恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

ここに いられて わたしは うれしい

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文芸誌(unintended.) LIARS発行人・きくちゆみこさんと、『わたしが生きている世界はまるで球体です。』『上下巻』など数々の写真集を生み出してきた成重松樹さん。共に、近しい人々や身の回りの景色に目を向け、拾い上げている表現者であり、パートナーでもあるお二人の展示会を開催しています。

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壁面には成重さんの写真と、きくちさんの言葉、引用された一節が、コラージュのように貼りめぐらされています。一見、無造作に配されたようですが、点と点を結ぶ相関図のように作者の意図する、あるべき場所に位置したもの。その隠れた意味の解読は、会場に来ていただいた方に委ねられています。
それは壁面にとどまらず、ギャラリー全体にも言えること。卓上の作品集、そこに収録された言葉と写真、窓辺にある小さなキャンバス、オブジェ。空間内に散りばめられた欠片の結びつきを、自分なりに解釈し編み直してみてください。他者を写すと同時に、自分の視線も曝け出す写真の面白さ。イメージを如何様にも変化させることのできる言葉の自由さ。表現することの豊かさに触れる、展示会です。

 

きくちゆみこ 成重松樹
ここに いられて わたしは うれしい
11月11日〜11月24日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

 

(田川)

yumi uchida カレンダー原画展のお知らせ

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今月17日より書籍フロア一角にて、イラストレーター内田有美さんによる原画展を開催いたします。毎年オリジナルのカレンダーを制作されている内田さんですが、2018年版のテーマは「鉱物」。実際に石を見ながら描き上げたという緻密なイラストは、本物と見紛う程、硬度やその輝きを再現しています。カレンダーはご好評につき当店店頭、オンラインショップ共に完売していますが、展示にあわせて少部数、再入荷予定です。

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また、当フェアにあわせてポストカードもご用意頂きました。鉱石や、2017年版カレンダーのテーマ「白い食べもの」が描かれたカードは、これからの時期、ギフトに添えるアイテムとしてもおすすめです。是非これら繊細なイラストレーションを、直にご堪能くださいませ。
 

yumi uchida カレンダー原画展
11/17-11/30
恵文社一乗寺店 書籍フロア一角にて

◎ 数が限られていますので、カレンダー、ポストカードのお取り置き、お電話でのご注文はご遠慮頂いております。ご了承のほどお願いいたします。

 

(田川)

11/19(日)パク・ミンギュ×斎藤真理子トークイベント

日本翻訳大賞という文学賞があります。2015年に西崎憲、柴田元幸、金原瑞人、岸本佐知子らの翻訳者有志によって立ち上げられた、生まれて間もないこちらの賞は、一次選考を一般読者の手に委ねるという開けた性格をもっています。第一回大賞として選ばれた作品はなんと韓国文学作品でした。受賞作はパク・ミンギュの『カステラ』(クレイン)。翻訳は斎藤真理子さんです。同賞はその作品自体以上に、翻訳者への評価が重要になります。ブローティガンの翻訳が藤本和子でなければならなかったように、現在の韓国文学邦訳において斎藤さんの存在は欠かすことができません。この受賞以来、ミンギュさんの小説は次々に邦訳されました。ここ最近で、韓国はじめ、中国、台湾、他のアジアの国の文学に少しずつですが注目が集まっています。

 

11月19日(日)には、なんとパク・ミンギュさんと訳者の斎藤真理子さんをお招きしたトークイベントを開催。ミンギュさんは東京会場と当店でのトークイベントのために来日されます。

 

『三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』(晶文社)刊行記念イベント

韓国の人気作家パク・ミンギュさんがやって来る!

【日時】11月19日(日)14:30open / 15:00start

【参加費】無料

詳細はこちらからhttp://www.cottage-keibunsha.com/events/20171119/

 

そして、いよいよ来週頭には、パク・ミンギュ新刊『三美スーパースターズ最後のファンクラブ』が犀のマークの晶文社より刊行されます。手元になく、まだ読めていないものをどう語ろうかと思案しましたが、イベントまで時間もないので思い切って書きます。

 

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三美スーパースターズというのは、80年代韓国プロ野球創世記にぶっちぎりの最下位の弱小チームとして君臨し、2007年にプロ野球から撤退し、現在は解散した野球チームです。このダメチームのファンクラブ会員だった二人の少年が大人になり、様々な困難に立ち向かうというのがこの本の大筋。「がんばれ!ベアーズ」的な話ではないのはもちろんですが、弱小チームのファンクラブ、しかもそのチーム自体が無くなるという憂き目に直面するという流れは、何か燃えるものがあります。届くのが楽しみでなりません。

