恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、7月第4週

今週の新入荷、7月第4週をお届けします。

 

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『NEUTRAL』『TRANSIT』などのトラベルマガジンを世に送り出してきた編集者の加藤直徳さん。彼が新たに手掛ける雑誌『ATLANTIS』創刊に先がけ、新雑誌を生み出すまでの過程そのものを6冊にわたって丹念に追いかけるzineシリーズ『ATLANTIS zine』の1号と2号が同時入荷しています。

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1号ではタイトルとコンセプトを、2号では特集と判型を決めていく過程をテキストや対話、見取り図のようなメモなどを交えながら紹介。わたしたちが本屋で実際に目にする完成したかたちの雑誌になるまでに、編集者はいったいどのような試行錯誤を経ているのか、作り手側からの視点は書籍や雑誌の作り手だけでなく読み手にとっても興味深いものです。

また、末井昭、横尾忠則といった70年代~80年代の雑誌を語るうえで欠かせない「センセイ」たちや、『Studio Jornal knock』の西山勲、『Spectator』の青野利光など現在形でユニークな雑誌を作り続ける編集者たちへのインタビューも掲載。ここでもまた、それぞれの時代背景のもとで彼らがエディトリアルの現場において何を考え、実践してきたかが語られています。

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手持ちのスマートフォンで写真を撮り、加工を加え、簡単な言葉を添える。テクノロジーの進化によって、意識せずとも日常的に誰もが編集を行えてしまう時代に、あえて紙の束を編み、雑誌として世に問うことを自らの道として選ぶ編集者としての熱意と矜持が誌面の端々より伝わってきます。本シリーズはイシューごとに版型が異なるのもユニークな点。徐々にサイズを大きくしてゆく3号以降も、コンテンツ、取材、フィールドワーク、デザインや言葉など、実務的な試行錯誤と、編集者自身の経験や過去の記録の振り返りを同時並行で展開してゆきます。続刊もぜひお楽しみに。

 

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2015年、福井県越前市で開かれた「越前ものづくり塾」。受け継がれてきた伝統工芸や地域の産業を人々に手渡すにはどんな場と方法があるのか。モノの作り手と使い手を繋ぐ道を通す「販路」の様々な可能性を探る連続講義をまとめた『販路の教科書①』も今週の入荷です。

国内だけではなく海外、地方のエディトリアルショップや都市部のセレクトショップ、個人作家が集うウェブメディアや紙のカタログ、百貨店や展覧会などの現場で、モノの流れを実際に見ながら新たな繋がりを作り出すバイヤー、プランナー、ショップ店主や編集者たちがそれぞれの仕事を語ってゆきます。どんなモノを買い手は求めているのか、どういう売り方が顧客の満足につながるのか、どのように語ることでその魅力を伝えられるのか。モノが溢れ、ライフスタイルは多様化し、さらには震災を経て、作り手が制作や製造だけを担っていればよいという時代は終わり、どこで何を買うかを意識的に考える人々はこれまでになく増えています。地域の産業の担い手やオリジナルブランドを持つ個人の作家にとってそのプロダクトの伝え方や見せかたは今後もますます重要になっていくことでしょう。

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100年以上続く東京土産として有名なある銘菓は、パッケージを季節に合わせ期間限定で変える試みでさらにより多くの人々に買い求められたというエピソードなどは、定番と呼べるワンブランドを持っていることの強みと、それをどのように提示するのかというデザイナーのアイデアがあればこそ生まれるもの。定番を古典に、パッケージをブックデザインに置き換えて考えてみれば、私たちにもその違いは容易に想像することが出来ます。

モノの作り手である作家や製造業の方、デザイナーや小売業者などの伝え手はもちろん、買い手や使い手側からも手に取ってみていただきたい一冊です。

 

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「世界で最も美しい本」と称される装飾写本『ケルズの書』。およそ1200年前、アイルランド中東部のケルズの修道院で完成された同国の国宝でもあるこの装飾写本をテーマにしたアニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密』のオフィシャルアートブックも入荷しています。

