恵文社一乗寺店 スタッフブログ

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今週の新入荷、2月第3週

毎週金曜更新。

その週に入荷した活きが良い本を紹介する「今週の新入荷」、2月第3週をお届けします。

 

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今回まずご紹介するのは、翻訳家の柴田元幸責任編集の文芸誌『MONKEY vol.11』。特集名は“ともだちがいない!”です。今号の目玉はなんといってもC・ブコウスキーの未訳短篇小説「アダルトブックストア店員の一日」でしょうか。昨年復刊された『パルプ』以来、20年以上ぶりになる柴田さんのブコウスキー訳し下ろしです。冒頭のちょっとした解説には、「ブコウスキーの作品は案外スラングが少ない。スラングは仲間内の通り言葉である。ブコウスキーには仲間、友だちがいない。ゆえに彼の(自伝的)作品にはスラングが少ない」という孤高の作家であった彼を端的に紹介する文が添えられていました。今回の特集はこのアイデアから生まれたそうです。その他、谷川俊太郎が幼少の頃に描いた絵とともに掲載されている、書き下ろしの10編の詩「ともだちがいない!」など、今回も読み応え抜群の一冊に。

 

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60年代、70年代、80年代、平凡パンチ、MEN’S CLUB、BRUTUS、POPEYE...。

雑誌という媒体が一番元気だったころに活躍し、当時の若者たちに影響をあたえた伝説のフリー編集者・寺崎央。没後数年が経ったいま、テラさんのコラム集『ショーワの常識』があたらしく発行されました。勝新太郎の文章を思い出すような、飲み屋の横でそこらのおじさんに話しかけているような、不思議と心地良い文体をもって、我々若者へ、映画のこと、街のこと、洋服のことのあれこれをテラさんが教えてくれます。宮城にある新しい出版社から発売されており、まだ流通先が多くないようです(特に関西では)。ファンの方にはぜひとも手に入れていただきたい一冊。入門編として、マガジンハウスから刊行されている『史上最強の助っ人エディター H・テラサキ傑作選』も合わせていかがでしょう。

 

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奈良市写真美術館で開催中の田淵三菜「into the forest」展より図録も届いています。「写真集」を制作することを目的に募集された入江泰吉記念写真賞。応募作101点の中から選ばれた田淵さんの作品がまとめられた写真集です。一月から十二月まで、冬からはじまってまた冬へ。一年間の森の様子の移り変わりを一ヶ月ごとに写し続けた彼女の写真は、断片的で、初々しく、美しい輝きを放っています。

 

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ある街の匂いに触れる写真文芸叢書、という文句で刊行がスタートしたマチビト。第一弾の『チーズ・イン・コーベ』が入荷しました。あらゆる媒体でその名を見かける最果タヒの文章に、松本直也の写真がついた文芸と写真の融合を目指した新しい試みです。写真と文芸というテーマはこれまでにも取り組まれてきたことでしょうが、それを前提として本が作られた機会はあまりなかったように思えます。今後も刊行が楽しみなシリーズです。

 

その他、日本のヒップホップカルチャーを偏愛する漫画家・服部昇大による1ページ完結の日本語ラップ漫画『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』待望の第2巻、岩手県盛岡市の「ふだん」暮らしを伝える小冊子『てくり 23号』盛岡動物事情特集、山形県置賜発地域カルチャー誌『nda nda!』(読み方は“んだ んだ”)など入荷しています。

 

それでは来週もお楽しみに。

 

《今回紹介した本》

『MONKEY vol.11』特集:ともだちがいない! スイッチ・パブリッシング

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020836/

『伝説の編集者H・テラサキのショーワの常識』寺崎央 エンジェルフェザー

『into the forest』田淵三菜 奈良市写真美術館

http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000020848/

『チーズ・イン・コーベ』文・最果タヒ 写真・松本直也 Sunborn Inc.

(鎌田)