 

『三美スーパースターズ…』は、晶文社から先月始まった「韓国文学のオクリモノ」シリーズの第二作。来年5月までに、ハン・ガン、パク・ミンギュ、キム・エラン、ファン・ジョンウン、キム・グミ、チョン・ミングァンの6名の作品が出揃います。シリーズを通じてのブックデザインは寄藤文平、鈴木千佳子のタッグによるものです。

 

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この企画を興した晶文社の斎藤典貴さんの偏愛がなければこのシリーズは始まりませんでした。今回の新刊に合わせて斎藤さんから、「宣伝に役立ててくれ」という名目で三美スーパースターズのTシャツをいただきました。スーパーマンが米国の強打者のようなスタンスでバットを構える、ナンセンスな魅力に溢れたデザイン。イベント当日はこちらを着て参加し、イベント後にはミンギュさんにサインを入れてもらい、スポーツチームのTシャツらしく店頭に飾りたいと思います。(非売品です。)

 

今回のイベントのために斎藤さんがミンギュさんに簡単なコメントを求めたところ、原稿4枚分ほどの分量のメッセージが返ってきたそうです。そのコメントが文章として非常に良いらしく、今回のイベントにご参加いただいた方々に限定で冊子としてお配りする予定です。その他にも、ちょっとした読み物として面白い韓国文学を紹介する冊子も何点か来場の方に差し上げます。ともあれ、今回のイベントは参加費無料です。ぜひお気軽にご参加下さい。

 

また店頭ではクオンから刊行されている〈新しい韓国文学のシリーズ〉や、ミンギュさんの著作を集めたフェアを開催しています。あわせてご覧ください。

(鎌田)

今週の新入荷、11月第2週

先日、レジをした外国の方から「僕の本を置いてくれてありがとう」と言われ、どなたかと尋ねればイラストレーターのNigel Peakeさんでした。国内版として発売されたものはまだないものの、我々スタッフの偏愛もあって彼の洋書作品集を数点店頭に並べています。京都で自分の本を見かけるとは思ってもみなかったそうで、思わず声をかけたと言っていました。クリスティやドイルの邦訳古書を10点ほど買った彼は、日本語は読めないものの、そのデザインに惹かれて少しずつその手の古書を買い集めていると教えてくれました。その日は自転車で京都を見て回っていたようです。自宅の庭や、アパートの一室から見た景色、身の回りに存在する様々な形を、端正な線で描く彼が覗く世界を、直接お話しして、少しだけ垣間見たような気がします。

 

それでは、今週の新入荷11月第2週をお知らせします。

 

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まずご紹介するのは、本日より、生活館ミニギャラリーで写真展がはじまった、きくちゆみこさんが発行する文芸誌『(unintended.) L I A R S』の最新7号。タイトルからわかるように、嘘つきたちのために作られているというこの冊子では毎号、頭の中で考えた、あるいは夢に見たような、白黒つけがたいあれこれがそのまま誌面に書かれている印象です。4月に子供が生まれたばかりのきくちさん、今号で行き着いたテーマは「生」です。おそらく、子を産んだ母親が真っ先にあじわう感覚は生命の豊かさとその不思議ではないでしょうか。今朝、きくちさんにお子さんを抱かせてもらいながら話していると、「体に中に自分と違う命が育っている」という感覚はやはり不思議なものだったと仰っていました。この本に直接、妊娠している際の体験や、子育て奮闘記のようなものが書かれているわけではありませんが、読んでいるだけで清々しい命の美しさが伝わってくる一号に仕上がっているのは、赤ん坊が持つ唯一無二の魅力によるものだと言って良いと思います。

 