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「ケルティック・スパイラル」と呼ばれる渦巻文様を用い、ヴェラム(子牛の皮)に書かれた680ページにも及ぶ装飾写本に魅せられたのは、その監督作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』が昨年日本でも公開され大きな話題を呼んだアニメーター、トム・ムーア。中世絵画に倣い、伝統的な2Dの手描きによって美しいケルト美術の世界を現代のアニメ・デザインに蘇らせました。ピクサーやスタジオ・ジブリに並ぶアイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」より出版された本書では、キャラクター造形や絵コンテ、アニメーションの制作過程などをビジュアルたっぷりに紹介。アイルランドカラーを採用し、緑を基調とした映画の世界をたっぷりと収載した豪華な一冊です。

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京都では8月19日より京都シネマにて公開を迎える本作。店頭ではその公開にあわせたミニブックフェアを8月より開催予定です。ケルズの書に関する書籍やケルト文化を紹介した関連本を展開予定ですので、ぜひ映画とともにお楽しみください。

前作『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のアートブックも非常に人気だったというトム・ムーア。今作のアートブックの取り扱いは期間限定となりますのでお求めの方はぜひお早めに。

 

その他、特集としては初めて京都のビルを取り上げたBMCの『月刊ビル 7号』「京都祇園 阪下ビル特集」、ビッグバンから掌におさまるスマートフォンまで人類の壮大な歴史をめぐるポケットサイズの詩絵本『自分におどろく』、 東京都写真美術館で開催中の展覧会カタログでもある荒木経惟のシリーズ決定版となる写真集『センチメンタルな旅 1971-2017-』、エル・リシツキーにアレクサンドル・ロトチェンコ、ヤン・ヒチョルト、ポール・ランドら伝説的デザイナーの論考を収めこれからのデザインへのヒントを探る『GRAPHIC DESIGN THEORY グラフィックデザイナーたちの理論』なども入荷しています。

 

それでは、また次回をお楽しみに。

 

 

■『ATLANTIS zine 01』『ATLANTIS zine 02』SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS


■『販路の教科書①』EXS Inc.

■『DESIGNING THE SECRET OF KELLS』Tomm Moore & Ross Stewart/Cartoon Saloon

 

(涌上)

沖縄のうつわ ふくら舎・京都出張

お待ちかね!沖縄のふくら舎さんより、今年も沖縄クラフトのあれこれがたくさん到着しました。

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三年前から毎年夏にご紹介しているふくら舎さんの沖縄クラフト展。那覇のミニシアター桜坂劇場の中にある沖縄セレクトショップ「ふくら舎」さん。いつも沖縄各所の逸品を届けてくださいます。毎年好評の沖縄の器「やちむん」を中心に、ガラス器や食品、可愛らしい張り子人形などずらりと並ぶ南の島からのおくり物にわくわくします。

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「やちむん」とは沖縄の陶器のこと。ぽってり厚くてずっしりと手に収まります。飯椀や丼の形をしたマカイ、泡盛を入れる急須のような形のカラカラ。南の海や青空、植物を思わせる大胆な絵柄。

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沖縄料理はもちろん、どんなお料理も美味しそうに受け止めてくれる懐の深い優しさを感じずにいられない器たちです。今年はちょうど窯出しのタイミングと重なって発色もよくいい品をたくさん揃えることができたとのこと!ぜひ手にとってご覧ください。

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去年からお目見えした張り子人形は今年もやってきました。つい笑顔がこぼれるようなころころとした可愛らしさ。

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沖縄と言えば、美味しい食べ物も魅力!おやつにおつまみにパリパリ気軽につまめるケックンチップスや、ミネラルたっぷり優しい甘さのいろんな島の黒糖など、沖縄の味もぜひお楽しみください。

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今年はオリジナルグッズもご用意いただきました。沖縄の若竹福祉会とのコラボレーションで作られたポストカード。作業所の膨大なアートの山のほんの一角を「つれて帰れるアート」として商品化されたというもの。はるばる沖縄からやってきた小さなアート作品です。同じく若竹福祉会で作られた「平輪ちんすこう」も販売。黒糖アイシングの輪がのっていて、今まで見たことのないちんすこうです。

そして切り絵作家のYUYAさんによって、ガジュマルやヤンバルクイナ、海、ゆしびんなど、沖縄ならではのモチーフがデザインされたオリジナル手ぬぐいも。注染で染められたかまわぬ製の丈夫で色のきれいな手ぬぐいです。

