恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

倉敷意匠分室カタログ『猫の肖像』発売記念展のおしらせ2

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昨日より始まりました、倉敷意匠分室カタログ『猫の肖像』刊行記念フェア。「トラネコボンボン 琺瑯のマグカップ」「升たか 大判ガーゼストール」を中心に、さっそくご好評頂いています。

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中でも、父の日を前にご紹介したいのは、型染作家の関美穂子さんが図案を手掛けた、男性用ボクサーパンツ。京都で60年続く、京都縮織 山城さんが製造を手掛けています。繊維用語でクレープ生地とも呼ばれる「ちぢみ」は、男性肌着、ステテコの生地としてご存知の方も多いはず。ちぢみ生地の特徴である表面の凹凸は、体へ触れる接地面積を少なくするだけでなく、毛細管現象で水分や老廃物まで吸収する力を持つので、 吸汗性・速乾性・涼感性にたいへん優れた生地です。肌にもやさしく、いつでも清潔でさわやかな清涼感が得られるこちらは、贈り物にもおすすめです。
M:ウエスト/88~100cm ヒップ/90cm
L:ウエスト/95~110cm ヒップ/92cm

 

倉敷意匠分室カタログ『猫の肖像』発売記念展
6月10日〜6月23日
恵文社一乗寺店生活館ミニギャラリー

 

(田川)

今週の新入荷、6月第2週

その週に入荷した活きの良い本をご紹介する「今週の新入荷」。

6月第2週をお届けします。

 

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今回の一冊目は『本の未来を探す旅 ソウル』。numabooks代表、内沼晋太郎さん、編集者の綾女欣伸さんが行く、空前の本屋ブームが巻き起こる街・ソウル。本屋ブームと言っても本屋全般というわけではなく、店主がコンセプトを持って並べる本を選ぶ独立系書店がその中心にあって、データでみると週に1軒新しい本屋が誕生し、独立出版物、ようはリトルプレスが毎日一冊は刊行されているそうです。そんな韓国本屋事情を、店主へのインタビューを通じて紹介するこちらの一冊。マップも収録されており、一味違った韓国のガイドブックとしてもお楽しみいただけます。

内沼さんがあとがきで書いているように、韓国で本屋がブームという現実を知る日本人は少なく、一方で彼らは私たちが想像する以上に日本の本屋事情に詳しい。当店にも本書に登場する何人かが訪れてくれていて、その度熱心に仕入れについて聞かれました。店に立っている実感としては、韓国だけでなく、中国、台湾の人も日本の出版業に関心があるようです。ここまでの加熱ぶりは認められないものの、日本でも同じような状況があって、読書離れが叫ばれるなか、本屋を開業するという敷居はかつてないほど低くなっています。喜ぶべきことであると同時に、10年後を考えると、冷静に見つめるべき部分もあるように思えてならないのです。水を差すようなことを言いましたが、本を媒介にしたサービスの形として、定型に捉われない隣国の書店の姿勢から学ぶべき点は多い。おすすめの一冊です。

 

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大阪発のローカルマガジン『IN/SECTS』最新号も届いています。vol.8の特集は「私たちが気になる新しいもの、未知なるもの」。当然のことながら、自分が知らないことは検索できない。編集部が掲げる「ローカルカルチャー」というテーマを、単なる内向的なものに留まらせぬよう、今回の特集が組まれたそうです。特に興味深かったのは、自社による仮想通貨取引所“FIREEX”の設立を発表した家入一真さんへのインタビューです。国や組織を前提にしない、自立分散型の新しい通貨のあり方を、家入さんはヒッピーカルチャーのようだと評します。最新の技術を評価しながら、それに傾倒するわけではなく、選択肢の一つとして受け入れる。「アップデート」「新しさ」、その本来の姿勢を感じる内容でした。

 

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マンションのイラストをあしらったブックカバーと、その一室を舞台にした短編小説を収録した小さな冊子をセットにしたユニークな試み『ブックカバーマンション』。夜空を思わせるような深い紺色と、朝の澄んだ空気を漂わせるクリーム色の二種類。それぞれ「208号室」「612号室」と名付けられ、それにちなんで各部屋の住人をイメージした物語が書かれています。イラスト/ITSUMO、短編/仲西森奈