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続いては、これまでの著作でも文学における書体の魅力を書いてきた正木香子さんの新刊『文字と楽園 精興社書体であじわう現代文学』に触れます。百年以上の歴史を持つ印刷所でつくられた書体、精興社書体は岩波書店をはじめとした出版社や、古くは夏目漱石、三島由紀夫、最近の作家では堀江敏幸、吉田篤弘、村上春樹の著作に用いられている書体です。こちらの本は正木さんの印象に残った精興社書体で書かれた本を挙げ、その本にまつわる書体をめぐるエピソードを綴ったエッセイ集です。普通、本の奥付に書体のことは書いていません。それゆえに、家で大切にしている本がこの書体によるものかどうか判断するのは素人目には難しいかもしれません。例えば、現代海外文学を扱ったシリーズとして際立った輝きを放つ「新潮クレストブック」。同シリーズを立ち上げた、今は作家としても活躍する編集者・松家仁之さんは精興社書体ありきで構想を練ったそうです。堀江敏幸、吉田篤弘、松家仁之というキーワードが出てきました。個人的な好みも多分にありますが、彼らはいずれもそれぞれの方法で言葉の美しさ、豊かさを伝える最前線に立つ三人だと言って良いと思います。そんな作家たちがこぞって使う書体についてだけ語った一冊。どうでしょう、興味が湧いてきませんか? 

 

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京都在住のコミックライター・ミシシッピさんが私家版として2015年に発行した絵本『パーちゃんのパーカ』があかね書房から全国発売されました。コミック、イラスト集としての性質が強かった私家版に比べて、色も増え、より絵本としての完成度を高めて再出発。着ると空を飛べるパーカ、舟にもなる帽子、かけると小さくなれるサングラス。さながら仮面ライダーのように、変身しながら、夜を飛び回る子供心をくすぐるお話です。編集を担当したのは、同じく京都に居を構えるnowakiの筒井大介さん。私家版も数冊ですが在庫しています。

 

その他にも、紀元前35万年に火を発見した人類が空を飛ぶまで。その途方もなく長い歴史の中で生まれた数々の発明を辿る仕掛け絵本『発明絵本 インベンション!』(アノニマ・スタジオ)や、『d design travel』(D&DEPARTMENT PROJECT)最新号群馬編など、諸々入荷しております。

 

それでは、今週はこのあたりで。

また来週もお楽しみに。

 

〈今回紹介した本〉

■『(unintended.) LIARS 7th ISSUE』(きくちゆみこ)

www.keibunsha-books.com

■『文字と楽園 精興社書体であじわう現代文学』正木香子(本の雑誌社)

■『パーちゃんのパーカ』ミシシッピ(あかね書房)

www.keibunsha-books.com

(鎌田)

てらおかなつみ 犬の絵展

おまちかね、イラストレーター寺岡奈津美さんの個展「てらおかなつみ 犬の絵展」がギャラリーアンフェールにて開催中です。やわらかい線と優しい色合いの心地よいイラストで、音楽アーティストのCDジャケットやグッズ、雑誌の挿絵などさまざまに活躍されている寺岡さん。大学は京都で、その頃から当店にもよく通っていただいたそうです。そんな場所で展示していただくことができて、私たちもなんだかとてもうれしくなりました。

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今回は、この一年で描かれてきた犬の絵を中心に、100点以上の作品を展示されています。壁一面に並ぶ小さな額の小窓をのぞけば、ころころ遊んだり、すやすや眠ったり、思わず抱きしめたくなるようなかわいらしい子犬たちが大集合。(ちょっとだけ猫もいます)ひとつ眺めるたびに、幸せな気分がふわっと舞い降りるよう。

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グッズも各種販売されています。(犬のふかふかポーチは品切れとなりました。ご了承ください)バッグやピンズ、お皿やポストカードなど、犬の絵が可愛らしいものばかり。来年の戌年にぴったりのカレンダーもおすすめです。

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テーブルに置かれたスクラップブックには、ラフイラストやらくがき、下書きのイラストがぎっしり。こちらも自由にごらんいただけます。額には入らなかったけれど、スケッチブックの上に生まれた小さな小さな作品は、どれもこれもついにっこりしてしまうほど楽しくて、時間を忘れてひとつひとつじっくり見ていたくなります。

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会期中は全日、寺岡さんご本人が在廊予定とのこと。描かれた子犬たちになんとなく似た雰囲気の、やわらかい空気感をまとった寺岡さん。ご来場の際はぜひお気軽におしゃべりしてみてください。

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ぐんと寒くなってきて、外に出れば鼻の奥でかすかに冬のにおいを感じるこのごろ。小さな陽だまりで子犬たちとふかふかの毛布にくるまってお昼寝をするような、しあわせな気持ちにしてくれる展示になりました。ほっとあたたかいひとときをどうぞお過ごしください。ご来店をこころよりお待ちしております。


てらおかなつみ 犬の絵展
開催期間:2017年11月7日(火)-11月13日(月)
開催時間:10:00-21:00(初日は12:00から、最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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イラストレーター寺岡奈津美の1年間描いてきました絵の展示、原画・グッズの販売を行います。
全日作家本人在廊予定です。

