恵文社一乗寺店 スタッフブログ

恵文社一乗寺店の入荷商品やイベントスケジュール、その他の情報をスタッフが発信いたします。

今週の新入荷、4月第2週

春眠暁を覚えず。瞼を擦りながら、毎晩遅くまで読まなくてはならない本を少しずつ読み進めています。「積ん読」という言葉は日本独自のものだそうです。買った本、貰った本。放っておいてもいいはずなのに、奇妙な義務感に追われて読みはじめ、気がつけば朝!それでも寝不足とはいえ、気分が良い近頃の陽気です。店頭で欠伸をしているのを見かけたらどうか見逃してください。

 

さて、それでは「今週の新入荷」、4月第2週をお届けします。

 

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「住」の観点からミニマリズムを紹介し、未来の住環境について考察するグループYADOAKRI。そちらから発行されている『月極本』というリトルプレスがあります。80年代に朝日出版社から発行されていた「週刊本」をモチーフにしたと思われる、洋書のペーパーバックのような造本の新書サイズの本。ここ数年、ミニマリズムという言葉を単なる断捨離や節約として解釈されるような紹介をする書籍が増えた中で『月極本』は、世界の小さな住まい方の実践例を多数列挙しつつ、死生観やパーマカルチャーなどのテーマが並んで語られる毎回気持ちの良い一冊です。

先日届いた3号目の主題は「好きなお金、嫌いなお金。」児童文学『モモ』の著者ミヒャエル・エンデが警鐘を鳴らしたように、もちろんお金は大事なものだと前置きをしながら、貨幣経済への疑問を投げかけます。お金の本質を見極めるべく、大手証券会社を辞め、世界46カ国を旅した元証券マン・渡邊賢太郎さん、「murmur magazine」にも登場した、東京アーバンパーマカルチャー創始者・ソーヤー海さんへのインタビュー。「個性派書店が選ぶお金を知るための50冊」のトピックでは、当店も3冊の本を紹介させていただきました。なぜか、毎回他の書店さんと挙げた本が被ります。被った本は、それだけ良いものだということで納得いただければ。

 

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当店でもお馴染みの編集者・早川茉莉さん。早川さんが編んだ森茉莉の単行本未収録作品を多数収めた3冊のアンソロジーブック『紅茶と薔薇の日々』、『贅沢貧乏のお洒落帖』、『幸福はただ私の部屋の中だけに』。自分の好きなものに囲まれて暮らす森茉莉の麗らかな日々。早川さんは「森茉莉もまた、優雅だった時代の記憶をとどめ、時を軽やかに行き来する魔法を持っていたのだと思う。」と解説します。懐古とはまた違った、それよりもきっと美しい感情。当初の予定通り3冊目の刊行を迎え、ひとまずの区切りとなりました。ぜひ3冊揃えて本棚に並べていただきたい、ちくま文庫オリジナルの作品集です。いずれも装画を山下陽子さんのコラージュが彩ります。

 

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山下さんのシックで、耽美な作品たち。LIBRAIRIE6/シス書店にて開かれた新装版山尾悠子歌集『角砂糖の日』出版記念展を機に誕生した『跳ね兎』は、短歌十首それぞれに山下さんの挿画を配したカードセットです。こちらも新たに入荷しています。限定600部の発行のため、ご希望の方はお早めに。

 

オランダ・アムステルダムに拠点をおく、インディーズ系アートブック専門のディストリビュータ・IDEA BOOKS。季節が変わるたびに、イベントスペースにて取扱洋書の展示と受注会を開催しています。先月の受注会にて店用に注文したアートブックが数点入荷いたしましたので、ご紹介します。

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アムステルダム国立美術館で開催された日本画の展示会「ジャパン・モダン」のカタログ『Japanese Prints From The Elise Wessels Collection』。伊東深水や竹久夢二の美人画、川瀬巴水による日本各所の風景画、川西英によるエキゾチックな神戸の街並みを描いたものを収録した、オランダ人デザイナー・Irma Boomのセンスが光る大ボリュームの一冊。