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器もどれも、どこか大らかで心地よくて、強い日差しに青い空、青い海、鮮やかな植物、美味しいにおい、心地よい音楽、楽しい笑顔を感じずにいられません。いつかそのうち行きたいなあと思いつつ、今年も沖縄のクラフトを慈しむ二週間です。ぜひお立ち寄りください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

沖縄のうつわ ふくら舎・京都出張

開催期間:2017年7月22日(土)-8月4日(金)

開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)

開催場所:生活館 ミニギャラリー

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(上田)

iroiro at KEIBUNSHA 2017

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毎年、この時期を楽しみにされている方は多いのではないでしょうか。iroiroの展示会が、25日より始まりました。タイの生産者と関わりながら制作されているオリジナルの衣類や、海外で買い付けた雑貨が並んでいます。なかでも履き心地のよいパンツは人気のアイテム。素材やシルエットもそれぞれですので、お気軽にご試着してみてください。

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こちらは当展示のためにご用意頂いたもの。ウエストには2本のリボンが通してあります。写真のように二重に結んだり、サロンのように布を折りこんだ上からリボンを巻いたりと、自由にアレンジ頂けます。刺し子刺繍を施したベストは白、黒、紺の3種。
#SASHIKO vest ¥15000
#P-237KD Khadi cotton pants ¥16800


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驚くほど軽く、シャリ感のある肌触りが涼しいタイシルクのパンツ。股上はゆったり、膝下を絞ったデザインは足元をすっきり見せてくれます。
#P-229TS Thai silk newYAOpants ¥18000


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#B-225/R JC-STP TSUBAME KAREN Shirt ¥8200
#P-237CT cotton Thai gather pants ¥16800

 

その他にも国内で藍染めしたカシュクールワンピースや、DMにも掲載している刺し子ポンチョ、ラオスの古布、昨年からご好評いただいているカジューバスケットなど。整然と並んだ中に、様々な文化が溶け込んだ会場となっています。

 

iroiro at KEIBUNSHA 2017
7月25日‐8月7日
恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール

 

(田川)

今週の新入荷、7月第3週

今週の新入荷、7月第3週をお届けします。

 

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マガジンハウス「ku:nel」創刊時の編集長・岡戸絹枝さん、新潮社「考える人」創刊時の編集長・松家仁之さん、アートディレクターの有山達也さん。雑誌制作のオールスターともいえる3人が、「人生の先輩の話を聞くあらたな場所」としてスタートした『つるとはな』。毎号、パワフルなシニアが登場する『つるとはな』を読むと、毎日疲れただのなんだのと喚いている自分が情けなくなって、ピンと背筋が伸びるような、清々しい心持ちに。

5号目を迎えた今号は、90歳をこえる人びとが多数登場。最高齢はなんと104歳!表紙を飾った97歳のバイオリニスト、小島亮一さん。自らもデイケアサービスを利用する身でありながら、高齢者施設、教会、地域イベントなどでバイオリンを披露します。慰問の予定は二年先まで埋まっているそうで(そのとき小島さんは数えで100歳)、本当に頭が下がる思いです。松家さんのインタビュー記事にありましたが『つるとはな』は、若者の読者が多いのと同時に、高齢の方の読者も多いそうです。松家さんは作家としても活動されていて、処女作『火山のふもとで』(新潮社)はとくに夏に読んでいただきたい長篇です。当店の棚には常時一冊差さっておりますので、気になる方は一度手に取ってみてはいかがでしょう。

 

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続いては、有山達也さんも参加しているTDC(東京タイプディレクターズクラブ)が制作する、紙とインキの同人誌『CDT』第2号。浅葉克己、有山達也、伊勢克也、井上嗣也、井上庸子、葛西薫、菊地敦己、祖父江慎、仲條正義、中村至男、服部一成…、こちらもまたオールスター級のデザイナー陣が集った一冊です。毎日のように彼らが手掛けた書籍やデザインを目にしていても、彼ら自身の文章を目にする機会は多くありません。ここでは、専門とするデザインではない、自由な文章を楽しむことができます。今回のテーマは「鳥獣虫魚/LIVING THINGS」。全号が刊行された2013年から数年、今号に掲載された文章のほとんどは2014年には集められていたものだそうです。ゲストとして、ジョン・ワーウィッカー、先日亜紀書房から単著『森の探偵』が出版された写真家・宮崎学も寄稿。