*初日11月7日(火)は12:00から/最終日11月13日(月)は18:00までとなります。

寺岡奈津美|Natsumi Teraoka
イラストレーター / デザイナー
1993年生まれ。現在フリーランスのイラストレーターとして活動中。
自らが描く柔らかな線が特徴のイラストを用いてデザインをしています。
主に音楽アーティストのCDジャケットやグッズ、雑誌の挿絵、お菓子のパッケージ等手がけます。
[web] http://teraokanatsumi615.tumblr.com/
[twitter / instagram] @teraoka_natsumi

≪関連イベント≫
カネコアヤノ弾き語りツアー2017秋 ”群れたち”京都公演~in collaboration with てらおか なつみ~
日時:2017/11/12(日)17:30 OPEN / 18:00 START
会場:恵文社一乗寺店 COTTAGE
http://www.cottage-keibunsha.com/events/20171112/
※当日券情報などはHPよりご確認ください。

 

(上田)

机の上の航空史~エアロベースの模型展

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ギャラリーアンフェールでは現在『机の上の航空史~エアロベースの模型展』を開催中です。当店で普段からお取り扱いしている手の平にのるほどの小さな飛行機の金属模型キットはすっかり定番の人気商品。完成見本も一緒に置いてあり、その緻密な細工の美しい飛行機に心奪われる方も毎日たくさんいらっしゃいます。

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そんなエアロベースさんが満を持して開催する当店での展示。飛行機博物館さながらに、航空史に残る名機の模型が美しく展示されています。一目見た途端に目を輝かせて近くに寄って行かれる方も多くて、うれしくなります。

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飛行機の他には、1/1000サイズのエッフェル塔も。

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元はこんな平たい金属板。ここからパーツを切り取って組み立てていきます。細かい細工は見れば見るほど引き込まれます。

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会場ではいろいろな模型のキットも販売。ケースに入っていない模型はご自由に手に取ってご覧いただけます。小学生のお子さんでも作れる模型、ぜひお家でも小さな飛行機作りをお楽しみください。

週末はエアロベース代表の岩見さんによる飛行機作りワークショップも開催。ちゃんと作れるか不安…という方も、岩見さんとお話ししながら楽しく制作していただけます。ぜひお気軽にご参加ください。

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ライト兄弟が初めて飛行機で空を飛んでからもうずいぶんと経ち、今では空を飛び越えて宇宙まで行ってしまうような時代。それでも、広い空を飛ぶ鳥や、遠くで空に線を描く飛行機を眺めては思う空への憧れは、今も昔もそう変わらないのかもしれません。表情豊かな雲が浮かぶ秋の空にぴったりの、すてきな展示になりました。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

机の上の航空史~エアロベースの模型展
開催期間:2017年10月31日(火)-11月6日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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エアロベースの金属製模型飛行機の展示と、ワークショップ。
ライト兄弟、リンドバーグ、ツェッペリンなど航空史に残る名機を模型で再現。
ワークショップは、エアロベース代表の岩見慎一といっしょに手のひらサイズの飛行機を作ります。

ワークショップ「金属製模型飛行機を作ろう」
11月4日(土)、5日(日)両日同時間にて開催します。
詳細>http://www.keibunsha-store.com/gallery/5980


(上田)

2017年10月書店売上ランキング

並行して読んでいる本が二冊。柴田元幸選によるジャック・ロンドン短編集『犬物語』と、編集者としても活躍する作家・松家仁之の新作長篇『光の犬』、偶然にもどちらも犬の本だと読み始めて気がつきました。そして、犬型ロボットのアイボが再発売されるというニュースを見て知りましたが、そういえば来年の干支は犬。ひとり、一足先に年越しの気分に浸った不思議な夜です。

 

それでは10月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『京都で考えた』吉田篤弘(ミシマ社)

古本屋、レコード屋、喫茶店を停留所に、作家・吉田篤弘が京都を歩き、考えたことを綴ったエッセイ

 

2位『うしろめたさの人類学』松村圭一郎(ミシマ社)

最貧国・エチオピアで20年近くフィールドワークを続けてきた文化人類学者による単著

 

3位『なくなりそうな世界のことば』吉岡乾 西淑(創元社)

世界の50の少数言語を、それぞれの地域の暮らしや習慣を紹介した一冊

 

4位『WORKSHOP BOOK アルフェテ工作室の本』(アルフェテ工作室)

ワークショップを通じて、“こどもと遊ぶ場”を生み出すグループ・アルフェテ工作室の活動を紹介した冊子

 

5位『いちご宣言0号』沼田元氣 川島小鳥(ストロベリィファーム・ファクトリィ)

師弟による「可愛良イ」ものだけを集めた写真集。現在完売中、近日再入荷!