こちらを企画した若い二人組のユニット、その名も「ふたり」。個人的に友人でもある彼女らは、学生時から自ら商品やブランドを手がけたり、クライアントのプロモーションを手伝ったり、フリーペーパーを制作したりと、その行動力と企画力には驚かされてきました。ちょうどJ・G・バラードの「ハイライズ」を映画化した作品を見たばかりで、たくさんの人が住んでいるにもかかわらず、マンションというものが醸し出す無機質な雰囲気というものが如何に創作の舞台として、望ましいものかを考えさせられていたところです。今後「ブックカバーマンション」の住人は増えていくのか、注目していきたいと思います。

 

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当店でも毎号熱烈な支持を得ている「こけし時代」から、アーティスト鈴木いづみさんによる布のこけし「布形子(ぬけし)」ボックスセットが発売。セット内容は、布形子人形、沼田元氣布形子人形写真集、缶バッジ3点、台湾のミュージシャン盧葦(LU WEI)による布形子音楽のカセットテープ…、100個限定で制作されたスペシャルな内容に。「かつて下着アーティスト鴨居羊子が作成した布人形を、写真家細江英公がミスペテンとして切り撮った如く」(案内文まま)、写真家沼田元氣が愛情たっぷりにアラスカロケにて撮影した写真集は必見です。

 

それでは今週はこのあたりで。

来週もお楽しみに。

 

〈今回紹介した本〉

『本の未来を探す旅 ソウル』編著 内沼晋太郎 綾女欣伸(朝日出版社)

www.keibunsha-books.com

『IN/SECTS vol.8』(LLCインセクツ)

www.keibunsha-books.com

『ブックカバーマンション 208号室/612号室』(ふたり)

www.keibunsha-books.com

『布形子BOX SET』(コケーシカ鎌倉)

www.keibunsha-books.com

 

(鎌田)

「長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語」写真展 スタートしました。

【「長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語」写真展】がいよいよスタートしました。

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昨年出版された「長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語」は、著者・根本千絵さんの祖父・井手傳次郎が昭和初期に長崎で営んだ「響写真館」とその家族の物語。親戚、家族から見聞きしたという話が、すばらしい本になりました。

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ここに綴られているのは、おもしろくてたのしくて、きっとどこの家族にもあるような小さな出来事から、家族にとっての大事件、いろんな出来事。家族たちの結晶、大事な宝物のような一冊です。

今回は、この本に掲載された写真などを展示しています。

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皇室関係者が長崎を訪れた際に撮影を担当するほどの腕前だったという井手傳次郎さんの写真は、あたたかくて、詩的で、カメラをのぞくその眼はとてもきれいでやさしかったんだろうなと思わせます。

 

こちらは貴重なガラス乾板。当時のネガはフィルムではなくガラスだったんですね。

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手の平に乗るほどの小さなガラス板に焼き付けられた瞬間、遠い昔にあった時間。とてもとても美しくて、思わず言葉を失うほど。

 

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展示の搬入が終わった後、根本千絵さんとご家族と夕食をご一緒しました。とても仲が良くて、話が尽きない本当に楽しいひとときでした。根本さんご家族の家族写真も見せてもらったり、なんだかほほえましくて、井手傳次郎さんもきっと喜んでいるんじゃないかなと思ったり。ずっとずっと続いている家族のつながりを感じて、ほっとあたたかくなるひとときでした。

 

会期中の11日(日)には、著者・根本千絵さんと、造形作家・岡﨑乾二郎さんによるトークイベントも開催します。ぜひ展示と合わせてご参加ください。ご来場をこころよりお待ちしております。

 

「長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語」写真展
開催期間:2017年6月6日(火)-19日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18時まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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書籍はオンラインショップでもお取扱中です。
『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』

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≪関連企画:トークイベント開催決定!≫
造形作家・岡﨑乾二郎さんと、「幻の響写真館」筆者の根本千絵さんによるトークイベントを開催します。展示とあわせてぜひご参加ください。