 

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『CDT』を発行しているBOOK PEAKが手掛けた、ヴェネツィア生まれの画家・三島安住による初の作品集『青い水晶』も入荷。横浜トリエンナーレ2014にあわせ刊行された本書。数年の時を経て、あらためて書店への流通が再スタートしました。こちらもおすすめです。

 

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安く、広く、自由な平家暮らし。リノベーション、実際の住み方の事例を紹介した、当店でもお馴染みの「FLAT HOUSE」シリーズから、最新の『FLAT HOUSE LIFE in KYUSYU』も入荷しています。出版社の企画をきっかけに、東京と福岡での二拠点平家生活をはじめた著者のアラタ・クールハンドさん。アラタさんがこれまで未開拓だったという、九州のひとびとの平家暮らしを、図面やかかった費用など、実践的な情報とともに紹介します。ひと際目を引く、庭にプールがある佐賀のフラットハウス。この、女性家主が建てたシリーズ初のセルフビルド平家はじめ、読むと平家暮らしに憧れること間違いなしです。

 

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"生きる"を探るトラベルマガジン『WYP』=「THE WORLD YOUTH PRODUCTS」も新たに入荷。世界幸福度ランキング一位の常連国であるデンマークを特集テーマに据え、彼の地に暮らす8人へのインタビューからこれからの生き方のヒントを探ります。バイリンガル仕様。

 

〈今週紹介した本〉

『つるとはな 5号』(株式会社つるとはな)

www.keibunsha-books.com

『CDT 02 鳥獣虫魚』TDC(BOOK PEAK)

www.keibunsha-books.com

『青い水晶』三島安住(BOOK PEAK)

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『FLAT HOUSE LIFE in KYUSYU』アラタ・クールハンド(辰巳出版)

www.keibunsha-books.com

『WYP Vol.1 DENMARK 僕らは生きる場所を選べる。』(THE WORLD YOUTH PRODUCTS)

www.keibunsha-books.com

SA-RAH SPRING & SUMMER COLLECTION 2017 EXHIBITION

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ここ数年、毎年ギャラリーやコテージで展示会を開催いただいている愛媛のSa-Rahさん。Sa-Rahさんのお洋服は、素材感をたっぷり肌で感じられる着心地のよさが魅力。シンプルですが、ボタンの並び具合、衿や袖の形など細かいところがちょっとかわいくて、年代を問わず長く愛用できるアイテムが揃います。

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今回はクロアチアの町をイメージした優しい色合いのお洋服が揃いました。さらりと涼しい着心地のリネン、柔らかいコットン。日差しに映えて、暑い気分を和らげてくれるような優しいナチュラルカラー。

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Sa-Rahさんのお洋服はどことなく仕事着というイメージも。丈夫で、たっぷり汗をかいたら、お家でザブザブ洗濯して。日常に寄り添ってくれるようで頼もしい相棒になるかも?

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小物も人気です。薄手の大きなストールは冷房対策や日差しを避けるのにぴったり。そして今回の人気はこちらのヘアバンド。

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このヘアバンドは、愛媛のつくり手さんたちが腕を組んで既にあるものの中から新たな価値を生み出していくというプロジェクト「えひめのあるうれしい日」から生まれたそうです。誰にでも似合うヘアバンド。大人になってヘアバンドはあまり似合わないかも・・という方にも、気軽にコーディネイトに取り入れられるようなシンプルなデザイン。伸ばしかけの髪もヘアバンドがあればとても楽なんです。ぜひお試しあれ。

 

気負わず、気を使わず、気楽に毎日着たくなるお洋服たち。ご試着も可能なので、ぜひじっくりお気に入りを見つけてください。ご来場をこころよりお待ちしております。


SA-RAH SPRING & SUMMER COLLECTION 2017 EXHIBITION
開催期間:2017年7月11日(火)-24日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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愛媛県大洲市の大きな川のほとりで、
コットンやリネンなど、天然素材をつかって
オリジナルのお洋服づくりをしています。