 

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シカゴのハイウェイを疾走する色とりどりのトラックを、ボールペンとフェルトペンで描いた『Trucks』。オランダの画家・ジョルジュ・ヘンドリク・ブライトナーが描いた着物を纏った少女たちの絵を集めた展示会の図録『Breitner / Girl In A Kimono』。紹介しきれそうにありませんので控えますが、ここに挙げた以外にも興味深いアートブックが入荷しています。

 

ニットデザイナーの三國万里子さんと料理家のなかしましほさんのタッグによる新雑誌『スール』(ほぼ日)、京都に住んでいると意外と出向かない名物スポットや、住んでいるからこそ見つけた居心地の良い場所を描いたコミックエッセイ『京都ご近所物語』(イースト・プレス)、ライターの大平一枝さんが、気になる16人に自身の宝物をたずねた記録『あの人の宝物』(誠文堂新光社)、などなど他にも気になる書籍が多数届いています。

 

それでは、来週もお楽しみに。

 

(鎌田)

 

≪今回紹介した本≫

『月極本 3』YADOKARI

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『幸福はただ私の部屋の中だけに』森茉莉 早川茉莉編 筑摩書房

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『跳ね兎』短歌:山尾悠子 挿画:山下陽子 LIBRAIRIE6

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『Japanese Prints From The Elise Wessels Collection』Marije Jansen Rijksmuseum

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小谷康弘 陶展

ギャラリーアンフェールでは現在「小谷康弘 陶展」を開催中です。

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これまで島本契司さんとの二人展を当ギャラリーで開催いただいた小谷康弘さん。今年はそれぞれ個展でのご紹介となりました。(島本さんは11月に個展を開催予定です)

 

今回の展示は、小谷さんの工房がある滋賀県高島市の『旧今津郵便局』との巡回展。旧今津郵便局はヴォーリズが設計した建物でとても古い洋館ですが、時を経てより美しい佇まいになっていくのはヴォーリズ建築ならではでしょうか。保存会も発足され、最近はいろんなイベントも行われるようになったそうです。

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どこか古いヨーロッパを思わせる小谷さんの器は、ヴォーリズ建築にもまさにぴったり。旧今津郵便局で撮影された小谷さんの器の写真をコラージュした作品も今回展示していただきました。

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優しい光が差し込む古い洋館と、小谷さんの器。旧今津郵便局での展示もきっととても素敵な時間になるのだろうなと思います。当店とはまた違った雰囲気で小谷さんの器を堪能していただけるはず。ぜひこちらも足をお運びください。

[巡回展] ヴォーリズ旧今津郵便局
2017年4月29日(土)-5月7日(日)11:00-17:00 (*5/1、2は休館です)

 

小谷さんの陶器はいつも、いろんな釉薬が使用されたたくさんの種類が並びます。釉薬それぞれの面白さが引き出された器は、どんなお料理が似合うかなと食卓を思い浮かべながら眺めるのがとても楽しい展示。

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いつもこっそり思っていてやっと小谷さんとお話しできたのが(器の見方としては違うかもしれないのですが)小谷さんの器は裏が面白いという話。熱の当たり方や高台の内側にこもった熱の具合などで美しい模様や色が生まれるそうです。表とはまた違った風合いで驚くことも。ぜひ裏もひっくり返して見てみてください。

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私も今回の展示でお皿をひとつ手に入れました。深い青と緑が広がって、まるで宇宙みたいな景色のお皿でしばしじぃっと見惚れてしまいました。

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きっと濃い緑が似合う!と思ったらやっぱりなかなか似合いな一皿が完成しました。すてきな器だとご飯もより美味しくなりますね。これからもどんなお料理をのせようか考えるたびわくわくする買い物ができました。

 

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ずらりと並ぶいろんな色や形の器。思い思いに展示していただきました。ぜひご堪能ください。ご来場を心よりお待ちしております。