 

6位『Spectator vol.40 カレー・カルチャー』(エディトリアル・デパートメント)

日本カレー専門店における新しい波と、その店主たちを徹底取材した一号

 

7位『お菓子の包み紙』甲斐みのり(グラフィック社)

蒐集家・甲斐みのりさんが20年の年月をかけ集めたレトロな包装紙のコレクション

 

8位『販路の教科書』越前ものづくり塾(EXS Inc.)

ものづくりに携わる人々に向けて開かれた10回にわたる連続講義の冊子版

 

9位『チャイの旅』神原博之(ギャンビット)

大阪の街にチャイを浸透させた「カンテ・グランデ」に長年勤めた著者による、レシピも豊富なチャイをめぐる旅

 

10位『街と山のあいだ』若菜晃子(アノニマ・スタジオ)

冊子「murren」を手掛ける著者による山にまつわる随筆集

 

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1位は、10月身贔屓しておすすめさせていただいていた吉田篤弘さんの新刊エッセイ『京都で考えた』です。あまり具体的な冊数を挙げるのも無粋ですが、12日の発売以来すでに100冊近く出ています。お買い上げいただいた皆様ありがとうございます。17日には吉田篤弘さんと浩美さん、クラフト・エヴィング商會のお二人をお招きしたトークショーも開催しました。そこでの内容を、すでに読まれた方に向けて少しだけご紹介できればと思います。

 

今月、中央公論新社より発売が予定されている吉田さんの著作『金曜日の本』。熱心なファンの方であれば、このタイトルに見覚えがあるはずです。世田谷文学館での展示の際に同館から発行された『おるもすと』という本があります。その発行元として記されていた架空の出版レーベルが「金曜日の本」です。今回発行される『金曜日の本』は、都内の通っていた小学校裏にあったという牧場のことなど、吉田さんがこどもの頃に体験などが書かれた内容になるそうです。装丁見本を見ましたが、デザインも厚さも判型も『京都で考えた』とうりふたつ。イベント前のブログで『おるもすと』と『京都で考えた』が双子のような本だと書きましたが、その予想は外れていて、どうやら三つ子だったようです。当店にも入荷予定です。発売を楽しみにお待ちいただければ。

  

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4位は、京都や大阪を拠点に多くのワークショップを主宰するグループ〈アルフェテ工作室〉が制作する『WORKSHOP BOOK アルフェテ工作室の本』。新刊でもなく、当店で取り扱いをはじめてからもう一年以上経ちますが、今月は特に売れました。「こどもと遊びたい大人に贈る」という目的で作られたこちらの冊子は、こどもと大人が一緒になって楽しめる工作のアイデアが掲載されています。上手い工作のノウハウが書かれているのではなく、こどもへの声のかけ方や褒め方、コミュニケーションのヒントになるコラムのようなページが目立ちます。代表のやぎさん曰く、工作教室を開いていて、よく相談されることがこどもとのコミュニケーションについてだそうです。小さな冊子ではありますが、子育てにおける様々なヒントが詰まった一冊です。来年あたり、当店でも何かご一緒できないかと計画中。どうぞご期待ください。

 

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9位は、大阪の街にチャイを浸透させた先駆的なエスニックカフェ「CANTE GRANDE(カンテ・グランデ)」で34年間勤めた著者が、チャイ、紅茶、日本茶、中国茶の美味しい淹れ方や選りすぐりのレシピを紹介しながら、かつてトータス松本も働いていたというカンテの記憶や、チャイそのもののこと、日常的にチャイが楽しまれている国々での体験に至るまで、豊富なテキストで巡る一冊です。お茶の一杯で、その一日が良いものになるという経験をみなさんもされたことがあると思います。その一杯が美味しければなおさらのこと。紅茶や日本茶に比べて、家で淹れるにはすこし敷居が高く感じるチャイ。これからの時期、本書を読んで試してみたい、そんな気にさせる一冊です。目覚めの一杯、寝る前の一杯、お茶のおともに。

 

それでは、今月はここまで。

また来月もお楽しみに。

(鎌田)