自分が着たい服。
着心地のいい服。
ザブザブとお洗濯ができる服。

少しでも、日常に出番のある服になることを願って。。。

今回の展示では、クロアチアの町をイメージした
優しい色合いのワンピースやスカートを中心に展示販売いたします。
こちらのmovieでSa-Rahの世界観を感じていただけるとうれしいです。
https://youtu.be/f5uPUp6iAdw

作りたて洗いたてのリネンの質感をお楽しみくださいませ。

Sa-Rah

 

(上田)

今週の新入荷、7月第2週

今週の新入荷、7月第2週をお届けします。

 

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鳥取を拠点に、厳選した自然の素材を用いた有機的なファッションプロダクトと表現を行うアパレルブランド、「THE HINOKI」。今週まずご紹介するのは、本ブランド初のコレクションブック『THE HINOKI Yuhki Touyama 2016-2017』です。

街や自然の中でも馴染み機能すること、時間をかけて着られること、地域の職人たちと共同しながら物づくりの循環を生み出すことなどを心掛けながら制作される、THE HINOKIの中性的で美しい衣服。それらに袖を通したモデルたちを撮り下ろしたのは写真家の頭山ゆう紀さん。本書が何よりユニークなのは、その性質や造形、あるいはブランドイメージを分かりやすく伝えることを主眼とせず、衣服をあくまで写真家の世界観を伝えるひとつの要素として提出していること。

鬱蒼とした森や廃墟化した人工物、時には墓地を背景に、時には摺りガラス越しに、光だけを当てるのではなくむしろ影を多く取り込みながら、日常の延長にドラマティックなイメージを展開する。煌びやかなファッションフォトの世界を大きく逸れ、広告としてはいくぶん迂遠な道を歩む選択そのものに、ブランドの美意識と思想が表現されています。

これまでにも作家性の強い様々な写真家とコラボレーションしてきたTHE HINOKI。これからどういった写真家とのコラボレーションが見られるのか、プロダクトはもちろん表現の場としての展開も非常に楽しみなブランドです。

 

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東京・湯島の輸入雑貨店nico店主による『ロシア冊子』。10年以上、買付旅行に訪れ続けているロシア・ハバロフスクで出会った光景をまとめた小さくてかわいらしい一冊です。街中を走るクラシックカー、集合住宅の窓枠やガードレールのさりげない意匠、色彩豊かに賑わう市場、花柄のワンピースにスカーフを頭に巻いたたくさんのおばあさんたち。その場所だからこそ楽しむことのできる風景をそっと教えてくれます。目印となる表紙や本文イラストは、当店でもおなじみのイラストレーター、ひろせべにさん。

10年のあいだにロシアの街で出会ったスカーフを巻いたおばあさんの写真だけで編まれた同じ著者による『スカーフ冊子』も同時入荷しています。こちらもあわせてぜひ。

 

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ドーナツの穴には何があるのか。そもそも穴は「ある」と言えるのだろうか。考えたとて実生活においては即時的には何の足しにもならないであろうそんな疑問を発端に、ドーナツとドーナツの穴について楽しく大真面目に考える異色の論考集『失われたドーナツの穴を求めて』。

執筆に集ったのは、歴史学、経済学、コミュニケーション学、数学、言語学、哲学、工学などを専門とするリサーチフェロー(研究者)たち。穴がいつから空いているのかを巡り1800年代のレシピを解読しながら再現してみたり、ドーナツの穴の経済的価値を論じてみたり、競馬や宇宙空間、はたまた会話時の座り位置における「穴」の考察までを展開し、「学問する」ということの本来的な楽しさや、同じテーマに全く異なるアプローチで挑むそれぞれの専門分野の差異そのものの興味深さを伝える一冊です。知りたい、という純粋な気持ちを梃子にして過去の時間に出会い、繋がれてきた思考のバトンに触れ、思いもよらなかった遠い場所にまで辿り着く。読みながらそんな追体験がしばしば起こるのも地道な学問の世界のプロフェッショナルたちのテキストによればこそ。

ドーナツにちなみ、書籍の全ページを貫く穴が穿たれたブックデザインも秀逸です。ぜひ手にとってご覧ください。

 