小谷康弘 陶展
開催期間:2017年4月4日(火)-4月10日(月)
開催時間:10:00-21:00(初日は12:00から/最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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工房のある滋賀県高島市に、ヴォーリズの設計した旧今津郵便局があります。
私はこの建物に行くたび、幼い頃の美しい思い出がよみがえるような気がします。
今回、恵文社では初めての個展をさせていただくのですが、そんな今津郵便局への巡回展とさせていただきました。
私の器が、時を経てなお美しさを増す、旧今津郵便局のようであれば、と思っています。どうぞ御高覧下さい。

[巡回展]
ヴォーリズ旧今津郵便局
2017年4月29日(土)-5月7日(日)11:00-17:00
*5/1、2は休館です。

 

(上田)

今週の新入荷、4月第1週

一気に春めいてきたここ数日。今日はあいにくの雨でしたが、天気の良い日は陽が落ちても肌寒さを感じることは日に日に少なくなり、開け放した書籍フロアのドアの向こうから聞こえてくる近所の子どもたちの喚声や鳥のさえずりに季節の変化を感じ胸が躍ります。本と珈琲、余裕があればサンドイッチなんかも携えて、鴨川沿いや御所、植物園へと出かける晴れた休日を過ごすのもこれからの季節の楽しみのひとつですね。

 

それでは、今週の新入荷、4月の第1週をお送りします。

 

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2009年、長野県東御市の御牧原で開業したパンと日用品のお店「わざわざ」。公共の交通機関では訪れることが出来ず、実店舗の営業は週3日ながら、全国に多くのファンを持つこの小さなお店の店主・平田はる香さんが、これからともに働く人へ伝えるつもりでお店の働きかたの方針と経営の考え方を綴った冊子『わざわざの働きかた』。

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遠方からわざわざ来てもらう価値を創出するサービスの心得、雇用やマニュアルについての試行錯誤、製造と出荷のバランス、地域の人々との繋がり、単純作業の心構えやチームで共通の意識を育むための手だて、夫婦で子育てをしながら働くということ、具体的な経営理念や共有するための規範…。

夢や幻想を振りまくわけでは決してなく、現実に直面してきた問題点や課題を交えながら、折々の実感を載せたテキストは、日々の仕事と生活をあらためて捉えなおすきっかけを読者に与えてくれるようなすこやかさを纏っています。 

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写真やデザイン、発行までのすべてを自分たちで手がけ、たった一週間ほどで初版2000部(!)を売り切ったという本書は、何かを作り提供するということの実践的な挑戦でもあり、提示された小さなチーム単位ならではの可能性のヒントは、お店を経営される方や出版に関わる人々にも広く参考になるのではないでしょうか。店頭にお越しの際はぜひ手に取って、しなやかな意志に貫かれたそのテキストと美しい写真に目を落としてみていただきたいと思います。

 

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日進月歩のテクノロジーにより変化し続けるコミュニケーション、人と人との関わりや絆の形。アート/ファッション/カルチャーの文脈から関係性や絆を捉え直す新創刊のバイリンガルマガジン『PARTNERS』。

フォトグラファーとその息子、恋人同士の画家たち、コンテンポラリーアーティストとそのコラボレーター、ポップスターとソングライター、音楽家と彼の楽器…。インタビューを中心に、生きる糧や時間を共有するパートナーシップの様々なバリエーションを提示した一冊です。

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美しくクールなアートワーク、雑誌としては珍しい横長の誌面で展開されるデザイン、最新の情報を扱うだけではない一捻りを加えたカルチャーページや現代社会への考察を展開するテキストコラムなど、複合メディアとしての雑誌のフィジカル性、その意義や魅力を思い起こさせてくれるような意欲的な作りです。

一切広告を挟まず、現代的な雑誌のあり方を模索する作り手とそこに集ったクリエイターやエディターたちのパートナーワークから生まれた本誌そのものが、雑誌の掲げるテーマを体現した魅力的なサンプルと言えるかもしれません。