[日時] 2017/6/11(日) 14:00-16:00(開場 13:30)
[出演] 岡﨑乾二郎(造形作家)×根本千絵(「幻の響写真館」筆者)

[参加費] 1,000円+1ドリンク
[お問合せ・ご予約]
恵文社一乗寺店
TEL 075-711-5919
E-mail cottage@keibunsha-books.com
ご予約は店頭でも承ります。


(上田)

倉敷意匠分室カタログ『猫の肖像』発売記念展のおしらせ1

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美しい町並みと、手仕事の伝統が残る岡山県倉敷市。その地を拠点とする雑貨メーカー、倉敷意匠計画室では、一人の作り手さんから工場に至るまで、規模やジャンルに拘らず、物づくりに携わる人々と新たな日用品を生み出しています。今年に入って3冊の新作カタログが刊行されていますが、その中より『猫の肖像』の発売を記念したフェアを今週末より開催いたします。食器や布小物に、お部屋を彩る品々、猫をテーマにした各作家の異なるアプローチをご覧頂けます。

 

販売ラインナップ:
升たか(ガーゼハンカチ)、sennokoto(刺繍布小物)、盛國泉(ガラス花器)、トモタケ(紙製品)、しゅんしゅん(マスキングテープ)、イイダ傘店(傘、バッグ)、関美穂子(肌着)、萩原朋子(花器)、福田十糸子(張り子)、点と線模様製作所(ハンカチ、バッグ)、にしおゆき(陶製人形)、山口和宏(木皿)、kata kata(印判手豆皿)、ユカワアツコ(銅版絵付皿)、yacmii(刺繍ブローチ)、矢島操(マグカップ)、初雪・ポッケ(ブローチ)、トラネコボンボン(琺瑯製品)等

 

商品は全て即日ご購入頂けますが、お電話・メールでのご注文、お取り置きはご遠慮頂いております。ご了承のほどお願いいたします。

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皆さまのご来場をお待ちしております。

 

倉敷意匠分室カタログ『猫の肖像』発売記念展
6月10日〜6月23日
恵文社一乗寺店生活館ミニギャラリー

 

(田川)

今週の新入荷、6月第1週

 今週の新入荷、6月第1週をお届けします。

 

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今週まずご紹介するのは、インディペンデントマガジン『Spectator』の39号、特集「パンクマガジン『Jam』の神話」。70年代半ばより全国各地に爆発的に普及し、街の風景の一部と化した自販機本(成人向けの娯楽読み物、いわゆるエロ本)ブームのなか、79年に創刊され、そのアヴァンギャルドな編集内容、一貫したパンクな姿勢から「伝説の自販機本」とも評される『Jam』を大特集。

プロレスや神秘主義、フリーミュージックなど活字メインの記事を連発する異色の編集を展開し、徹底的に当時のアンダーグラウンドカルチャーを自分たちのやり方で"遊び続けた"『Jam』。その過激な内容から大きな批判を浴びた創刊号をあらためて読み込むページや、60ページにもおよぶ『Jam』再録ページ、編集長であり『Jam』を体現する存在だった高杉弾へのインタビュー、出版業界人たちが出版史から語る自販機本に関するコラムなども掲載。また、ポルノ要素を無視するかの如く、禅やビートニク、ドラッグやサイケデリックカルチャーなどヒッピームーブメントの影響を存分に吸収しながら独自の編集方針を展開した前身の『X-Magazine』、リニューアル後、ダダやシュルレアリスム、稲垣足穂や工作舎などの影響を色濃く受けたヴィジュアルマガジンとなった『HEAVEN』に関する言及なども含み、1980年前後のアングラカルチャーの濃厚な空気を存分に伝える貴重な一冊となっています。

現在と照らし合わせて(あるいは、当時であっても)イリーガルな内容を多分に含んだ個別の記事への好悪はともかく、マーケティングやブランディングばかりが先行し宣伝中心主義や成果主義的なムードが優勢な現代に、ムードや時代性を超越するかのごとく個人の思い込みに端を発した熱量と密度を備えたパンキッシュな姿勢を貫いた本誌に学べる点も少なくないはずです。当時を知る方はもちろん、若い方にこそぜひ触れていただきたい『Spectator』らしい意欲的なイシューです。