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60年代末、伝説的写真同人誌『プロヴォーク』の刊行に関わり、73年にはそれまでの自作への批判を展開した『なぜ、植物図鑑か』を上梓、病に倒れ記憶の大半を失ったのちもカメラを通じて自らと世界を繋ぎとめながら精力的に活動を続けた写真家、中平卓馬。

森山大道、荒木経惟、東松照明ら戦後日本の代表的な写真家たちのなかでも理論家としてひときわ異彩を放ち、ホンマタカシら次の世代の写真家たちにも多大な影響を及ぼす存在です。2015年に没した中平が、最晩年の2009年より2011年の間に旅した四度の沖縄旅行の中で撮影した写真群を収めた作品集『沖縄』が入荷しています。

彫像、木々、鳥、看板、猫、岩礁、屋根・・・。風景から選ばれた対象を断片化し、事物そのものに肉薄するような縦の構図で撮られた写真の一葉一葉からは、偶然の産物のような世界の鮮やかさと、フレーミングが世界を規定する写真芸術の本質が浮かび上がってきます。ハードカバーの造本、倉石信乃氏による精緻な中平卓馬論も収めた本書。600部限定の非常に貴重な作品集です。お求めの方はぜひお早めに。

 

その他、「アンドレ・ブルトン没後50年記念展」に来日したアニー・ル・ブランの講演記録『シュルレアリスムと抒情による蜂起』、雑誌「GINZA」や印象深い書籍装丁の仕事などを多く手掛けるデザイナー田部井美奈さんのZINE『TOFU』、京都人とともに京都をめぐったグレゴリ青山さんのコミックエッセイ『深ぼり京都さんぽ』、ライター佐久間裕美子さんのペンによるNYのシングルウーマンたちにまつわるエッセイ『ピンヒールははかない』なども入荷しています。ご来店の際はぜひそれぞれをチェックしてみてください。

 

それでは、また来週をお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

■『THE HINOKI Yuhki Touyama 2016-2017』

■『ロシア冊子』ニコニコ出版局

■『失われたドーナツの穴を求めて』芝垣亮介・奥田太郎 編/さいはて社

■『沖縄』中平卓馬/Rat Hole Gallery


(涌上)

『Dear, THUMB BOOK PRESS』小さな原画展

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国語教師がくれた猫の表紙の『ロリータ』。
旅先で出会った老婆から購入したペーパーバックの『老人と海』。
古書店で、留学先で、祖父の書斎で、時や場所を越えて人々が出会った本。それらに共通するのは、THUMB(サム)という人物が主宰するプライヴェートプレスから出版されていること。「THUMB BOOK PRESS」の名が刻まれた本にまつわるエピソードと、その表画が収録された書籍『Dear, THUMB BOOK PRESS』。サムとは一体何者なのか、彼が残した仕事とは…

 

と気になるところですが、
実はTHUMB BOOK PRESSというのは架空の出版社。この人物が現実に存在したかのように、タダジュンさんがサムになり変わって装丁した書籍の作品集が『Dear, THUMB BOOK PRESS』なのです。現在、当店書籍フロアでは本書の出版を記念した小さな原画展を開催しています。

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『変身』『細雪』『ダブリン市民』など、実際にこんな装丁の書籍があればと思わずにはいられない、手元に欲しい、書棚にあって欲しい、本の原画や立体作品を間近にご覧いただけます。

会期2日目の本日は、タダさんご本人にご来店いただき、サイン会も開催。こちらも作品と呼んでも良いような、絵入りのサインを参加者の方へ書いていただきました。

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原画展は今月末まで。たくさんの方のご来場をお待ちしています。

 

『Dear, THUMB BOOK PRESS』原画展

日時:2017年7月14(金)- 31日(月)
会場:恵文社一乗寺店 書籍フロア内


○タダジュン
イラストレーター・銅版画家。東京在住。
版画の技法を使い、書籍や雑誌のイラストレーションを中心に活動中。
主な仕事に『犯罪』『罪悪』『カールの降誕祭』フェルディナント・フォン・シ-ラッハ / 酒寄進一訳(東京創元社)『こころ朗らなれ、誰もみな』柴田元幸翻訳叢書書 / アーネスト・ヘミングウェイ(スイッチ・パブリッシング)など。
https://juntada.tumblr.com/

 

(田川)