 

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吉祥寺、恵比寿、代田橋、西荻窪、代々木、新宿、武蔵小山…。三人の編集者が東京の街を渡り歩き克明に日付と時刻を記録しながら待ち合わせた人々へ敢行したインタビューを一冊にまとめた『なnD』最新5号も今週の入荷。

5号目にして初のカラー表紙となったカバーに記された副題は「3月 東京」。

文筆家、アーティスト、ミュージシャン、映画監督、イラストレーター、デザイナー、編集者、お店の店主など、ひろくカルチャーに関わる人々27名が登場し、普通であれば記事起しの際にその痕跡を抹消されがちな場所性や時間性がむしろ前面に押し出されることで、繋がれていくバトンを追いかけるように、その場そのタイミングだからこその出会いを追体験するように読み進めていく構成となっています。別々の話者や筆者から「小沢健二」というワードが飛び出すのも、2017年3月の東京だからこその共時性。

fuzkue阿久津隆さん、Sweet Dream Press福田教雄さん、スタンドブックス森山裕之さん、FALL三品輝紀さん、迫川尚子さんや近代ナリコさんなどインタビュー外の記事を寄せた方々のラインナップに3人の編集者が集って作られる『なnD』のアイデンティティを感じ取る読み手の方々もきっと少なくないはずです。カルチャーシーンの豊かさはそのまま懐の深い東京という街の魅力にもなるのだと知るとき、自分たちの住む街のことにも思いは及んでゆきます。小ぶりな文庫サイズも手に取りやすく魅力的で、街に出て喫茶店や電車の中で読みたくなるような軽さが心地よい一冊です。

 

その他、復刊版『角砂糖の日』から新たに生まれた山尾悠子さんの短歌と山下陽子さんの挿画によるカードセット『跳ね兎』、記憶に沈み込んだドラマティックで刹那的なイメージの断片を差し出すような草野庸子さんのフォトブック『EVERYTHING IS TEMPORARY(すべてが一時的なものです)』、大自然を歩き釣りに興じた著者GNU/長沼商史さんの3年に及ぶロングディスタンスハイキングの記録本『釣歩日記』、「団地」をテーマに写真やテキスト、漫画など今をときめく作家たちが展開する8つのストーリーを収めた東京R不動産によるコンセプトブック『団地のはなし』なども今週入荷しています。いずれもユニークな書籍ですので店頭でぜひ手に取ってみてください。

 

それでは、来週の新入荷もお楽しみに。

 

《今回ご紹介した本》

『わざわざの働きかた』パンと日用品の店 わざわざ

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『PARTNERS #1』kontact

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『なnD 5』nu

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(涌上)

塩津植物研究所 山野草木展

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先週末の4月2日、当店では塩津植物研究所さんによる盆栽教室を開催。会場では好きな植木鉢と花樹を選び、土づくり、苔植、自分だけのひと鉢を作っていただきました。既に花を咲かせている苗もありましたが、どれもこれから蕾を膨らませていく植物たち。塩津さんの陽気なお人柄もあり、会場は終始、和やかな雰囲気に包まれました。

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教室にあわせて、ミニギャラリーでは山野草の盆栽を展示しています。入口そばにある背の高いヒメシャラの鉢は、樹齢50年ほど。樹は何十年、何百年と生きるので、人から人の手に渡り育てられていくことも少なくないといいます。(このヒメシャラは塩津さんで3人目だそう。)小さな鉢の中の植物が、自分より長い年月より生きているとは、とても不思議に感じます。日を追うごとに新芽が開き、顔を覗かせる若々しい緑。春の訪れを伝える植物たちを、是非ご覧くださいませ。

 

また展示会中の4月8日にも盆栽教室を開催しますので、ご興味のある方はお気軽にお問合せ下さいませ。詳細は、こちら
塩津植物研究所さんの著書『身近に植物のある暮らし』はこちら

 