 

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アルファベット順に並んだ60年代ニューヨークのアーティストやセレブリティのシンプルなモノクロのバスト・ショット。60年代半ば、マンハッタンに構えた自身のスタジオ「ファクトリー」で、昼夜を問わず集った何とも豪華な面々の顔を16ミリのボレックスで撮影したのはアンディ・ウォーホル。アシスタントのジェラード・マランガとともに撮影した映像作品[Screen Tests]のフィルムのプリント写真にマランガの散文詩を添え、67年にウォーホルが刊行した『Screen Tests / A Diary』が、50年の時を経てこのたび日本で復刻されました。

"早逝のミューズ"イーディ・セジウィック、ヴェルヴェッツのニコやルー・リード、画家のダリ、詩人のアレン・ギンズバーグ、映像作家のジョナス・メカスなど、時代の空気を伝えるポートレイト集は、同時期にウォーホルが制作したヴィジュアルブック『Andy Warhol’s Index(Book)』に比してミニマルな構成と実験的な作風が目立ったためか刊行当時の売り上げが芳しくなく、ほとんどが断裁処分され、手に入る機会の極めて稀なレアブックと化していました。日常的に記録映画を撮影し、友人たちとの会話を録音までしていたというウォーホルが残した実験的な試みは、50年の時を経て、再び一つの時代の貴重な記録として現代に浮かび上がってきます。復刊に際し、挟み込み冊子にて解説を展開した河添剛氏の読み応えあるテキストも必読です。ぜひ、この機会に手に取ってみてください。

 

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山口県の地方出版社、創林舎が発行するイタリア文藝叢書シリーズより、寓意と幻想に満ちた作風で知られる現代イタリア文学の鬼才、ディーノ・ブッツァーティの作品集『夜の挿話(エピソード)』が届きました。長編『タタール人の砂漠』や短編集『七人の使者たち』など、日本ではその小説にスポットが当てられることの多かったブッツァーティですが、イタリアで最も有名な新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」紙のジャーナリストでもあった彼はルポルタージュも残しており、本国では没後それらの著作も出版されていました。ショートショートよりもさらに短い「超掌編」とも呼ぶべき6作を収めた表題作や、ジャーナリストとして取材したフェリーニの神秘体験やイタリアのUFO騒動の考察など超常現象のルポルタージュ、一幕劇のために書かれた戯曲集など、作家の幅広い文業から短編、戯曲、ルポルタージュなど全12編を訳出し、独自に編集した本作品集。小説外の作品も収めることで、これまでに見出されてこなかった作家の多面性を紹介した意義ある出版です。ファンはもちろん、ブッツァーティ初心者も、この一冊からさまざまな名作や絵画など彼の多才な創作の数々に触れられてみてはいかがでしょうか。

 

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先日、当店コテージにて上映会を開催したロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテイン。会場にて販売した『ユーリー・ノルシュテイン作品集 2K修復版』のBlu-ray/DVDのスチールブックも店頭・ウェブにて販売を開始しています。

代表作「霧の中のハリネズミ」や「話の話」などが収められているのはもちろんのこと、2016年来日時のインタビューや講演の模様を収録した特典映像、32ページに及ぶブックレット、初回限定の描きおろしアートカード全3枚なども封入されたスペシャルな内容です。

上映会終了後、ノルシュテインをはじめとするインディペンデント作家たちが、大規模スタジオで分業制作されるアニメーションとは異なり”個人的な”作品で描くもの、アニメーションのもう一つの可能性について話してくださった土居伸彰さんの論考『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論』や、今回の作品集に収められた作品群への解説ともなるポストカードブック『「アニメーションの神様、その美しき世界」パンフレット』など関連書籍も引き続き店頭でフェア継続中、またウェブにて取り扱っています。愛蔵版となるソフトとともに、ぜひ世界中の作家から尊敬を集める映像詩人の世界をいろいろな角度から楽しんでいただければ幸いです。

