りおろしではなく、北京郊外のリサイクル工場から長年集められた写真のネガから選ばれたものです。愛と(タバコがもたらす) 死が両立する伝統に対するオマージュでもある、レトロな趣がたまらない一冊。

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話は逸れますが、煙草つながりということで。その昔“LUCKY STRIKE”のノベルティとして配布された冊子がありました。安西水丸、片岡義男らが参加したという豪華な一冊です。さすがに現在のご用意はないのですが、以前当店のオンラインショップで紹介したページが残っておりましたので、ご興味のある方は参考までに覗いてみてください。

 

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続いては、ドイツの若い出版社Tarzipan Booksが発行する『ABC Photography』。猫とネズミがキスをしているような表紙が印象的な、子供にも写真を撮る・鑑賞する楽しさを伝えようと制作された写真集です。ティルマンスやアレック・ソスら著名な写真家の作品も収録。何かを物語るかのようなドラマチックな作品に添えられた、アルファベット順のテキストも子供達の想像を膨らませます。

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ドイツでは小学生がLAMYの万年筆を当然のように使っていると聞いたことがありますが、こちらの写真集しかり、芸術や上質なものに小さい頃から触れさせようとする、ドイツの大人の姿勢を羨ましく思います。英語を勉強したてのお子さんへのプレゼントとしてもおすすめです。

 

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往年の「POPEYE」「BRUTUS」でライターを務め、以来、普段私たちが踏み込まないような、コアな世界を紹介する珍本を多数紹介している都築響一さん。今回の新刊『捨てられないTシャツ』も期待を裏切らず、興味深い内容です。バンドT、プロレス、キャラクター…、誰しもが一枚は所有しているであろう〈捨てられないTシャツ〉をテーマに70人に取材し、実際の写真とそれぞれのエピソードで紹介した一冊です。なかには、スヌーピーのキャラクターのライナスがカート・コバーンに扮したもの、宴会の場で退職祝いに贈られた手書きのものなど、いずれも一癖あるTシャツのカタログとしてもお楽しみいただけます。〈捨てられないTシャツ〉企画は、当初、都築さんが運営する有料メルマガ「ROADSIDERS’weekly」の箸休め的コーナーだったそうです。こちら、著者サイン入りのものも入荷しております。ご希望の方はぜひお早めにお買い求めください。

 

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出品者たちのプロフィールは、出身地、職業、年齢、性別が書かれているだけで、具体的な名前は明かされていませんが、なかには誰もが知る著名人も多数登場しているそうです。『TOKYO STYLE』『賃貸宇宙』など、これまでの都築ワールドから続く、詠み人知らずといいますか、奇妙な匿名性のようなもの。『捨てられないTシャツ』もまた、同じ空気を帯びた一冊です。誰でもない誰か、最小単位の対象にフォーカスをあてているにもかかわらず、その匿名性からか都築さんの著作からは無限の広がりを感じずにはいられません。

 

6月27日にはなんと都築さん本人をお招きして、刊行記念のトークイベントを開催。刊行のいきさつや裏話を存分にお話しいただきます。当日は「捨てられないTシャツ」を着用の上、ご参加ください。詳細、予約はこちらから。

 

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アメリカ・オレゴン州ポートランドのガイドブック最新版『TRUE PORTLAND 2017』(Hawthorne Books & Literary Arts)も入荷しています。本国に先駆けて、英語版が国内発売。

 

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Eテレ「ピタゴラスイッチ」でお馴染み、佐藤雅彦+ユーフラテスが手がけた写真絵本『このあいだに なにがあった?』(福音館書店)。並べられた二枚の写真のあいだに何が起こったのか、想像し、推理する楽しさを子供に伝えます。

 

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南インドの小さな出版社、Tarabooks(タラ・ブックス)が、制作するハンドメイドの絵本、最新作『太陽と月』(タムラ堂)も本日入荷。工芸品のような美しい一冊です。ご予約いただいていた方は、随時発送いたしますので、いましばらくお待ち下さい。

 

それでは、今週はこのあたりで。

来週もお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

『Until Death Do US Part 3rd ed.』(Jiazazhi Press)

www.keibunsha-books.com

『ABC Photography』(Tarzipan Books)Germany

www.keibunsha-books.com

『捨てられないTシャツ』都築響一(筑摩書房)

www.keibunsha-books.com

(鎌田)