山野草木展
塩津植物研究所
4月1日〜4月14日
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー

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(田川)

須川まきこ個展『Lady Amputee in Powder Room』

ギャラリーアンフェールでは、イラストレーター 須川まきこさんの作品集『Lady Amputee in Powder Room』出版を記念して『須川まきこ 個展』を開催中です。

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滑るように美しく艶やかな線で描かれる女の子たち。人形のように作りものの手足を持つ女の子が多く描かれています。作品集タイトルの中の”Amputee”は、病気などで四肢を切断した人の意。須川さんご自身も義足をつけられています。

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「片足がないことを受け入れること」が制作のきっかけのひとつという須川さん。誰しも四肢ではなくても欠損しているところはあって、それも愛おしくなるような・・とお話してくださった須川さんはとても可愛らしい魅力溢れるすてきな女性。包み込むような優しさや凛とした美しさが作品からも垣間みれます。

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作品集『Lady Amputee in Powder Room』は、ピンクのポンポン栞が付いた特装版と、普及版の二種類。作品の世界観にぴったりなすてきなデザインで、秘密の宝物のようにしたい一冊。

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レースの向こう、真夜中のパウダールームパーティー。
花のように甘い香りで誘う女の子、キュートなランジェリー、悩ましい目つきに悪戯なくすくす笑い—優しくて柔らかくて儚げで、少女の可愛さと乙女の可憐さ、強さを感じる女性らしさ。花から花へ気ままに飛び回る蝶のようにうつろう女の子たちが表情豊かにおさめられています。

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宇野亞喜良さんが作品集に寄せた序文で「シュルレアリスムの次に来たエロスの形而上学!」と絶賛された須川まきこさんの作り出す世界観、ぜひじっくりご堪能ください。ご来場を心よりお待ちしております。

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須川まきこ個展『Lady Amputee in Powder Room』
開催期間:2017年3月28日(火)-4月3日(月)
開催時間:10:00-21:00(最終日は18:00まで)
開催場所:ギャラリーアンフェール

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作品集「Lady Amputee in Powder Room」の発売にともない原画も含めた作品展を開催いたします。レースやバーレスク、アンプティのテーマを中心に女性のいろんな表情を線画で表現しております。作品集の内容は7つの章にわけて、構成しております。
凝縮された内容になっておりますので、ぜひ手に取ってご覧いただければ幸いです。
(発刊:エディシオン・トレヴィル発刊 発売:河出書房新社)

 

[プロフィール]
須川まきこ イラストレーター
京都造形芸術短期大学 専攻科卒業。
デザイン事務所「広告丸」に入社しイラストを描き始める。その後、個展や国内外の企画展に多数参加。
海外ではローマのギャラリーでの個展をはじめ、ポートランド、フロリダ、パリ等で作品を発表。ヨーロッパのファッション雑誌「Nico magazine」はじめ海外の雑誌の表紙も手がけ、「commons&sense」誌ではコムデギャルソン/noi kei ninomiyaのファッションストーリーを描く。
2016年六本木ヒルズで行われたファッションショー「ホワイトヴィーナス」一連のコスチュームデザインを担当する。
作品集「Lady Amputee in powder Room」(エディシオン・トレヴィル)、「Melting」(アトリエサード)、「Lace Queen」、絵本「ニーとメメ」(広告丸)がある。

 


(上田)

2017年3月書店売上ランキング

気がつけば、3月も終わり新しい年度が始まりましたね。よく店に遊びに来てくれていた大学生の友人たちは、こぞって東京へと旅立ったようです。引越しのトラックの多さと、初々しい若者とその両親と思われるグループを見かけると、左京区が学生の街だということに改めて気付かされます。

 

それでは今回は2017年3月の書店売上ランキングをお知らせします。

 

1位『角砂糖の日』山尾悠子 LIBRAIRIE6

幻想小説家・山尾悠子、幻の短歌集

 