 

 その他、IZU PHOTO MUSEUMで開催中のニューヨーク生まれの写真家、Terri Weifenbachの同名展覧会図録でもある美しい写真集『テリ・ワイフェンバック The May Sun』、物語の舞台となる部屋の間取りを決めてから書かれた大竹昭子さんの小説集『間取りと妄想』、「THE NEW YORKER」や「インザシティ」などのカバーアートでもおなじみのエイドリアン・トミネの『Killing and Dying』邦訳版、アメリカ発のティーン向けウェブマガジンのヴィジュアルブック第2弾『ROOKIE YEARBOOK TWO』、深瀬昌久の飼い猫を被写体にした写真集『Afterword』の2nd editionなども入荷しています。

 

それでは、また次回をお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

www.keibunsha-books.com

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(涌上)

―思うことを― 梶原菜穂 油絵個展

天気予報にも傘マークが増えてきて、そろそろ梅雨入り。じめじめ嫌われものの季節。でも、雨粒をたっぷり浴びた緑や、わっと咲き始める紫陽花、疎水の蛍、夜中に響く雨音に雨の匂い。雨の日はちょっと特別な、穏やかな時間が流れるようで、最近は梅雨も好きになってきました。

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梶原さんからここのギャラリーで展示したいとお預かりした作品資料を見て、真っ先に思い出したのがそんな穏やかな雨の日。ちょうど入梅の時期をご希望で、梅雨を待つのと同じように待ちわびた展示です。

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両手でやっと抱えられるほどの大きな大きなキャンバス。向こうが見えないほど大きなキャンバスを前に、思うままに描かれた絵は、先が見えない霧のような、木々が重なる深い森のような、吸い込まれそうな奥行きを感じます。静けさの中でかすかに感じる匂いや音が伝わってくるような心地よさ。

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どれもすてきですが、中でも無性に心惹かれたのがこの『冬の空気』。

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ずっと遠くの音までも聴こえてきそうな静かで微かに明るい雪の夜。澄んだ空気と心地よい緊張感。そうそう冬の空気ってこんな感じ、とうれしくて、店に立つ間もついついしばし眺めています。

梶原さんは愛媛の山の中に住んで、絵を描かれているそうです。(梶原さんブログより拝借。蜜柑の花だそうです。)

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風景画というわけではないそうですが、きっと山で見る景色がインスピレーションになっているんだろうな、と感じさせます。

いつもいろんな作品にふれた時、この作家さんの目は心はなんて素敵なんだろう、面白いんだろうと思わずにいられません。もちろん今回も。

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大きなキャンバスが並ぶ展示は久しぶりなので、向かいのベンチに座ってぜひじっくり眺めていただけたらと思います。ご来店こころよりお待ちしております。

―思うことを― 梶原菜穂 油絵個展
開催期間:2017年5月30日(火)-6月5日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

毎日が繰り返されることがすごいな、と思っています。
風が吹いたり、雨が降ったり、水や海があったり、
花が咲いたり、朝が来たり、夜が来たり。
いつもある毎日がただ、すごいです。
「なにがいらなくて、なにが欲しいか」
「良し悪しとかもうわからないな」
「もう少しいい自分になりたいな」
「季節が変わり始めているな」
毎日の中で思うことがたくさんあります。
絵の中だけでは、
こう描きたい、こう描こう、
とは思わずに、絵を描いています。

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梶原菜穂/naho kajiwara
1981年愛媛県八幡浜市生まれ 在住
[個展歴]
2011年・2014年 愛媛県伊予郡砥部町「里山房」
2014年 東京都中央区銀座「月光荘画材店」
2016年 愛媛県伊予郡砥部町「里山房」、
    東京都中央区銀座「月光荘画材店」(月光荘賞受賞記念展)
[受賞歴]
2015年 「月光荘画材店」ムーンライト展 月光荘賞受賞


(上田)

