前田さんの作品は、大げさに言うと、ぐにゃっとしています。平皿が丸くなかったり、軸がずれていたり。クレヨンを手にした子供が、紙の上に自由な軌跡を描くように、ガラスの硬度を感じさせない変幻自在な印象。作家の主張や模倣から逃れたこれらの形を眺め、前田さんが作ればそうなるしかないのだろうな、と思います。
今回は昨年の展示では無かった、薄茶色の蕎麦猪口、水色の平皿も並んでいます。この淡く青みがかった器は、お酢の瓶や窓硝子などを溶かして作ったもの。かつてはビール瓶も素材に用いていたそうですが、現在は瓶の品質も変わり、使いにくくなってしまったのだとか。
透明な器が一覧できる会場は、涼しげな風が吹いています。
前田一郎 8月のガラス
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー
2016年8月6日〜8月19日
(田川)