2位『美しい街』尾形亀之助 夏葉社

前月に引き続き好調、尾形亀之助詩集復刊

 

3位『ムービーマヨネーズ 創刊号』Gucchi's Free School

日本未公開の映画を紹介するリトルプレス

 

4位『世界をきちんとあじわうための本』ホモ・サピエンスの道具研究会 ELVIS PRESS

もはや定番、あざやかで心地よい気づきと学びの本

 

5位『孤独がきみを強くする』岡本太郎 興陽館

地道に売れ続けている一冊、再読する岡本太郎の言葉

 

6位『魔女の12ヶ月』飯島都陽子 山と渓谷社

自然を尊び、知り尽くした魔女の「暮らし」と「知恵」

 

7位『MONKEY vol.11 ともだちがいない!』スイッチ・パブリッシング

毎号、売れてます。柴田元幸責任編集文芸誌、第11弾

 

8位『あおいよるのゆめ』ガブリエーレ・クリーマ WORLD LIBRARY

イタリアの仕掛け絵本、取扱い店はまだまだ少ない様子

 

9位『野菜』細川亜衣 リトル・モア

恵文社男性陣も食いついた、旬の野菜50種を味わうレシピ集

 

10位『ぼくのおじいちゃん』カタリーナ・ソブラル アノニマ・スタジオ

パネル展開催中、版画調の絵が可愛らしいポルトガルの絵本

 

第1位は、幻想小説家・山尾悠子、幻の短歌集『角砂糖の日』です。

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恵比寿のLIBRAIRIE6/シス書店内企画展から生まれた新装再刊版、初版は即完売、待望の第二版が入荷しましたが、こちらも在庫僅少となっております。各章のはじまりに挿入された、合田佐和子さん、まりのるうにいさん、山下陽子さんの挿画もとても素敵です。ご希望の方はお早めに。

 

第3位は、日本未公開の映画を紹介・上映するGucchi’s Free School制作のリトルプレス『ムービーマヨネーズ 創刊号』。

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この文章量、質の高さでなんと900円!(しかも税込!)創刊号のテーマでもある青春映画というジャンルを、美術、講義、地理、英語、建築、音楽、家庭科、国語など、8つの授業科目に振り分け、順を追って解説。教科書のような表紙からも想像できるように、一貫して学校をモチーフにしたアートワークも購買欲をそそります。ミルハウザーの短編が映画化された「シスター・フッド・オブ・ナイト」柴田元幸評はじめ、豪華な寄稿陣も魅力的です。買いの一冊。

 

 9位は、熊本に住む料理家、細川亜衣さんのレシピブック『野菜』。

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ふきのとうのおかゆ、たけのこの春巻き、春の白和え、そら豆わんたん、焼きいもと唐辛子のフォカッチャ、などなど、暖かくなりスーパーの野菜売り場も賑わう今の時期におすすめです。単に料理工程が書かれているのではなく、メモ書きのような文章でつくり方がそれとなく書かれ、各レシピの後に寄せられた細川さんに直接語りかけられているような、ちょっとしたコツや美味しい食べ方が、この本を読む人にとって特別なものへと昇華させているのではないでしょうか。写真も美しい一冊。

 

今月のランキングは個性的な本が、偏りなく紹介できました。

ちょっとした紹介文をそれぞれの本に付けてみましたがいかがでしょうか。

来月もお楽しみに。

 

(鎌田)

今週の新入荷、3月第5週

その週に入荷した活きの良い本をご紹介する、「今週の新入荷」。本日も盛りだくさんの内容でお届けします。

 

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まずご紹介するのは、2016年9月から2017年1月まで、ベルナール・ビュフェ美術館で開催されていた本展の公式図録『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』です。フランスの国民的写真家であり、パリの街中で見かけるドラマチックな瞬間や、風刺の効いた一幕を表情豊かに写した作品を数多く残したロベール・ドアノー(1912-1994)。「パリ市庁舎前のキス」に代表されるように、《イメージの釣り人》とも評されるドアノーの作品の醍醐味は、ヒューマニズムに溢れた人間描写といえます。そのドアノーらしさが最もよく表れているジャンルともいえるポートレイトに着眼点を置いた図録です。