2017年5月書店売上ランキング

書店入り口の外壁に、2年ほどまえから小さなトカゲが住み着いています。トカゲの寿命がそんなに長いとは知りませんでしたし、何を食べて生きているのか見当がつきません。半年間見かけなかったのですが、先日久しぶりに顔を合わせました。よっぽど居心地が良いようなので、もし、見かけることがあればそっとしておいてあげてください。

 

それでは、2017年5月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『おさまる家』井田千秋

家の中のお気に入りの場所を描いたイラスト集

 

2位『手繪京都日和』Fanyu(林凡瑜)

台湾のイラストレーターが見つめる京都の街

 

3位『君の住む街』奥山由之 スペース・シャワー・ネットワーク

若き人気写真家が撮る35人の女優と東京の街

 

4位『ソール・ライターのすべて』青幻舎

初の国内版作品集。現在完売中。重版待ち(既に4刷だそうです!)

 

5位『わざわざの働き方』パンと日用品の店 わざわざ

長野の山の上に店を構える、小さなパン屋の経営と考え方

 

6位『愛の台南』川島小鳥 講談社

台湾を愛してやまない写真家による、台南市案内

 

7位『台湾男子がこっそり教える!秘密の京都スポットガイド』男子休日委員会 エクスナレッジ

台湾のアーティストユニットによる『左京区男子休日』の日本語翻訳版

 

8位『すべての雑貨』三品輝起 夏葉社

西荻窪の雑貨店『FALL』店主の単著、独自の雑貨論、消費論

 

9位『京都の中華』姜尚美 幻冬舎

京都の街の底を流れる「京都の中華」という存在、空気、文化を文章で形にした一冊

 

10位『発酵文化人類学』小倉ヒラク 木楽舎

発酵カルチャーの冒険。異色の経歴を持つ著者によるデビュー作

 

 

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1位は、イラストレーター井田千秋さんの『おさまる家』です。二段ベッド、本棚の隙間、家のどこかに誰もがもっている、とっておきの居心地のよい場所。幼い頃に憧れた、屋根裏部屋、秘密基地をそのまま描いたような夢のある15のイラスト。これまでにも女の子と部屋をテーマに作品を制作してきた井田さん初のカラー作品集です。現在一時在庫切れですが、近日再入荷予定です。

 

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2位は、台湾のイラストレーター・Fanyuが2014年に京都を訪れ、数週間の滞在期間中に出会った人や買ったもの、入ったお店や食べたものを描いた京都のガイドブック『手繪京都日和』。香港を訪れた当店のスタッフがこの本をたまたま手に取り、後日直接連絡をしたところ快く日本まで本を送ってくださいました。ゲストハウスに滞在するうちに出会った街、人、店。住人でもなく、観光客でもない視点から描かれた京都は、我々京都に住む者にとっても新鮮な姿として描かれています。当店オリジナルの特典として、テキスト部の一部対訳冊子とポストカードをお付けしています。

『手繪京都日和』、『愛の台南』、『台湾男子がこっそり教える!秘密の京都スポットガイド』…、今回のラインナップをみていただくと、当店でもじわじわと台湾ブームが押し寄せている事がわかります。休みが取れたら、いつか行ってみたいですね。

 

 

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3位は、若き写真家・奥山由之最新作品集『君の住む街』。東京を舞台に、ポラロイドカメラのみで撮影された35人の女優の姿。雑誌「EYESCREAM」の3年に及ぶ連載をまとめた一冊です。誰もが知っている若手の人気女優を撮っているにもかかわらず、まるで彼女たちが目の前にいるように、その瞬間だけは何者でもない素朴な笑顔をみせています。

 

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5月27日には奥山さんのトークイベントも開催しました。今回の写真集に時折差し込まれる街中の多くを語り過ぎない何気無い風景は、被写体である彼女たちの目線を意識して撮られたそうです。もともと奥山さんは映像作品を撮っていたようで、雑誌などでファッションや女性を撮る事が多い奥山さんですが、こういった視線や、街の風景を撮った時にみせる抜群のセンスは映像を撮る中で培われたものなのでしょうか。いつか奥山さんが撮った映画をみてみたいものです。これからの活躍も楽しみです。

 

今月のランキングはいかがでしたか。

来月もお楽しみに。

(鎌田)