 

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実は京都に住む人にも馴染み深いドアノー。その理由は八坂神社前にある京都現代美術館・何必館です。館長の梶川氏は、ドアノーはじめ、当時のパリに集った写真家たちと多く交流を持たれていたそうで、ロベール・ドアノー、アンリ=カルティエ・ブレッソン、ウィリー・ロニスら、その年代の写真を愛する者にとってはなんともありがたいコレクション展を毎回開催されています。同館が編纂する数多くの図録も素晴らしいので、立ち寄られた際は要注目。(次回4/5からはアンリ=カルティエ・ブレッソン展!)

 

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そして、ついに十五巻すべてが出揃った土曜社刊『マヤコフスキー叢書』ロシア・アヴァンギャルドを代表する詩人、ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・マヤコフスキー。いまや、マヤコフスキーの作品に触れることができる数少ない資料。土曜社らしい、素朴かつ、クールなデザインと、各巻の当時の写真を用いたアートワークも魅力的なシリーズです。

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マヤコフスキー訳の第一人者、小笠原豊樹さんの新訳を前提にはじまったこちらの叢書。残念ながら翻訳作業を進めるなかで小笠原さんは亡くなられました。小笠原さんのレイ・ブラッドベリや、ロス・マクナルドの作品の翻訳を読んでいた私にとってはショックな事件で、当時読者を装って土曜社に叢書の刊行存続を問い合わせたことをよく覚えています。過去の選集をもとに全巻の発行を完遂した土曜社さんと、新訳を死の際まで続けた小笠原さんに心からの拍手を。

 

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海外文学つながりでもう一冊。今最も注目される翻訳家・藤井光編『文芸翻訳入門』。英米に限らず、ロシア、チェコ、スラブ、韓国など、多国籍な言語を相手取る旬な翻訳者たちが集い、思いおもいの文芸翻訳論を語り合う、海外文芸翻訳の良い入門書です。こちらについては、あまりに長文になったため、他のブログで詳しく紹介させていただきました。よろしければあわせてご覧ください。

keibunshabooks.hatenablog.com

 

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米軍ハウス、文化住宅、古民家などをリノベーションし、そこに暮らす人々を取材し、写真豊富に紹介するシリーズ『FLAT HOUSE LIFE』。絶版状態だったvol.1、vol.2に新規物件を加え、待望の合本『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊しました。古いイメージを取り払い、住んでみたらこんなに便利だったという平屋の魅力を存分に伝える一冊です。待ちわびていた方も多いのではないでしょうか?

先日、著者のアラタ・クールハンドさんがふらっとお立ち寄りくださいました。震災後、九州に転居されたというアラタさん。北九州の人のおおらかさ、若者が古い時計屋を改装して新しい小さなお店を開こうとしていること、米軍基地があった名残にみる居住域の区分けなど、興味深い話が次々と。このようなことを皆さまにも聞いてもらえるような場を設けようと、イベントを企画中です。お楽しみに。

 

その他、P・オースターの新刊、著者の生涯を断片的に回想する『内面からの報告書』(新潮社)、4/13に関連イベントの開催も決まった音楽家・大友良英さんが大阪築港赤レンガ倉庫で行ったグループ展と展示的音楽の記録『音楽と美術の間』(フィルムアート社)、など多数入荷しております。

 

それでは、また来週。

《今回紹介した本》

『ロベール・ドアノーと時代の肖像 喜びは永遠に残る』ベルナール・ビュフェ美術館

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『マヤコフスキー叢書 全十五巻』マヤコフスキー 小笠原豊樹訳 土曜社

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『文芸翻訳入門』藤井光編 フィルムアート社

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『FLAT HOUSE LIFE1+2』アラタ・クールハンド TWO VIRGINS

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(鎌田)